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絶好調スシロー「180円皿を150円に値下げ」は値上げへの布石か?

10カ月連続で前年同月比の売上を上回った、業績絶好調のスシロー。9月14日には180円皿を150円に価格変更するなど、さらなる攻勢に打って出ています。この変更を「実は値上げの布石では?」と見るのは、店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さん。佐藤さんは自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』でその理由を記すとともに、同社の好調の理由等をコンサルタント目線で分析・紹介しています。

10カ月連続売上増のスシローが180円皿を150円皿に。実は値上げの布石?

スシローが絶好調です。8月の既存店売上高は前年同月比5.2%増と大幅な増収を達成しました。10カ月連続で前年を上回っています。8月までの10カ月間で6勝4敗のくら寿司5勝5敗のかっぱ寿司と比べると、10連勝を達成したスシローの強さが際立ちます。しかも増収率が異様に高く、たとえば、6月が13.1%増、3月が8.0%増、7月が7.8%増となるなど、半数以上の6つの月で5%超えを達成しています。

スシローは客数の面でも好調を維持しています。8月までの10カ月間では8つの月で前年を上回ることに成功しました。わずか1勝のかっぱ寿司や1勝もできていないくら寿司と比べるとその差は歴然としています(くら寿司のみ8月の客数は執筆時点で未公表)。

既存店売上高が好調に推移していたこともあり、運営会社のスシローグローバルホールディングスは8月8日、2018年9月期の連結業績予想の上方修正を発表し、売上高は前回発表から3.3%増の1,750億円(前年比11.9%増)、純利益は同17.8%増の78億円(前年比12.2%増)としています。

ノリに乗っているスシロー。好業績を叩き出すなか、9月14日にすしの価格帯を改定したのも興味深い出来事といえます。それまで税別で1皿100円180円280円で提供していたのを、100円150円300円に変更しました。100円皿はそのままで、180円皿を150円皿に、280円皿を300円皿に変更しています。

これによりキリがよくわかりやすい価格帯になったほか、高品質のメニューを従来より安い150円皿で提供することでお値打ち感を打ち出すことができるようになり、280円皿を300円皿にしたことでより高品質なすしを提供できるようになりました。

細かいところでは、従前の180円皿は四角い形の皿を採用していましたが、今回導入した150円皿は他の価格帯の皿と同じ丸い形を採用しており、皿の形状を統一することで食器洗い機による洗浄作業の負担を軽減することを可能にしています。

価格帯改定で見据える「値上げ」

今回の改定時には150円皿のメニュー数を従前の180円皿の時よりも増やしたことが特徴的となっています。中トロ(1貫)やタイ(2貫)など12種類をそろえました。これにより、お値打ち感のあるメニューが充実していることをアピールすることができています。

今回の改定は、今後の値上げを見据えている面もありそうです。たとえば、仕入原価の高騰などで100円皿では提供が難しいメニューが出てきた場合、180円皿で販売するとなるとかなりの割高感が出てしまいますが、150円皿であればそれほどの割高感は出ません。180円皿を150円皿にしたことで100円皿のメニューの値上げがしやすくなったといえるでしょう。

今後の3つの価格帯のメニュー構成の推移を見ることによって、スシローの狙いがわかるでしょう。100円皿の充実度が低下せずに150円皿が充実するようであれば、お値打ち感を打ち出すことが目的だったと言うことができます。もし100円皿のメニューを150円皿で提供するようなことがあれば、値上げが目的だったと言うことができるでしょう。いずれにしても、今回の改定により柔軟な打ち出しと展開が可能になったといえます。

スシローは価格帯の改定を実施した14日から、築地市場のすし店などとコラボレーションした商品を提供する「築地の匠×スシローフェア」を開催しています。人気すし店「大和寿司」「米彦」など4店舗の協力を得たこだわりのメニューを提供します。このフェアでは150円皿のメニューが多く、価格帯の改定を意識したラインアップにしたようです。人気店の高品質のメニューを150円皿で提供することで、お値打ち感を打ち出しています。

このフェアからは、スシローの強さの源を知ることもできます。

近年の大手回転ずしチェーンを巡る話題は“サイドメニュー”に集中するきらいがありますが、すし店の本筋は“すし”であり、やはりすしがおいしくなければ中長期的な集客は望めません。そうしたなか、スシローの今回のフェアでは人気店の協力を得たこだわりのメニューを提供しており、「本筋のすしがおいしいスシロー」というイメージの確立を狙っているといえそうです。

スシローがうまいと思うのは、人気店とコラボした上でこだわりのメニューを提供しているということです。単にこだわりのメニューを提供するだけでは注目度は大して高まりませんが、人気店とコラボすることで話題性が生じ注目度が大いに高まります。そうすることにより、集客を実現できるのです。

狙うは「おいしいのにたった150円」

こうした手法はこれまでも遺憾なく発揮しています。たとえば昨年11月に、CSN地方創生ネットワークが運営する飲食店向けオンラインマーケット「羽田市場」を活用し、日本各地の海でとれる旬の天然ものを提供するプロジェクトを開始したことがそうでしょう。CSNは羽田空港内で仕分けや加工を行うセンターを自社で運営しており、原則、とれたその日のうちに店舗に届けることを売りとしています。

スシローは羽田市場を活用することで新鮮なすしを提供できるようになるわけですが、効用はそれだけではありません。羽田市場はその斬新な仕組みが評価され各種メディアでよく取り上げられており、そうした羽田市場と組んでプロジェクトを打ち出すことで注目度を高めることに成功しています。そして、「羽田市場と組んだスシローのすしはおいしい」というイメージの確立にも成功したといえるでしょう。

このように本筋のすしを強化したことが功を奏し売り上げ増につながったと考えます。一方でサイドメニューを強化したことも寄与したでしょう。スシローは近年、サイドメニューを強化しており、たとえば昨年11月に「スシローカフェ部」を発足し、スイーツの販売を強化しています。

いずれにせよ、スシローはおいしいすしを提供していることをアピールすることに余念がありません。そうすることにより、仮に100円皿のメニューを150円皿で提供する値上げを行なったとしても、客離れを最低限度に抑えることができるでしょう。「おいしいのにたった150円」と思ってもらえるすしをどれだけ提供できるかがカギとなりそうです。

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佐藤昌司のブログ「商売ショーバイ」

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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