なぜプーチンは今「前提条件なしの平和条約」を提案したのか?

kitano20180919
 

9月12日、安倍首相に「前提条件なしの平和条約の締結」を不意打ち提案したプーチン大統領。北方領土問題の「棚上げ」の提案とも取れるわけですが、日本としてはどのような返答をすべきなのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、世界各地で勃発中の「米ロ代理戦争」を解説するとともに、情勢不安定が続く間は領土問題への言及は避け、慎重に対応する必要性を説いています。

「前提条件なしの平和条約締結」発言の真意

たくさんの読者さんから、プーチンが、「年内に前提条件なしで平和条約を結ぼう!」と発言したことについて、質問が届いています。知らない人もいるかもしれないので、一応。

12日午後、プーチン大統領がウラジオストクで開かれたシンポジウムで「ここで思いついたんですが、条件をつけずに、年末までに平和条約を締結しましょう」と述べると、会場から拍手が起こり、カメラは提案を受けた安倍首相の表情をとらえたが、直接、答えることはなかった。
(FNN PRIME)

これは、何でしょうか? 誰でもわかりますが、「北方領土問題を解決しないまま平和条約を結びましょう!」といってるわけです。で、この発言の前に安倍総理は、演説している。

この直前に安倍首相は、平和条約を念頭に「今やらないでいつやるのか」とスピーチしたばかりだった。
(同上)

安倍総理が、平和条約締結を、「今やらないでいつやるのか!?!?!?!!?」というとき、ロシア政府高官の耳には、「平和条約締結をしましょう!」とは聞こえないのです。どう聞こえるかというと、「年内に北方領土を全部返しやがれこら!」といっているように聞こえる。

しかし、安倍総理も日ロ関係を悪くしたくない。それで、直接的な表現は避け、「平和条約を」という。もちろん、直接「島返せこら!」というよりはマシです。それでも、やはりプーチンや、他のロシア政府高官の脳には、「島はやく返せ!」と変換されて聞こえる。

ところで、最近書いたように、北方領土返還、ロシア側からは、非常に厳しい状況です。というのも、北方領土を返したら、そこに米軍がくるでしょう? もし日本政府が、「ここだけ日米安保の適用外にしてくれ」とアメリカに要請したらどうなります? アメリカは、「OK! じゃあ、尖閣も日米安保の適用範囲外ね!」といってくるでしょう。そうなると、尖閣は来年中国のものになってしまう

この話、以前もしたのですが、「米軍が国境に来るロシアの恐怖」を、どうも日本人が理解することは難しい。そこで、今回は、世界で起こっていることを少し詳しく書いておきましょう。

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