このように、勝負事には常に攻め時、守り時があります。サッカーなどの球技や格闘技でも、相手の猛攻をしのぎ切った直後、情勢が一気に変わる光景をよく目にします。競技だけではなく芸術の世界でも、たとえば能の創始者、世阿弥は『風姿花伝』の中で「男時(おどき)」「女時(めどき)」という言葉で、荒々しく演技するときと、共演する相手の演技に逆らわず、受ける場面があると説いています。
私も弁護士として交渉や裁判をする際において、攻めるべき時、守るべき時の「バイオリズム」ともいえる力の流れを感じることがあります。こちらに悪い材料ばかりが出て、相手が勢いに乗って攻めてくる苦しい場面は多々あります。しかし、防御を固めて凌いでいるうち、相手からポロリとミスが出たり、こちらに有利な条件が出てきたりして、一瞬で流れが変わったりすることが多いのです。
最悪なのは、相手の攻めに我慢できず、こちらの態勢が整わないまま玉砕覚悟で突っ込んでしまうこと。「攻撃は最大の防御」という言葉もありますが、常に攻めなくてはいけないという気持ちは捨てるべきです。流れが相手にあるときは、無理に攻めず、しっかり守りを固めなければなりません。
経営でも人間関係でも、他者との関係で、自分が置かれた状況がどうしようもなく思えるほど悪くなることがあります。そんなときも投げやりにならず、時が来れば攻められるよう準備しながら、流れを見極めることが大切なのです。
今回は、ここまでです。
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