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中身ない会見を繰り返す「加計学園」の梯子がなかなか外されぬ訳

10月7日に会見を開いた加計学園理事長。補助金予算を握る「愛媛県へ虚偽報告疑惑の釈明」が期待される中今度こそ説明責任は果たされたのでしょうか。以前より「モリカケ問題」を追及し続けている元全国紙社会部記者の新 恭さんは、自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、今回の会見も「逃げ」の姿勢が目立ち、愛媛県の会見要請文書までを狡猾に利用する異様さを指摘し、深層究明に挑んでいます。

愛媛県の説明要請決議を歪曲利用した加計理事長会見

言葉をどんなに取り繕っても映像はごまかせない。7日、今治市の岡山理科大獣医学部。このキャンパスでようやく記者会見した加計学園理事長加計孝太郎氏は「説明」ではなく「逃げに終始した。

愛媛県議会が7月11日に決議した同学園への説明要請に応じた会見だという。県からの補助金を断たれたら、ただでさえ経営難の学園が立ちゆかない。

今年6月、岡山の記者クラブだけに声をかけた、たった25分のやりましたよ会見を唯一の例外として、徹底的に報道陣から逃げまわってきた加計理事長。安倍首相をして「腹心の友」と言わしめたその人の心を動揺させたのは、補助金予算を握る愛媛県の強い姿勢だった。

県議会の決議文にはこう書いてある。

加計学園から県への虚偽報告についての謝罪や理事長の記者会見が行われたものの、未だに混迷した状況が続いていることは誠に残念である。…学園自らが、疑念を晴らすための説明を尽くすことが最も大切であり、将来にわたり透明性のある組織風土を構築することが必要不可欠である。

問題にしているのは「県への虚偽報告」を中心とした疑惑に学園が説明を尽くしていないという点だ。

「県への虚偽報告」を簡単におさらいしておこう。

愛媛県が今年5月に参議院に提出した文書には、2015年2月25日に加計孝太郎理事長が安倍首相と面談したさい、獣医学部新設計画を説明、安倍首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたことが記されていた。昨年1月20日まで加計学園の獣医学部新設計画を知らなかったとする安倍首相の答弁と食い違う

この報告をした学園の渡辺良人事務局長(学園常務理事)は、理事長と首相の面談は自分の作り話であったとして愛媛県に謝罪した。

6月に初めて会見したさい、加計理事長は、渡辺氏がウソをついたとは言わず、「ことを先に進めようとしたようだ」と、ごまかした。そして安倍首相との会談については「3年前のことなので記憶にもないし、記録にもない」と曖昧な否定の仕方をした。

これでは疑念が晴れたとは言えず、愛媛県民からの批判も強まったため、県議会が動いたのだ。

県議会の要請決議に応じて記者会見を開かざるを得なくなった加計理事長は当然どう切り抜けるかを考えただろう。

ヒントとなるのは親友、安倍晋三首相の国会における流儀ではなかったか。すなわち論点のすり替えと質問時間の強奪時間切れ、そして、当事者を質疑の場に出さない戦法である。

論点ずらしについては、決議文の最後に記された以下の要請を利用した。

  1. 対外的な説明責任をしっかりと果たし、学園のコンプライアンスとガバナンスを確立すること。

この要請のもととなったのは「県への虚偽報告」などに関しいまだ晴れない疑惑だが、学園側はそこを完全に無視し、最初の30分を費やして、コンプライアンスとガバナンスについての「今後の方針を説明した。

だが、コンプライアンス推進室を学園に設けたことや、近々コンプライアンス委員会を発足させるというだけで、時間をかけた割には具体的な内容に乏しい

記者会見は獣医学関係の専門家によるシンポジウムの開催中に行われ、シンポジウム参加を理由に、1時間20分ていどに時間が制限された。そのため、記者の質問時間は50分ていど。大勢の報道陣がつめかけた注目の会見であり、これではとても時間が足りない。

しかも、虚偽報告の当事者である常務理事、渡辺良人氏については「処分中であるため」(加計理事長)という奇妙な理屈で出席させなかった

県議会が求めた「対外的な説明責任」を果たそうと思えば、事情を最もよく知る人物を会見に出席させ、我田引水の説明は最小限にとどめたうえで、時間の制限をつけずに記者の質問を受けるべきである。最初から逃げねらいの会見にしか見えない。

会見の初めに加計理事長があいさつし、学園側の説明が終わると、ようやく記者とのやりとりが始まった。

そのなかで、記者側の質問が集中したのは当然のことながら、愛媛県への虚偽報告の件である。

加計理事長との面談で安倍首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と語った。その話を渡辺氏から愛媛県や今治市の担当者が聞き、本気になった。

そこから県、市の巨額補助金拠出を前提とした計画が進んでいったことを考えると、その話が実はウソだったと言って済ませられるわけはない

詐欺的な違法性さえ疑われる重大な問題ではないのか。そういう観点からの質問に対し、加計理事長はこう答えた。

「県と市は半分、あきらめムードだったらしい。このままではこの話はダメになると本人(渡辺氏)は思った。だから、それを前に進めようとしたと聞いています」

前に進めるためだったら、架空の話をでっち上げて自治体を騙し巨額の税金を注ぎ込ませてもいいというのだろうか。

加計理事長はワンマンで知られている。もし渡辺氏が虚偽報告をしたとすれば、加計理事長の指示によると考えるのが自然だ。

全部任せていたので私は分からない」と言い張る加計理事長は絶えず、同席した学園職員や司会者のほうを向いて目配せし、助け船を出させた。

愛媛県の文書によると、渡辺氏が県訪問のアポイントをとってきた際の趣旨は、加計理事長と安倍首相が獣医学部新設について面談した件について報告したいということだった。

だから会見で、最初から虚偽報告をするつもりだったのかという質問が相次いだのは当然だ。

加計理事長は「県と市が手を引くかもしれないという危機感のなかから前へ進めるため…」と同じ発言を繰り返してまともに答えず、岡山理科大の上田事務局長はしどろもどろに、こう語った。

「前から考えていたのではなく、その場でふと思いついたと聞いております」。

通常、大学の幹部職員がそこまでして大ウソをつくとは考えにくい。おそらく安倍首相と加計理事長の2015年2月の会談はあったのだろう。そのさい、柳瀬秘書官が同席し、国家戦略特区に申請する方針が決まったと思われる。

柳瀬氏は加計学園と3回、接触したと証言しているが、これについても加計理事長は「存じあげません」のひと言。上田事務局長も、渡辺氏がどのような経緯で柳瀬秘書官と知り合い、いつ、どのような目的で会ったのかなど、肝心なところは本人でないので…とごまかした

それならなぜ渡辺氏を出席させないのか。そう問われても、加計理事長は「処分中だから」と、理由にならない理由をこじつける事実を隠蔽する意図があるとしか思えない。

実際には、安倍首相と携帯ホットラインをむすぶ加計理事長の命令により渡辺氏が動いていただけではないのだろうか。

おまけに、加計理事長が肝心の愛媛県文書を読んでいないと言い出したため、「何のための会見か」と記者の間から声が上がった。「渡辺氏を呼んで再度、会見をするべきだ」という指摘に対しては、「県や市と協議したい」と、またしても「逃げ」を打った。

最後には、学園側が「みなさんは2015年2月25日の面談のことを質問されるが、我々は県や市と協力してコンプライアンスや地域貢献をどう実行していくかの発表をするつもりで記者会見を開いたたがいの認識が違っていると開き直る始末だった。

「県民、市民の血税による補助金を受ける立場として、コンプライアンスを確立し、ガラス張りの運営につとめる」と加計理事長は語った。しかし、この日の会見を見る限り、本気で取り組む姿勢は微塵も感じられない

コンプライアンスという言葉すら空疎に響くお粗末な経営陣が、国際水準の教育・研究を標榜しても、白けた気分にさせられるだけだ。

image by: Wikimedia Commons

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