3店閉鎖の三越伊勢丹。好調の大丸松坂屋と明暗が分かれた理由

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先日、3店の不採算店舗の閉鎖を発表した三越伊勢丹ホールディングス。18年3月期連結決算では8年ぶりの赤字を記録するなど、同社の経営は厳しいものとなっています。一方、18年2月期連結決算で増収増益を達成した、大丸松坂屋百貨店などを展開するJ・フロントリテイリング。何が両社の明暗を分けたのでしょうか。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で詳しく分析しています。

三越伊勢丹、さらに3店閉鎖。好調Jフロントと差がついたワケ

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は9月26日、伊勢丹相模原店(相模原市)と伊勢丹府中店(府中市)、三越新潟店(新潟市)の3店を閉鎖すると発表しました。業績不振が続く同社は不採算店の閉鎖を進めており、低迷が続く3店を閉鎖することで収益を改善させる考えです。

3店はいずれも1996年度が売上高のピークで、直近の2017年度の売上高は相模原店がピーク比約5割減の195億円、府中店が4割減の148億円、新潟三越が5割減の129億円となっています。

3店がピークを迎えた96年ごろは日本の消費が転換点を迎えた時期でもありました。働き手であると同時に消費の主役でもある15~64歳の生産年齢人口は95年でピーク(総務省「人口推計」)を迎えます。そして、97年4月の消費増税(3%から5%に引き上げ)がその後のデフレの入り口となり、以降、消費が減退しました。こうした状況を受け、小売業の売上高は96年にピーク(146兆円、経済産業省「商業動態統計」)を迎え、その後は減少の一途をたどります。

一方、百貨店売上高のピークは91年(12兆円、経産省「商業動態統計」)で、小売業全体の時よりも前にピークが訪れました。その後は減少が続き、95年には10兆円台まで落ち込みましたが、その後はやや盛り返し、96年と97年は11兆円台に回復します。しかし、その後は小売業全体の動きと同じく百貨店も減少の一途をたどり、17年には6兆5,528億円まで減っています

マクロ経済が縮小したことに加え、競争が激化したことで百貨店は苦境に立たされます。特に百貨店の主力商材である衣料品の競争が激しさを増したことが大きく影響しました。

まずショッピングセンターとの競争が激化します。百貨店のピークの91年は大規模小売店舗法(大店法)が改正された年で、同法の改正を機に各地で大規模なショッピングセンターの進出が進むようになりました。これにより特に郊外や地方での競争が激しさを増すようになります。

00年代中ごろからは、ユニクロやZARAといった低価格の衣料品チェーンに注目が集まり、いわゆるファストファッションブームが湧き起こりました。これにより百貨店は顧客を奪われていくようになります。また、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が開設したのが04年で、以降、ネット通販との競争を余儀なくされます。

商業動態統計によると、百貨店の衣料品売上高はファストファッションやネット通販サイトが台頭した00年代中ごろから顕著に落ち込んでいったことがわかります。それ以前は、百貨店における衣料品売上高の割合は5割程度で横ばいで推移していましたが、その後は縮小するようになり、17年には44%まで低下しています。衣料品の割合の縮小傾向は今もなお続いています。

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