3店閉鎖の三越伊勢丹。好調の大丸松坂屋と明暗が分かれた理由

 

事業や組織の改革をなおざりにした三越伊勢丹HD

市場の縮小と競争の激化で苦しい立場に立たされている百貨店業界。ここで業界の二大巨頭、三越伊勢丹HDとJ.フロントリテイリングのこれまでの歩みを見ていきます。

まずは、3店の閉鎖を発表した三越伊勢丹HDの業績を確認します。直近の18年3月期連結決算は、売上高が前年比1.2%増の1兆2,688億円、純損益は9億円の赤字(前の期は149億円の黒字)でした。増収となったものの、純損益は8年ぶりに赤字に転落しています。

純損益が赤字になったのは、早期退職制度により積み増された退職金や伊勢丹松戸店の店舗閉鎖損失、三越伊勢丹や高級スーパー「クイーンズ伊勢丹」を運営する三越伊勢丹フードサービスの店舗設備の減損損失などで計261億円の特別損失を計上したことが大きく影響しました。三越伊勢丹は18年3月期から3年間で800~1,200人の人員削減を目指すほか、不採算店や不採算事業の整理に乗り出すなどリストラを推し進めています

三越伊勢丹HDは、当時百貨店4位の三越と5位の伊勢丹が経営統合して08年4月に持ち株会社として誕生したのが始まりです。統合直後の09年3月期の売上高は1兆4,266億円にも上り、国内最大の百貨店として業界に君臨することになりました。

しかし、リーマンショックの影響などで10年3月期に売上高は1兆2,916億円前年比9.5%減)まで減ってしまいます。それ以降、現在まで、概ね1兆2,000億円台で横ばいで推移し成長が見られない状況です。そして近年は純利益が低下傾向にあり、先述したとおり18年3月期は最終赤字に陥っています。景気低迷など外部環境が影響したほか、内部環境では事業や組織の改革をなおざりにしたツケが回ってきた側面があります。現在改革を急ピッチで進めていますが、遅きに失した感が否めません。改革が実を結ぶとしても、業績に現れるのは先のことになりそうです。

一方、大丸松坂屋百貨店やファッションビルのパルコなどを傘下に持つJ・フロントリテイリングは百貨店改革において一定の成果を出しています。直近の18年2月期連結決算(国際会計基準)は、売上高が前年比3.8%増の4,699億円、純利益は同5.3%増の284億円と増収増益を達成しました。

なおJフロントは18年2月期から国際会計基準(IFRS)に移行しており、これにより売上高が6割目減りしています。日本基準を導入する百貨店は商品販売額を売上高として計上する場合が多いのですが、IFRSでは販売額から仕入れ値を引いた手数料部分のみを売上高に計上するため、日本基準とIFRSとでは売上高が大きく異なります。そのためJフロントの場合、この点を考慮して見ていく必要があります。

Jフロントは百貨店の大丸と松坂屋HDが経営統合して07年9月に持ち株会社として誕生したのが始まりです。統合直後の08年2月期の売上高は1兆164億円でした。その後はリーマンショックの影響で三越伊勢丹HDと同様にJフロントの売上高も減少しますが、12年2月期の9,414億円を底に、その後は上昇します。

12年2月期以降に売上高が上向いたのは、12年8月にパルコを子会社化したことが大きく影響しました。Jフロントはこの頃から「脱・百貨店」を目立つ形で進めています。たとえば、11年に輸入雑貨店「プラザ」を展開するスタイリングライフ・ホールディングスに49%出資しています。今後では、来年4月に小売りの枠を超えて保育所を開業する計画があります。このように百貨店以外の分野に手を広げることで脱百貨店を図っているのです。

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