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原発ムラからカネを握らされ、再生エネを排除する政治家の実名

10月13、14日の二日にわたり、太陽光発電の一部を一時停止する出力抑制の実施に踏み切った九州電力。「電力供給過剰による大規模停電の恐れあり」がその理由でしたが、世界的な流れでもある再生可能エネルギーの利用に水を差し、原発にこだわるがごとき決定に批判の声が挙がっています。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、電力会社が原発ゼロに動き出せない背景と、九州電力と麻生太郎財務相との関係を詳細に記しています。

“麻生体質”の九電またも太陽光発電締め出し

川内、玄海の原発4基が再稼働したうえに日本で最も太陽光発電の導入が進んでいる九州エリアでは、発電量が多すぎて困っているようだ。

発電量と使用量のバランスが崩れたら、周波数が乱れ大規模停電につながりかねないと電力会社はいう。

10月13、14日、発電量が需要をオーバーしそうになり、九州電力は太陽光発電の一部を送配電網から閉め出した。かねてから心配されていたことではあるが、太陽光の事業者にしてみれば、経営に打撃を受け、合点がいかないだろう。

安全神話の遺物ともいえる原発を動かすために、再生可能エネルギー事業の頭を押さえるようなやり方は、時代逆行といえないだろうか。

同エリアでは、今年5月、電力需要に対する太陽光受電量の割合が81%に達した。その後、夏の間こそエアコンなどの需要でバランスはとれたものの、気温の下がる秋以降の対策が課題になっていた。

10月に入るとまず九電は「電力広域的運営推進機関」を通じて中国や四国など5つの電力会社に緊急送電した。事態切迫感が醸し出されるのを見計らったかのように、太陽光発電の抑制に踏み切ったのだ。

国のルールでは

  1. 火力
  2. バイオマス
  3. 太陽光・風力
  4. 水力・原発・地熱

の順に出力制御することになっている。火力バイオマスは抑制したから次は太陽光の番、というわけである。

政府は2030年度に原発比率を20~22%再生エネを22~24%とする目標を立てているが、「ベースロード電源はあくまで原発、という方針を変えていない。

なぜ国は、危険きわまりない原発を最優先するのか。九州電力の場合、原発を4基止めても、再エネ電力がたっぷりあるのだから、出力調整のしやすいガス火力をうまく使いさえすれば、原発など全く不用だ。

いまの制度だと、電力会社は目先の利益のために原発を重視せざるを得ない。会社経営を助けるため、経産省は将来めざすべき再エネ中心の電源構成をあえて横に置き、優先順位を決めていると思われる。

よく知られている通り、電力会社が原発再稼働に躍起になるのは「総括原価方式」というシステムがあるからだ。必要経費に利潤を足して電気料金をはじき出す。放っておいても儲かる仕組みだ。

問題は利潤の大きさだ。会社の資産額を「レートベース」とし、それに一定の報酬率をかけて利潤の額を決める。資産が大きいほど利潤が増えるわけだ。

原発の建設費が膨大なのは周知のとおりで、それだけ資産額を押し上げる。加えて使用済みを含む備蓄核燃料なども資産として利潤算定のベースとなる。

ところが、原発を廃炉にすることが決まると、たちまちそれは巨額の不良資産となり、廃炉にも膨大な費用がかかるため債務超過の恐れさえ出てくる。

だから、政治が強いリーダーシップを発揮しない限り、電力会社は原発の維持にこだわり続け、そのために邪魔なものはたとえ再生可能エネルギーであろうと排除する。

経産省は、原発の出力を調整するのは難しいと言うが、ドイツやフランスでは需要に応じて原発で出力調整した実績があり、その気になればできるのだ。

ドイツは2050年までに脱原発を進めて、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を60%に引き上げる目標を掲げている。

昨今、世界における再エネの普及はめざましい。大自然を利用でき、燃料の輸入など不要。CO2を排出しないし、分散型なので災害にも強い。

欧州、中国で爆発的に再エネが拡大し、大幅なコストダウンが実現したおかげで、米国における普及もスピードアップし、カリフォルニア州では2016年、再エネ35%を達成、2030年までに50%をめざしている。再エネの未来は約束されているといっていい。

遅ればせながら、わが国の経産省も再エネの「主力電源化」に向けて課題を整理し始めたところではある。それでも、「原発ゼロには決して腰を上げようとしない

小泉純一郎元首相はかねてから「安倍首相が原発ゼロをやろうと思えばすぐできる。できることをやらずに、憲法改正というできもしないことをやろうとするのは不思議で仕方がない」と言っている。

なぜそうなるのか。背後に、“原子力ムラの企業群があるのはもちろんのこと。ムラの住人たちが献金やパーティー券購入で応援する麻生太郎甘利明ら自民党の大物政治家が存在することもまた忘れてはならない。

森友疑惑をめぐる財務省の不祥事が起きてさえ安倍首相が首を切れない麻生太郎財務大臣と電力業界の関係はよく知られている。

麻生氏と九州電力の仲は特別だ。麻生氏の父、太賀吉氏は1951年に2つの電力会社が合併して九州電力になったさいの初代会長だ。その縁で、九州財界の大物、第9代九電会長、松尾新吾(現相談役)が麻生氏の政治活動を支援してきた。

これまでに再稼働した原発9基のうち九州電力は4基をしめる。4年前に太陽光発電の買い取り契約を中断する動きがあったさい、先陣を切ったのも九州電力だった。その背後に、麻生太郎氏が控えていることは容易に想像できる。

麻生・松尾の“独尊”体質は九電にしみこんでいるように思える。玄海原発再稼働の説明番組をめぐる「やらせメール」問題で、九州電力がつくった第三者委員会が当時の佐賀県知事との不透明な関係を指摘したのに対し経営陣が猛反発した一件もそうだ。

第三者委は自分たちに有利な結論を出してくれる存在であるべきだと認識し、気に入らない報告が出てくると受け入れない。九州財界に絶大な影響力を誇ってきた会社の視野狭窄症だ。

「やらせメール」問題で松尾会長が相談役に退き、九経連会長も辞任したが、難航した九経連会長の後釜には麻生太郎氏の実弟麻生泰氏(麻生セメント社長)が就いた。麻生太郎という人物の横柄な態度は、九電の社風につながるところがあるかもしれない。

九電の再エネ出力制御に関し、NPO法人「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長は次のように指摘する。

需要が低い時期には原発や石炭火力発電の出力をあらかじめ少なくしておくなど、再エネの出力制御をする前にできることはあるはず。二酸化炭素(CO2)を排出しない太陽光や風力を最大限活用し、再エネの普及を進めていくべきだ。
(毎日新聞)

政府や電力会社が将来の主力エネルギーを再エネとはっきり定め、原発や石炭火力を「古い電力」として排除する方向に向かえば、今回のように、再エネの発展に水を差すような選択はありえないのではないか。

九州電力を口火として、伊方3号機が再稼働する四国電力など他の電力会社にも太陽光の発電抑制が広がることが懸念される。

経産省出身の取り巻きが幅を利かし、麻生太郎、甘利明といった電力利権の権化が睨みをきかす安倍政権に、将来を見据えた政策を望むのはしょせん無理な注文かもしれない。

それでも、世界の電力界の目は再生エネルギーに向けられている。

image by: shutterstock

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