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武田教授が調べてわかった「野菜1日350グラム」に科学的根拠なし

厚生労働省が「健康日本21」で示した「健康のため摂るべき野菜の量は1日350グラム」という数字ですが、そこに科学的根拠はなかったようです。武田邦彦中部大学教授は今回、メルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、自身が調べてみて判明した「350グラム」の根拠の浅さを暴露するとともに、日本でも実践者の多い「糖質制限ダイエット」がいかに人情に反する行為かについても怒りをもって記しています。

「野菜1日350グラム」は根拠なし。無理して野菜を摂取するべきか?

厚労省が「野菜1日350グラム」と言い出したので、そのまま「野菜を取らなければならない」と思っていましたが、フトしたことでその根拠を調べてみたら、「日本人がおおよそ1日280グラムを食べていること、野菜は多めに摂る必要がある」というたった2つの根拠で350グラムとしたことがわかりました。

ただ科学的にものを考えると、1日に食べる食材の量はほぼ一定ですから、もし野菜を70グラムほど余計に食べると、その分だけ何かを減らす必要があります。野菜はそれほど高価な食材ではありませんから、現在の状態で他の食材とバランスしている可能性もあります。野菜だけを増やして他のものが一定で、果たして健康に良いかは不明です。

肉はたんぱく源として大切ですし、みそ汁もご飯も必要なものです。また人間ですから若干の甘いものを食べるのも楽しみで、「楽しむのは良くない」などともいえません。

またさらに調べると、もともと「1日どのぐらいの野菜を食べている人が健康かというデータはないのです。それは1日にどのぐらいの野菜を食べているかということは測定していないからです。病院などで調べている例もあるのですが、それは健康な人ではないので、個性もあり、基礎データとしては使えません。つまり最初から「野菜は健康に良いという先入観で決めているといえます。

さらに、ある時期に「緑黄色野菜は健康に良い」ということが言われた時期があります。緑黄色野菜にはビタミンなどで特定のものが多いことは確かですが、だからと言って誰でも緑黄色野菜が良いはずはありません。食物学の原則から言えば、人間に必要な野菜が栽培され、供給されるのですから、もし緑黄色野菜が必要なら、栽培量が多いはずだからです。

ある大学の教授で栄養学の専門家に「緑黄色野菜が体に良いと聞いていますが、現在より多くとる必要があるというデータはありますか」とお聞きしたら、特にないというご返事でした。

さらに最近では「糖質忌避運動」があります。「菜食主義」があるぐらいですから、糖質忌避もありうるのですが、これもバランスが取れていない考え方のように思います。人間はお米や麦などの炭水化物や少量の砂糖果糖などの糖分を取って生きるようにできています。栄養が不足するときには、もっとも生産が楽な炭水化物で生存するに必要な糖質を取るのが標準的で、それで日本人の体ができています

ところが、最近では「むやみに食べたいので、栄養価の低いものでダイエットする」という奇妙な考えが発生しています。なぜ「奇妙」かというと、世界はまだまだ食料が不足し、常時8億人程度の人が極度の飢えに苦しんでいます。その多くが発展途上国なのですが、そこには「日本向けの畑」というのがあり、飢えて困っている人がいるのに、日本人がお金を払ってくれるからということで、食料が日本に輸出されています。

実に不見識な行動といえるでしょう。自分は余計に食べたい、食べると太る、だからといって食べる量は減らしたくない、だから世界で飢えている人が多くても太らない食べ物を余計に食べる、そして糖尿病などにならないように糖質を制限し上質の牛肉を食べる、というとんでもないことになっています。

たとえば牛肉は1キログラム生産するのに穀類を11キログラム使います。つまり米やトウモロコシを食べる代わりに牛肉でカロリーを取ろうとすると、11倍の食料が必要になるということです。それなら穀類や肉をバランスよく食べて、食料を浪費することをせず、その分で飢えた子供を救おうとするのが人情というものです。(メルマガより一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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