MAG2 NEWS MENU

また騙されに行くのか。日中関係改善に小躍りする日本企業の無知

10月26日、安倍首相は訪中に日本企業関係者を同行させ、中国企業と約3,000億円、500件の商談を成立させたとの報道がありました。これを受け、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、貿易戦争でアメリカから中国へ発動されている関税制裁が日本に及ぶ可能性がある時期に、日中企業の友好接近を図った安倍外交の真意を探っています。

日中友好、安倍総理がしたのは民主党政権の尻ぬぐい

皆さんご存知のように、安倍総理が中国を訪問しました。おおいに歓迎されたようです。

安倍首相が習近平主席と会談、日中新時代へ「競争から協調へ」など新3原則確認 李首相には「人権状況注視」言及

産経新聞 10/26(金)20:37配信

 

【北京=原川貴郎】中国を公式訪問中の安倍晋三首相は26日、習近平国家主席と北京市の釣魚台国賓館で会談し、新たな日中関係の構築に向け「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」とする3つの新たな原則を確認した。

米中貿易戦争が盛り上がってきた。もはや貿易戦争ではなく、「覇権争奪戦」に転化している。それで、「中国に接近するのはまずいんじゃないか!?」と感じる人は多いでしょう。私もそう思います。しかし、「程度の問題」ですね。

という基本を忘れなければ、「こんにちは!」「さようなら!」程度に仲良くしておいたほうがいいです。というのは、仲が良ければ、中国が尖閣に侵攻する確率が減りますから。

日中関係。ここ10年を振り返ると、よかった時が2回ありました。今と2009年です。しかし、民主党が政権をとった09年と、今の日中友好は全然次元が違うということを知っておく必要があります。

民主党がアメリカ、中国との関係を破壊した

08年、アメリカ発「100年に一度の大不況」が起こりました。この時、中国の高成長は止まらなかった。08年のGDP成長率は9.6%、09年9.2%、10年10.61%、11年9.5%。それで、世界中の人たちが「アメリカの時代は終わって中国の時代がくる!」と思った。

日本では09年、親米自民党政権が終わり、親中民主党政権が誕生しました。「トラストミー」鳩山さんはアメリカとの関係を破壊した。一方で、小沢一郎さんは、北京に行き「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!!!!!」と宣言しました(本当の話です。信じられない人は調べてみてください)。これは、小沢さんの「日本は中国の属国になります!!!」宣言でした。

幸い小鳩政権は短期間で崩壊した。次の菅さんは、反省してアメリカにすり寄り始めた。「おい!属国宣言はウソだったのか!」。激怒した中国は10年、「中国漁船衝突事件」を起こします。私は概して戦うことに反対です。しかしこの時日本政府には、「中国が悪い証拠ビデオ」があった。これを全世界のメディアに公開し、ガンガン中国を非難すべきでした。そして、「中国が尖閣の領有権を主張しはじめたのは1970年代からだ。まったく泥棒的要求だ!」と即座に表明すべきだった。ところが、中国を恐れた菅政権は、ビデオ公開をしなかった(後に、一色正春さんがYouTubeに公開しましたが)。

そうこうしているうちに中国は、「尖閣は、中国固有の領土であり、核心的利益である!!」と宣言した。それで世界中の国々が、「尖閣って日本領なのか、中国領なのか、よくわからな~~~い」となってしまった。菅政権の失敗で、日本の立場はとても悪くなりました。

次の野田さんは、2012年9月尖閣を国有化した。私は尖閣国有化を支持しますが、事実として日中関係は戦後最悪になった。こうして、民主党政権は09~12年という極めて短期間で、アメリカ中国との関係を破壊しつくしたのです。

哀れ、安倍総理は、民主党政権の「尻ぬぐい」をさせられる羽目になりました。

安倍総理の尻ぬぐい

尖閣国有化に激怒した中国。「日本壊滅戦略」を練り上げました。そして2012年11月、モスクワで「反日統一共同戦線戦略」が提案された。相手は、ロシア、韓国です。この戦略の骨子は、

初めての読者さんの心は、「トンデモトンデモトンデモ~!」と絶叫していることでしょう。そんな人は、全日本国民必読の完全証拠をいますぐご確認ください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

中国の戦略は、アメリカ、ロシア、韓国と日本を分断し、日本を孤立させ破滅させること。日本は、その逆の道を進むことで、この戦略を無力化させる必要があった。すなわち、

安倍総理は、まさにこれをしたのです。2015年3月AIIB事件が起こり、アメリカは大いに孤立しました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエル、オーストラリア、韓国などなどがアメリカの制止を無視して、中国主導AIIBへの参加を決めた。しかし、日本は参加しませんでした。同年4月、安倍総理はアメリカ議会で「希望の同盟演説」を行った。これで、日米関係は劇的に改善されました。

2015年12月、いわゆる慰安婦合意で日韓関係は好転した。これ、当時も今も批判が絶えません。わかります。しかし、「中国の反日統一共同戦線戦略を無力化する」意味はありました。2016年12月プーチンが訪日日ロ関係は大いに改善された。これで、ひとまず安倍総理の「反日統一共同戦線無力化作戦」は成功しました。

中国は、アメリカ、ロシア、韓国を味方につけて、日本を破滅させようと画策した。ところが、

というわけで、中国の戦略は停滞した。そこで中国は、日本との和解を模索するようになった。2018年になると米中貿易戦争がはじまった。中国は日本にすり寄るようになってきました。日中関係は好転しています。しかし、その質は09年とはまったく違います

09年は、中国(宗主国)、日本(属国)の関係だった。ところが今、日本、中国は対等の関係で、むしろ中国の方が立場が弱い。同じ「良好な関係」でも日本の立場は強く、何も妥協する必要はないのです。これは、安倍総理が5年かけてパワーバランスを日本有利にかえてきた成果です。

心配なこと

日中関係がよければ、中国が尖閣を侵攻する可能性が減ります。それはいい。一方で、同盟国アメリカから「シンゾーは裏切り者だ!」と思われないくらいの距離をとっている必要がある。もう一つ、とても気になることがあります。こちら。

日中企業3,000億円規模の商談成立、安倍首相訪中で

10/26(金)21:02配信

 

【AFP=時事】安倍晋三(Shinzo Abe)首相の中国公式訪問に際し、両国企業は合わせて約3,000億円規模の商取引を成立させ、日中関係の改善を強調した。ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、安倍首相や習近平(Xi Jinping)国家主席との個人的な親密さをアピールする一方で、米国の貿易赤字削減を目的に、中国には大規模な関税を発動、また日本からの輸出品にも目を向けつつある。このような背景がある中、日中関係の緊張には急速な緩和が認められる。李克強(Li Keqiang)首相によると、今回の安倍首相の訪中には1,000人近い日本企業関係者が同行し、総額約3,000億円に上る500の商談が成立したという。ただ、これ以上の詳細には触れていない。日本企業が巨大な中国市場への参入強化を熱望する一方で、中国政府は日本の技術や企業ノウハウに関心を寄せている。

これ、どうですか?「中国市場への参入強化を熱望」している会社のトップは、なんも考えてないのでしょうか?あるいは、全然情報が入っていないのでしょうか?日本企業がここ5年中国から逃げ出している事実を知らないのでしょうか?中国の成長率が年々下がっている事実を知らないのでしょうか?あるいは、米中貿易戦争が中国経済に破滅的な打撃を与えることを知らないのでしょうか?

RPE読者の皆さんで、「中国への参入強化を熱望している」方がいれば、もう一度考えてみることをお勧めいたします。

image by: 首相官邸

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け