朝から晩まで口やかましく子供を叱ってはいませんか?ついついやってしまいがちですが、「叱りすぎる」ことは子供にとって弊害しかないとも言われます。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが、「叱りすぎることの弊害」と「叱らない仕組みの作り方」について記しています。
日常的に叱ることには大きな弊害が2つある。合理的な工夫で乗り越えよう
「最近は子どもを叱らない親が多い」。こういう話を聞いたことがあると思います。テレビでもラジオでも、飲み屋の教育談義でも、みんなこう言います。でも、事実はその逆です。実際は、子どもを叱りすぎる親が多くて、子どもをほめる親が少ないのです。
私が教えた子でも、朝から晩まで叱られっぱなしの子が何人もいました。親から、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」「なんで○○しないの」「何度言われてもできないんだから」などと一日中言われ続けるのです。
このような否定的かつ感情的な言い方で叱られ続けると、大きな弊害が2つあります。1つは自分に自信が持てなくなることであり、もう1つは叱る親に対して不信感を持つようになることです。
もちろん、親は、物事や行動について言っているのであって「あなたはダメ」と人格そのものを否定しているつもりはありません。でも、いくら物事や行動についてでも、それが度重なれば結果は同じなのです。いくら物事や行動についてでも、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」などと否定的に言われ続けていれば、結論は「自分はダメだな」ということになってしまうのです。
これは当たり前のことです。なぜなら、そう言われ続けているのは自分以外の何者でもないのですから。
そして、弊害はこれだけではありません。否定的かつ感情的に叱られていると、子どもの中で親に対する不信感が育ってしまうのです。
子どもも、頭では「お母さんはぼくのために叱ってくれているんだ」と考えます。そして、自分にそう言い聞かせようともします。でも、心の奥の無意識の中では、だんだんある疑いが生まれてきます。「もしかしたら、ぼくはあまり愛されていないのではないか?」という疑いです。こういう疑いは、本人も気づかないうちに抑えがたく生まれてきます。
そして、これは、親と子の関係だけでなく先生と子どもの関係でも同じです。自分に自信が持てなくなるというのは、自己肯定感が持てなくなって、いい自己イメージを持てなくなるということです。
そして、自己イメージとは自分をつくっていく上での設計図です。建物をつくるとき設計図を元にするように、自分をつくるときも自己イメージという設計図を元につくるのです。
ですから、「自分はがんばれる。努力家だ」「自分はやれる。能力がある」という自己イメージを持っている人は、長い間にだんだんそうなっていきます。また、「自分はダメだ。がんばれない。能力がない」という自己イメージを持っている人も、長い間にだんだんそうなっていきます。
逆はあり得ません。つまり、「自分はダメだ」と思い込んでしまった人が、自分の可能性に果敢にチャレンジして、どんどん能力を高めていくことなどあり得ないのです。そういうことは、本質的にあり得ないことなのです。
ですから、親が子どもを伸ばしたいと思ったら、まずやるべきことは子どもがいい自己イメージを持てるようにしてあげることです。いい自己イメージさえ持てれば、親がいちいち細かいことを言わなくても、子どもが自分でどんどんそちらに向かって進んでくれます。
その反対に、まずい自己イメージを持ってしまえば、親がいくらあの手この手を繰り出しても、すべて徒労に終わってしまうことになるのです。
親がいつも否定的かつ感情的な言い方で叱っていると、子どもにまずい自己イメージを持たせてしまい、結果的にこのようなことになってしまうのです。
ここまで、私は親が日常的に叱ることの弊害を書いてきました。それを避けるために、私がお勧めしているのが自然にできる環境とシステムをつくることです。つまり、合理的な工夫をして叱らなくてもいいようにすることが大切なのです。
たとえば、子どもが片づけができなくて毎日叱っているという場合、次のような工夫をするといいでしょう。
- ○時○分から5分間「片づけタイム」と決めて、毎日その時刻になったら決まった音楽が流れるようにセットしておく
- 収納システムを工夫して、簡単に片づけられるようにしてあげる
- 箱や棚に「おもちゃ」「学校用品」などの明示をする
また、子どもが学校からのお便りを出し忘れるという場合、玄関に大きな箱を置くという方法があります。学校から帰ってきたら、すぐカバンの中身を全部その箱の中に出すようにするのです。これで全てが白日の下にさらされるので、子どもは宿題プリントやお便りに気づくことができます。子どもが気づかなくても、親が発見できるようになります。
子どもが歯を磨くのを忘れるという場合、次のような工夫をするといいでしょう。
- 歯ブラシをお箸と一緒に食卓に並べておく
- 食後の挨拶を「いただきました、歯を磨こう」にする
- 電動歯ブラシにしてみる
- 歯ブラシセットをお気に入りのキャラクター物にしてみる
このように、何事にも合理的な工夫をするようにしてください。親がこのような姿勢でいると、子どもも合理的な工夫で問題を解決するという姿勢を身に付けることができます。
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