欧米で懸念が囁かれる安倍外交。日中関係が好転したカラクリは?

 

同じように足並みがそろっていないのが、対カンボジア支援です。こちらは、あまり日本のメディアが伝えないのですが、先の“総選挙”でさらに与党の独裁色が高まりました。そして、“国内での出来事”が今まで以上にベールに包まれ、野党支持者への迫害や人権侵害、誘拐事件が多発している状況などが覆い隠されてしまっているとの疑念が高まっています。

ミャンマーのケースと同じく欧米諸国が対カンボジア投資を停止する今、日本は支援を継続する方針を発表しました。「日本はどうしてこう公然と人権侵害が明らかな国を支援するのか」と欧米の政府関係者や企業からは尋ねられますし、先日、BBCの番組でお話した際にもアンカーの方から何度も考えを尋ねられました。どうしてでしょうか?

日本の謎の動きの背景に中国の一帯一路構想

私の考えでは、この一連の“謎の”動きは、一帯一路に代表される中国の迅速な動きとアジア諸国の囲い込みへの対抗策です。もちろん日本政府としてもロヒンギャ問題には懸念を示し、カンボジアの独裁強化には神経をとがらせているわけですが、それ以上に、想像以上のスピードで広がる「紅い経済圏」(および安全保障・防衛ラインの引き直し)を懸念している表れと見ています。

それは、一帯一路およびAIIBがオペレーションを開始してからというもの、日本が東南アジア諸国と“契約”を進めていたインフラ案件を悉く中国にさらわれているからです。ミャンマーの国際空港の案件も、当初、日本のゼネコンのJoint Venture/コンソーシアムが受注する手はずになっていたのですが、中国がそれを上回る条件を提示し、一気に受注に漕ぎつけました。

記憶に新しいのは、ジャカルタの高速鉄道案件ですが、同様のケースはシンガポールからマレーシアをつなぐ予定の高速鉄道や、フィリピンでの数々のインフラ案件などにも及んでいます。カンボジアも例外ではなく、欧米諸国がソッポを向く中、「誰を戦略的なパートナーとして国土開発を行うか」決めかねているところのようです。

これまで“日本の高い技術力”や資金力に胡坐をかいていたのか、あまり日本政府が積極的に日本の売り込みをする機会を見ませんでしたが、最近は、官民挙げての“攻め”でインフラ案件を取りに行っています。今回のミャンマー支援・カンボジア支援の継続・拡大は、そのような外交戦略的な動きです。

中国については、一帯一路も当初はうまく進んでおり、習近平国家主席の支持基盤を構成するほどの成功と見られていましたが、一帯一路を通じての中国からの支援と投資は「借金で縛ってインフラなどの権益を握る」“経済戦争”“侵略”とのイメージが広まったことで、親中国だった各国が、ドミノの駒の様に、次々と反中政権に入れ替わってきています。

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