欧米で懸念が囁かれる安倍外交。日中関係が好転したカラクリは?

 

国を乗っ取られるのではないか?との懸念を抱いたモルディブ、元クリケット選手が大統領に就任したバングラデシュ、マハティール氏が返り咲いたマレーシアなどは、すべて一帯一路の方針を見直すと決定しました。中でもバングラデシュの方針転換は中国にとっては痛手となりそうです。 それは、一帯一路のライン上にある国であり、一路を構成するには不可欠な拠点であることに加え、隣国インドとのし烈な競争において、バングラデシュを中国側に入れておくことは、アジア戦略上有利だとされてきたからです。そのような波を受けてか、インドネシアも中国との関係の再考に入っているようです。

変わる日中の協力関係。アジア共同経済圏実現も

そのような国々が“助け”や協力を求めてきたのが日本です。一度は一帯一路の波にのまれた日本も、警戒はしつつも、支援の継続や拡大を打ち出すことで再度、東南アジア諸国でのインフラ事業に乗り出すことにしたようです。

しかし、これまでと違うのは、真っ向から中国と対峙するのではなく、様々な場面で協力をしつつ、アジアはもとより、アフリカにおいてもAsian Powerで開発を進めようとしているようです。

中国も一帯一路の“つまずき”を取り戻すために(失敗ではないことを国内に示すために)、このところ、日本との経済協力強化が進められています。例えば、知財保護での協力(知財が米中防衛戦争のメインテーマゆえに、日本の対米外交的には綱渡りかもしれません)、一帯一路プロジェクトへの日本企業の参加推進といった協力が進んでいます。

まだ試行段階ですので、今後の外交ゲームの行方次第では、結果は分かりませんが、アメリカが世界に対して貿易戦争を仕掛ける中、アジア諸国にとっては、日中の“協力”は大きな力になるでしょう。

実際に、欧米のコンソーシアムに与えられそうだったプロジェクトが、「同じならアジアで」と日中協力でのプラットフォームに乗り換えを検討する国が増えてきています。それが実現すると、これまでマレーシアのマハティール首相が唱えていながら実現できなかった「アジア共同経済圏」的な枠組みが実現するかもしれません。そして、アジア地域をめぐる勢力地図が塗り替わる可能性が出てきました。

もちろん、アメリカや欧州各国が指をくわえて黙っていることはないと思いますが、新しく広がりつつある日中の経済面での協力姿勢が軌道に乗れば、アジアの発展は、明らかに新しい段階に進むことになるでしょう。 まだまだどうなるかは分かりませんが、私個人としては、いろいろと東南アジア諸国のパートナーたちや、日中の外交当局から聞く話を総合すると、とても期待を持っていたいと思っています。

image by: 首相官邸

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