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この記事も閲覧できない。いまロシアで起きている信じがたい現実

1996年、ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を日本人として初めて卒業し、ロシア在住の地理的優位性も取り入れた旬な世界情勢を発信する国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。そんな北野さんは今回、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「28年間親しんだモスクワを離れる一大決心」を実行したことを報告し、背景にあった複雑な国際問題や国家制度の違い、今後の活動について自ら詳しく解説します。

さらばモスクワ!

今日は、超重要なお知らせがあります。実は、北野幸伯、28年住んだモスクワから引っ越しました。今までず~~~と、私が紹介される際の「枕詞」は、「モスクワ在住の北野幸伯さん」だった。しかし、これからは、「28年モスクワ在住“だった”北野幸伯さん」になります。

ここで、皆さん、疑問がわいてくることでしょう。昔はよく、「なんで、モスクワに住んでいるのですか~~??」と聞かれたものです。しかし、28年も住んでいると、「なんでモスクワから離れるのですか?」と聞かれます。毎回毎回説明するのも面倒なので、今回理由をバッチリ書いておきましょう。

幸せだったモスクワ暮らし

私は1990年モスクワにやってきました。まず、ソ連外務省付属モスクワ国際関係大学予科に入った。1991年、入学試験を受けて合格し、本科に入学。1996年、ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学を、日本人として初めて卒業します。私の最終学歴は、モスクワ国際関係大学国際関係学部政治学修士です。

卒業後、私はモスクワに残りました。というのも、「6年間モスクワで学び帰国するのはもったいない」と思ったからです。その後私は、メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』、HP「ロシア情報センター」、企業向け情報誌『ロシア政治経済アナリス』、ロシア投資コンサル会社「IMT」などを、次々と立ち上げていきました。しかし、残っているのは、皆さんが今読んでいるメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』だけです。何が起こったのでしょうか?

私は05年、1冊目の本『ボロボロになった覇権国家』を出版しました。それから現在まで、7冊本を出した。現在8冊目の本の出版準備を進めています。育鵬社(扶桑社)、集英社、ダイヤモンド社など、すばらしい出版社に恵まれ、私の執筆業はとても順調に進んでいきました。さらに、勃興してきた「ネットビジネスの波に乗り収入面が安定。「あれこれやる必要」がなくなったのです。それで、HP、企業向け情報誌、投資コンサル会社をつづける理由がなくなった。私は、好きなことだけして生きていける体制に移行しました。

08年、私は、前世は日本人だったに違いないロシア人女性日本語通訳と結婚しました。11年、長女誕生。15年、長男誕生。私のモスクワ生活はとても快適でした。その主な理由は、ロシア人が「親日」だから。28年モスクワに住み、「反日ロシア人」についに一度も会うことがありませんでした。そういう意味で、中国、韓国とロシアは、大きく異なっています。

「日本で学ぶ!」と決意している少年

では、なぜ私は快適なモスクワを離れることになったのか

引っ越しを考え始めたのは、去年のことです。友人の商社マンは、奥さんロシア人で3人子供がいます。長男は10歳ぐらいなのですが、「日本で学ぶことを、自分で決意した」というのです。彼の両親(私の友人と奥さん)は仕事の関係で、一緒に日本にいけない。10歳の彼は、「一人でもいく!」と宣言しているそうで
す。私は驚いて、「なんで?」と聞きました。すると、友人の子は、「徴兵を嫌がっている」のだとか。

「徴兵…」

私も、当時2歳だった自分の長男の未来を考え始めました。ご存知のように、大国ロシアは戦争をすることが多い。ソ連崩壊後も、チェチェン内戦、ロシアーグルジア戦争(08年)、シリア内戦への介入、ウクライナ内戦への介入と、ずっと戦争しているイメージです。

もちろん、ロシアには戦争をする理由があるのですが、「私の息子が徴兵され戦場に行く」可能性を考えると複雑な気持ちになりました。(念のために書いておきますが、ロシアで義務づけられた徴兵期間は1年です。この期間に戦場に送られる可能性は高くありません)。

私の息子がもし、「お父さん自衛隊に入る!」といえば、だいぶ印象は違うでしょう。「がんばって日本国を守ってくれよ」ということはできると思います。しかし、彼がロシア軍人としてシリアでの戦争に行く。その時、私は「がんばってロシアの国益を守ってくれよ」とはいえないでしょう。

そういう私の「気持ち」以前の問題として、「軍内のいじめ」も心配です。「日ロハーフ」であることを理由に「組織的いじめ」が起これば、どうすることもできません。「空手をやらせておけばどうにかなる」という次元の話ではないのです。私は、商社マンの友人の話を聞き、「我が家の問題でもあるよな」と思いはじめました。

ネット規制で実害を受ける

そうこうしているうちに、ロシア国内の情勢が変わってきました。「ネット規制が厳しくなってきたのです。どういうことでしょうか?

皆さん聞いていると思いますが、ロシアのメディア、特にテレビは国が支配しています。テレビで、プーチン批判を聞くことは、決してありません。ところが、ネット内ではまったく別世界」が存在しています。そこは、反プーチン勢力の天下なのです。

2018年3月の大統領選挙で、プーチンは予想通り圧勝しました。しかし、ネットの投票では、共産党公認候補のグルディーニンさんが常に1位をキープしていた。これは、どういうことでしょうか?

テレビを見る年配層は主にプーチン支持。テレビを見ない、ネットから情報を得る若い層はグルディーニン支持。年配層は、年と共に天国に行き、若い(反プーチン)層は増えていく。政権が、「インターネット規制に動き出すのは、当然の流れでした。

それで、私の仕事に実害が出始めたのです。たとえば、一時期「まぐまぐニュース!が見られなくなった。「まぐまぐニュース」で自分の記事が見られなくなるのは、とても困ります。また、一時期アマゾンが見れなくなりました。アマゾンで、自分の本がどのくらい売れているのか、確認できない。ちなみに、ロシアで、LINEは禁止です。

まぐまぐニュースもアマゾンも、そのうち見られるようになりました。しかし、私は、ロシアの未来について考えてみた。「今後、ネットの規制はますます強化されていくことだろう。そうなると、仕事をする環境がますます悪くなっていく

私が引っ越すことを決意した直接の理由は、「実害がではじめたから」なのです。

これからどうする?

というわけで、私はモスクワ在住ではなくなりましたが、皆さまにご迷惑をおかけすることはないと思います。これからも、メルマガを配信し、本を書き、ダイヤモンドオンラインやその他の媒体に記事を書いていきます。「これをきっかけにメルマガを有料にしよう!」とか、ありませんのでご安心ください。いままでどおり、「わけのわからない世界情勢世界一わかりやすく解説していきます。

image by: Ostranitsa Stanislav / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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