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「男らしさ」の呪縛。DV加害者の心の傷を癒やす方法はあるのか

男性によるDVやパワハラには、その要因に「男性ジェンダー」が潜んでいるそうです。男は強くなければならない、弱音を吐くべきでない等の「男らしさ」に縛られ続けてきたDV加害者。そのカウンセリング方法が、今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』で会話形式で詳しく紹介されています。

DVパワハラ

うちのボスは、社労士の他に販売士や産業カウンセラーキャリアコンサルタントという資格を持っている。一見バラバラな資格のようだが、最近のボスからの報告では、どれも良く似てきているとか?

つい最近のキャリアコンサルタントの更新講習のレジュメを見せてもらったら、賃金制度、人事制度、労働法、働き方改革のことが大きく書かれていた。販売士の更新講習のテキストもそうだ。ワークライフバランスに、ダイバシティなど半分以上が人に関すること、昨日の産業カウンセラー協会内のADRセンター調停員研修では男性相談・DV・パワハラ。どうも、どこを向いてもキーワードはひと」のようだ。


新米 「昨日の産業カウンセラー協会内のADRセンター調停員研修ってどんなことがテーマだったんですか?」

所長 「今回は、パワハラだよ。でも、今回はパワハラといってもいつもと違ってちょっと突っ込んだ内容だったね。社労士会のものとは全く角度が違っていたよ。前半を男性相談・DV当事者対応として、後半をそれらを踏まえたパワハラ事例の解決策。社労士が予防を重要視していることに対して、産業カウンセラーは、あらかじめ企業契約している場合を除くと、事後対策になるね」

新米 「社労士が事後にすることとなると、被害者と加害者の両方にヒアリングしたり、懲戒にするかしないかなど就業規則とにらめっこしたり…」

大塚T 「あと、再発防止のための研修をしたり、懲戒委員会に出席したり…。場合によったら、あっせんや調停になることもあるわね」

新米 「その男性相談とかいうのが気になりますね~。ボクも一応男なんで…どんな内容だったんですか?」

所長 「まず、知ってるだろうけど、自殺者の7割は男性だよな。高い生涯未婚率に、低い親権保有率、職場のメンタルヘルスの中心などの社会的課題は、背景には男らしさ男性ジェンダーの要因が潜んでいるってことなんだよ」

新米 「男らしさ?」

大塚T 「『一つ男は 勝たねばならぬ 二つ男は泣いてはならぬ 前向け 右向け 左向け』なんて歌もありましたね。父親がよく歌ってました。つまり、男は強くなくてはならない弱音は吐けないとかそういうのですか…?」

E子 「男だから、『しっかりしろ、強くあれ』男なのに『泣き虫、弱虫、怖がり』はヘン。女だから『優しくしろ、男をたてろ、家事を手伝え』女のくせに『乱暴、わがまま、出しゃばり』っていうことが、日本では自然に習慣化してるのよね」

所長 「内心はボロボロなのにSOSを出せない言えない…って男性の価値観と信念を解きほぐして行く作業をカウンセリングでしていくんだよ」

大塚T 「一般相談との違いは、どういうところですか?」

所長 「そうだね。

  1. 安心して『男の鎧』を脱げる場、本音を語り、涙を流せる場であること
  2. 『寄り添う』『支え合う』『つながる』実体験の場であること
  3. 男らしさを求める社会の問題が根底にあること
  4. 責めずに聴く、気持ちに焦点を当て、感情を肯定的に受け止めること
  5. ヒントを伝える、考えてもらうこと

要は、頑固な男らしさの縛りを解きほぐす作業といえるかな」

新米 「実際、DVをするような人が相談に来るんですか?」

所長 「DV加害者を2通りに分けると、相談に来るタイプは、自分をコントロールする能力を身につけていない、理性を失いやすくキレやすいタイプ、自分の性格に悩むタイプだね」

新米 「自分をコントロールする能力か~。難しそうですね。人間関係のことは…」

大塚T 「要は、『人間関係調整力が弱いってことなのかなぁ…」

E子 「『人間関係調整力』といえば、

って言われてるけど、この力が備わっていくると、暴力に依存しない暴力を手放すことができるんでしょうね」

新米 「DV加害者がそういう力が備わってきたかっていうのは、誰が判断するんですか?カウンセラーがずっとつきあって成長させていくんですか?」

大塚T 「社労士のハラスメント事例へのかかわりと違って、かなり濃いやりとりになるんですね。つきあって成長させていくのは、カウンセラーだけど、力が備わったかを判断するのは、DVならパートナー、被害者ってことになるんじゃないの?」

所長 「そういうことだね。夫婦ならパートナー、つまりは、カウンセラーが判断できるものではなく、被害者しか判断できないだろうね」

新米 「そこは、他のハラスメントも一緒でしょうね」

所長 「DV案件は、暴力を振るわなくなったことで終了ではないんだ。パートナーの傷を受け止めしっかりと寄り添うことができるようになること新しい関係を二人で築けるようになることが大切なんだ」

E子 「結局は、人間関係調整力を身につけることが大事ってことですね」

所長 「それらを続けてカウンセリングをすることによって、変化していってもらうってことなんだ。単発のカウンセリング、ヒアリングだけとはかなり違うね」

新米 「長丁場のカウンセリングになりそうですね」

大塚T 「DV案件のカウンセリングのポイントって、他にも気をつけることはありますか?」

所長 「しっかり傾聴するのはもちろんだけど、『加害者の傷』を踏まえ、暴力に至った経緯を責めずに聞き、不安や苛立ち、怒り、悲しみ等の感情を肯定的に受け取めることだね」

新米 「えぇ!?加害者の傷ですかぁ」

大塚T 「加害者にも被害者とは違った、私たちにはわからない傷があるんですね」

所長 「かもがわ出版の『男の電話相談』という本では、5つの傷を理解するように書かれているね。

つまり、加害者は、どこに行っても悪者扱いで、誰も自分の言い分を聴いてくれない、警察だって話も聞いてくれない、誰も助けてくれないという追いつめられた気持ちを受け取める、安心感と信頼感を抱いてもらうことが大事なんだ」

E子 「長年の環境から蓄積された傷があるから暴力を振るうっていうこともあるんでしょうね」

所長 「パワハラには、いろんな背景があるね。単に懲戒処分をして終わり、辞めさせて終わりでなく、本当は、我々も掘り下げて本当の解決をするべきなんだろうね。ハラスメントの奥は深いぞ~」

皆 「ホントに~…」


DV相談のポイント

DV加害者から相談を受ける際の留意点

男DV被害者対応に関わる留意点

image by: Shutterstock.com

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【著者】 イケダ労務管理事務所 【発行周期】 週刊

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