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「駅から遠いマンションは早く売った方がいい」は本当なのか

「不動産だけは死んでも手放してはいけない」というこだわりは、現在では全く理にかなっていないものなのだそうです。さらに、駅から遠いマンションは特に早く売ったほうがいい、とも。一体なぜなのでしょうか。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者でマンション管理士の廣田信子さんが、専門家の意見を紹介しています。

駅から遠いマンションは早く売った方がいい?

こんにちは!廣田信子です。

先日のマンションコミュニティ研究会のフォーラム「人口減少時代の都市再生・都市居住を考える」は、ほんとうに聞きごたえがありました。

千葉大学大学院教授 小林秀樹氏
株式会社不動産経済研究所社長 高橋幸男氏
株式会社さくら事務所会長 長嶋 修氏

の3人のそれぞれの立場からのお話を一度に聞けて、パネルディスカッションができたことは、大きな意味があったと思います。改めて3人のゲストの皆様に感謝します。コーディネーターとしては、もっと、もっと続けていたかったです(笑)。

これからのマンションの市場価値がどうなるか…に興味があって参加された方も多かったと思います。これについて、長嶋さんは、不動産市場の「価値が落ちない」「だらだらと下落」「無価値」の3極化はますます進む。「価値が落ちないマンションは全体の10%~15%70%は経年とともにだらだらと下落」の道をたどる…と。

中古マンション成約単価は、駅からの距離が遠くなるほど下がる傾向が、どんどん顕著になっています。これは、地方や郊外だけでなく、都心でも同様です。都心7区の駅からの徒歩距離1分あたりの中古マンション成約単価格差は、2013年には8,000円でしたが、2018年(5月時点)では、1万8,000円までになっているといいます。

すなわち、5年間で、駅からの距離が遠くなるにしたがってマンションの価格が下落する割合は2倍以上になっているのです。新築でも、駅から7分以上の物件は軒並み苦戦しているといいます。この傾向は、今後もますます続くのです。その背景には、空間より時間が大事と考える価値観の変化、車保有率の低下、共働き世帯の増加等が考えられます。

では…「価値が落ちない」10%~15%のマンションを除くと、「だらだらと下落」する、駅からの距離があるマンションは所有し続けるより早く売った方がいい?と究極の質問をしてみました。長嶋さんの答えは明確で、「その通り」でした。あまりに明確だったので、会場からは笑いが…。みんな、何となく思っていてもいいにくかったことなのです。

それに対して、小林先生からは、売って出ていく人は、それでいいかもしれないが、残った人たちがどうするのかという問題がある…との指摘がありました。

マンションを売って出ていくということは、適切じゃないたとえかもしれませんが、沈みゆく船から自分だけ逃げ出すようで…そのマンション、団地に長く暮らしてご近所と仲良くつき合ってきた方は、何となく周りに悪いような気持にもなるのです。でも、そこは、冷静に現実を見なければいけないのです。

自分が、そのマンションを気に入っていて、そこが、周辺環境、コミュニティも含めていいと思えば、市場価値がどうあろうが関係がないのです。特に、高齢になって、通勤という苦行?から解放されたら、駅からの距離はあまり関係がなくなります。都心への交通の便より、地域の公民館、図書館、福祉センター、かかりつけ医等のところへ徒歩やバスで行きやすいことの方が大事になります。駅から遠くても、がんばってマンションを維持管理することです。

でも…一人暮らしが難しくなって施設に入居した、親が亡くなって相続した、というような事情で空き室にしているのだったら、また、いつか値上がりするときが来るかもしれない…なんて漠然とした希望は捨てて、できるだけ早く売却した方がいいのは間違いないようです。

市場価格がぐっと下がるということは、若いファミリーやローンを組むのが難しい高齢者にも買いやすくなるということです。それは、それなりの市場価値で、空き室をなくすることに繋がり、マンションが住まいとしての価値を保つためには決してマイナスではありません。価格が下がることで、親のマンションにもう一戸購入して、親子世帯の近居もしやすくなると小林先生も言われました。

高橋社長は、空き家問題の背景として、まっさらな土地にして流通させれば、市場性が生まれるのに空き家のままにしておくのはその方が得だから。税制の不備は正していく必要があるとしても、空き家の持ち主の決断次第だ…と。

駅から距離がある不動産は、市場価格は下がる一方だということを受け入れて、できるだけ早く、売れるうちに売った方がいい、という割り切りが広がれば、新たなマンションの活かし方もあると思いました。

超高齢化社会は、たくさんの高齢区分所有者が亡くなる社会です。利用されなくなった不動産が、滞りなく市場に出てくることは重要なことだと改めて思いました。何となく、親の不動産は処分しにくい…不動産は、いざというときに重要な資産だから、手放してはダメ…という意識を手放すことでしょう。

でも、昔の、土地・不動産神話がしみついている世代にはそれが難しいのです。友人が言います。不動産だけは自分が亡くなっても処分しちゃダメ…と親は言うのよね。ましてや、施設に入って空き家になっていても生きているうちに売るなんてとてもうんと言わない…と。でも、そのこだわりは、実は、誰のためにもならないのです。

高経年マンションの管理組合の経営目標には、「終の棲家として安心して住み続けられる」と同様に、「空き室にしないで、市場で流通させる(たとえ、市場価格が下がっても)」が必要になるでは…と思っています。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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