ゴーン事件から学ぶ「社員に心を砕く経営者」がいなくなった理由

 

ところが、法律を作るときに間違ったものがあります。その一つが、「商法」です。商法は明治時代にフランス商法、のちのドイツ商法などを参考にして、若干、日本の商慣習を取り入れたもので構成されていますが、特に戦後の改正では、「株主」や「会計」を中心として進み、その間、「従業員」はまったく無視されてきました。

つまり、日本に住んでいる限り、企業や自営業など多くの人が何らかのビジネスを行って生計を立てているのですから、日本人の幸福と商法は密接に関係しています。だから、商法では十分に「日本人の幸福に役立つ商業」を前提にしなければならないのですが、全く無視されています。

日本には「社員に心を砕く経営者」がいなくなった

今から300年ほど前、ヨーロッパの近代化に伴って「資本を持つ資本家が、労働者を集めてビジネスをする」という形態が誕生しました。それまで村の共同体でみんなのために働いていた人たちは、「お金がすべて」の世界に違和感を感じて、マルクスなどが「共産主義」を生む原因になったのです。

その後、資本主義も少しずつ修正され、人間を奴隷のように使われないように、労働組合、ストライキなどが認められてようやく「人間らしい資本主義」に代わっていったのですが、戦争のあと、全体的に豊かになったので、労働組合などが衰退し、再び「お金が全て、人間は奴隷」の方向に進んできました。

もともと、会社も従業員が「社員」で、従業員の幸福のために経営者は心を砕いたのですが、現在のように「会社は株主のもの。従業員は社員とは言わない」となってきました。

でも、少し深く考えてみると、会社がその仕事をするために必要なものは、第一に社員(従業員)、第二に経営者や管理者、そして第三にお金です。つまり、お金がすべてではなく、逆に言えば「人が全て」とも言え、それはどちらに注目するかだけで決まるのです。

資本家がお金で株を買って従業員を雇っているとも言えるし、日本国民が集合して会社で仕事をして必要なお金を株を発行して集めるとも言えるのです。だから、現在のように株主総会で会社の方針を決めるのではなく、従業員総会で会社の方針を決めてもよいのです。

image by: Andrei Kholmov / Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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