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高城剛が明かす、ファーウェイ問題とゴーン逮捕を結ぶ「点と線」

メルマガ『高城未来研究所「Future Report」』の著者で、世界を股にかけ様々なメディアで活躍しているクリエーターの高城剛さん。来年初頭に公開予定の年イチ恒例ロングインタビュー収録時に、真っ先にお聞きしたのが、ここ最近大きな波紋を呼んでいる「ゴーン逮捕」と「ファーウェイ問題」について。これら2つのニュースを結ぶ、今夏の「意外な出来事」とはいったい何だったのか。高城さんが私見たっぷりに語ってくれました。

「ゴーン逮捕」の伏線は、すでに今夏にあった

──最近の日本国内は「ゴーン逮捕」と「ファーウェイ問題」のニュースで持ち切りです。高城さんはこの2つのニュースについて、自身のメルマガで「同根である」と語られていましたが、それは一体どういうことなんでしょうか。

高城 :これらの話は、もっと俯瞰的に見た方がいいと、僕は思っています。

まず「ゴーン逮捕」ですが、この話は今年の夏にイーロン・マスクがSEC(アメリカ合衆国証券取引委員会)に訴えられた出来事から始まっているというのが、僕の見立てです。

実は最近のテスラを支えていたのは、中国だったんです。ここ数年、テスラと中国との関係は蜜月で、中国政府のオフィシャルのイベントにイーロン・マスクが出たり、上海市の郊外にテスラの工場を、主には中国からの資金提供で作ったりと、中国国内で精力的に活動していました。今年の6月には、上海の市長と固く握手をしているのが、向こうのメディアにも大々的に報道されています。

そんな状況下で、SECはイーロン・マスクを訴えたんですが、どうして訴えられたかというと、イーロン・マスクがTwitterに書いたジョークが原因だったと。どういうジョークだったかというと、「テスラを1株420ドルで非公開化することを検討している。資金は確保した」っていう内容だったんですが、これがなぜ冗談だとわかるのかというと、この「420」という数字は大麻を指す隠語なんです。これはアメリカ人の大人ならほとんどが理解している、周知の事実です。

余談ですが、ここ近年アメリカでは大麻が急速に市民開放されていて、この「420」にちなんで、4月20日になると各地で大パーティが開かれます。例えばカルフォルニアなら、サンフランシスコのゴールデンゲートパークという一番デカい公園にみんなが集まって、4月20日の午後4時20分になったら一斉に大麻に火をつけようっていうイベントが開かれるのが恒例になっています。以前なら、そういう集まりは警官が取り締まるところでしたが、大麻が合法化されてからは、大麻を吸ってる市民を警官が守るようになりました。時代が変わったことを象徴するイベントで、毎年ニュースにもなっています。このように、「420」っていう言葉の意味は、誰もが分かってることなんです。

ところが、それにもかかわらずSECはイーロン・マスクの「420」のツイートに対して、「風説の流布だ」「けしからん」っていうことで訴えたんです。これって完全にアメリカ政府の因縁だし、中国に対するボディブローですよね。

その結果、恐らくかなり大きな司法取引があったと思うんですが、イーロン・マスクは会長を辞任し、テスラ内での権限をはく奪され、代わりにアメリカ政府の意に適う取締役を入れられてしまった。これでテスラは、完全にアメリカから動けなくなったんです。

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どうしてアメリカ政府は、テスラにこういう因縁を吹っ掛けたのかというと、自国の自動車産業が疲弊し、海外工場での生産を事実上やめさせているなかで、テスラが他国で最新鋭の工場を作ることは好ましいことではないし、電気自動車や自動運転テクノロジーの流出を防ぎたいというのもあります。当然ながら、この背景にはアメリカと中国の貿易戦争に見せかけた次世代の覇権争いがあるのは間違いありません。

米中貿易戦争は完全な覇権争いです。中国は今「中国製造2025」という産業育成戦略を推し進めていますが、これは2049年までに中国が世界一の製造大国になることを目標にしたもので、その第一ステージを2025年に置いて、そこでまずはアメリカや日本といった世界中の主な先進国と肩を並べようとしています。その一環で品川駅周辺企業の日本の技術者もずいぶん引き抜かれて、ファーウェイなどの中国企業に流れていました。

アメリカとしては、そんな中国の勢いを今のうちに止めておかないと、自動車産業だけじゃなく航空宇宙産業や情報産業においても、将来的には中国に負けてしまう。そこで表向きは「関税を掛ける」ということで、まずは対抗しているわけです。

……と、ここでカルロス・ゴーンの話に戻るんですが、彼を捕まえた東京地検特捜部、この組織のすべてではありませんが、アメリカ政府の意向を汲む人も少なくありません。アメリカの意向に沿わない政治家や実業家を次々逮捕するのは、そのためです。

当たり前ですが、あれほどの大物を捕まえるのに、日本政府もアメリカ政府も事前に知らないわけはない。ですから、日本もアメリカも捕まえることを了承していた……もっと穿った見方をすれば、ゴーンを捕まえることをアメリカが促したと考えてもおかしくありません。つまりは、日産の技術がフランスに流れ、さらにフランスから中国へと流れてしまうことを食い止め、アメリカの保護政策である自動車産業をこれ以上窮地に追い込まないようにしたいという、イーロン・マスク同様のアメリカ政府の思惑があったんじゃないかと、少し広いアングルでも考えたおいた方がいいでしょう。なぜなら、このようなことが、今後も続く可能性があるからです。事実上の米中戦争ですからね。

一方のファーウェイですが、この会社ってもともとは人民解放軍の通信部隊が作った会社なんです。で、逮捕されたCFOっていうのは、元人民解放軍だった創始者のお嬢さん。次期総裁と言われていた人物ですから、今のうちに芽をつぶしておこうっていう狙いは、間違いなくあったと思いますよ。以前、日本のシャープの液晶技術が独走していた時、シャープのエクゼクティブがアメリカに入国すると、逮捕される可能性があったため、渡米することができませんでした。その時、僕も仕事をしていたので、横で見ていましたが、そうして、シャープは少しづつアメリカ市場を追いやられ、窮地に立ちます。

日本政府は速攻「ファーウェイは使わない」って言いだしました……さすがアメリカの意向に誰も逆らいませんね(笑)。シャープさえ、守れませんでしたからね。でも欧州のいくつかの国では「問題ないから使う」と明言している国もあり、このあたりは明暗ハッキリ分かれました。たぶん欧州では徹底的に調べたうえで「問題ない」って言ってると思いますから、ハードウエアとしては、たぶん問題ないんですよ。でも、アメリカは「謎のチップが見つかった」とか色々言ってますが、詳細は言わないわけです。

なにしろ、違法に情報を収集しているのは、アメリカだけですから、これはスノーデンの一件で明らかになりました。「違法に情報を収集する利権」。これこそ、アメリカの力の源なんです。

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高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けするメルマガ「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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