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MBAが解説。100億あげちゃったPayPayが生き残るためにすべき事

割り勘時に威力を発揮するLINE Payや「100億円あげちゃうキャンペーン」が話題となったPayPayの登場など、キャッシュレスサービス業界が活況を呈しています。しかし、乱立の後に淘汰が起こるのも世の常。いったいどのサービスが勝ち残るのでしょうか。MBAホルダーの理央 周さんは自身のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』で、PayPayの100億円キャンペーンを紐解きつつ業界の未来を占うとともに、そこから学ぶべきことを考察しています。

スマホ決済はどこが生き残るのか? ~PayPayの戦略をマーケティングで紐解く

消費者が購入する際の決済手段の一つの、キャッシュレス化がどんどん進化しています。ここのところ、ニュースでも大々的に取り上げられている、ソフトバンクの「PayPay」も、スマホ決済もそのキャッシュレスサービスの一つです。

消費税変革や、2020年の東京オリンピック時の、インバウンド需要の増加を睨んで、政府もキャッシュレス化を進めているとのこと。2025年までに、支払いの40パーセントをキャッシュレスにする、という方針を打ち出しています。

キャッシュレスで購買できる手段は、クレジットカード、交通系カードのようなICカード、そしてQRを読みとるだけのスマホ決済が主なものです。

そんな中で、マーケター的にスマホ決済をはじめとする、キャッシュレス化の動きがどうなるのか、私たちは何に気をつけ、何を学び、何をしてくべきかを考えていきます。

ソフトバンクのPayPayは何を狙っているのか

ソフトバンクのペPayPayは、その「100億円あげちゃうキャンペーン」で大きな話題となりました。LINE Payや楽天ペイよりも後発のPayPayとして、話題を醸成すること、そして、幅広い認知と使える範囲を拡大することを、初期の戦略としています。

キャンペーンの内容は、購買額から20%戻ってくる(上限月5万円)、40回に1回の確率で10万円までのボーナスポイントがある、総額は100億円とし、そこで終了。といったような内容でした。

また、40回に一度の10万円のポイントバックによって、高額商品を買いたくなるという消費層を取り込みました。これは、アップルやダイソンの高額だが高品質というイメージを持つ企業の戦略とマッチし、がゆえに相性も良いでしょう。希少価値がある商品をPayPayで買うという動機づけになります。

PayPayは、中国大手QR決済の「アリペイ」と提携していることで、中国からのインバウンド需要も取り込めます。

このように、中長期的に明確な戦略が立てられている、というように見受けられます。

ユーザーのメリットは何か?

では、スマホ決済を実際に使うユーザーの立場から、考えてみましょう。

買う側のユーザーの方は、スマホで店頭のQRコードにかざすだけなので、まず簡単会計がスピーディになります。さらに、家電量販店などとのポイントもダブルでつくので、さらにお得、というメリットがあります。お金の出し入れが記録されることで、使いすぎにも注意できるので、節約型、しっかり者のユーザーにとっても便利です。

一方で、潜在的な面倒さとしては、アプリダウンロードなど最初の手間がかかること、ID登録までの紐付けが面倒、使える店がまだまだ限られていること、PayPayへのアクセスの集中で回線が動かなくなったというハプニングもあったと報道されました。

交通系カードよりも楽に使えるとか、これらの壁を乗り越えるだけのメリットを打ち出すことが、これからの課題です。

さらに、ユーザー側は、最初のサービスが良くても、それ以降のサービスが充実していなければ、当然ですが、他に流れてしまいます。PayPayとしては、100億円、10回に1回10万円、20%還元などとお金でのキャンペーンを仕掛けたので、お値打ち安さが好きな顧客層が流入している可能性もあるため、今後のキャンペーンでどう舵を切っていくのか、が重要になります。

このPayPayと、LINE Pay、楽天ペイ、Origami Payとを比較してみると、PayPayとLINE Payは、今は決済手数料なしというのが特徴です。つまり、自社決済を使えるお店を増やす戦略です。これは、昔ヤフーBBがADSLサービスを開始した時に、使用できる機材を無償で配布した戦略と同じです。

また、スマホ決済に関しては、店側にとって機材不要で電源不要、QRコードの紙を置いておき、ユーザーにスキャンしてもらい、金額を打ち込むだけ、というプロセスなので、店側の設備投資が少なくて済むという加盟店のメリットがあります。

LINE PayはPayPayとの共通点は多いのですが、メッセンジャーアプリの特徴を生かし、テレビCMでもやっているように、友達間で送金が簡単で、割り勘などもできるというのが差別化ポイントです。楽天ペイは、楽天カードでポイントが増えることが特徴です。

来年からは、郵貯やセブン&アイも参入してくる携帯キャリアのように、いつかは3つくらいに集約されていくでしょう。

そしてもちろん、ユーザー側にとっての決済手段は、もちろんスマホ決済だけではありません。キャッシュレスでは、クレジットカード、交通系カードもあるし、プリペイドカードもあります。さらに、見逃しがちですが、決済手段としての現金も、当たり前ですがあるわけです。

これらの決済手段には、世代間で今は大きな差があることも推測できます。

PayPayもこれらの直接・間接競合との差別化ポイントをターゲット層を明確にしながら以降訴求していかなければ、話題性のみで終わってしまいます。どんな戦略で、維持・継続策を打ち出してくるのか、が今からとても楽しみです。

私たちはこのキャッシュレス化から何を学ぶべきか?

今回のPayPayのキャンペーンや、キャッシュレスへの動きに、私たちが学べることは多いかと思います。

まず、事業者側は、商機を見逃さないこと。ソフトバンクや、LINE、楽天がキャッシュレス化の動きをいち早くかぎとり、手を打っていることで市場も拡大していきます。商機を見逃さないためには、市場の変化とそれに伴う顧客のニーズの変化に敏感でいることが重要です。

次は、戦略の明確化です。戦略とは、ゴールまでの道のりをストーリーとして描くことです。ソフトバンクの戦略は明確でしたよね。ビジネスを遂行する上では、えてして短期的な結果を追い求めるがゆえに、施策・手法に振り回されがちです。

しかし、戦略がブレると、適切な施策を選択できません。まずは、ゴールを達成するための戦略がはっきりしているのか、を考えていきたいところです。

最後に、顧客獲得の努力だけではなく維持の施策も考えておくこと。ビジネスは何事も、売り切りでは十分ではありません。継続して優良顧客でいてもらうことが必須です。そのためには、維持できる顧客価値を明確にしてから新規獲得策を考えるべきです。

PayPayのキャンペーンは、これらのことを思い起こさせてもらえる、重要なヒントになりました。

image by: PayPay株式会社 - Home | Facebook

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ビジネス・仕事に大事なのは、情報のキモに「気づき」どう仕事に「活かす」かです。トレンドやヒット商品には共通する「仕掛け」と「思考の枠組み」があります。このメルマガでは、AI、5G、シェアリングなどのニュースや事例をもとに、私の経験とMBAのフレームワークを使い「情報の何に気づくべきか?」という勘どころを解説していきます。現状を打破したい企画マン・営業マン、経営者の方が、カタくなっている頭をほぐし情報を気づきに変えるトレーニングに使える内容です。

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