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泥沼化するレーダー照射問題で最も恐れるべき「中露の介入」

2018年12月に発生した韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題。解決の糸口がなかなか見えてこないこの問題ですが、この対立がエスカレートかつ長期化することは、日本にとって危険であると指摘するのは、米国在住の作家・冷泉彰彦さん。日本にとってどのような不利益が考えられるのかを、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で説明しています。

日本海の漁業権と南北朝鮮問題

今回のレーダー照射はあくまで韓国軍の「統制の乱れ」という理解で済めばいいのですが、そうでもないようです。というのは、韓国の護衛艦(いや正確に言えば駆逐艦でしょう)が、北朝鮮の船の「瀬取り」を護衛していたという説もあるからです。

場所は、日本のEEZ(排他的水域)内の、大和堆という豊かな漁場です。普通「瀬取り」というと、制裁対象物資、具体的には闇兵器の部品など国際法上の違法性が高い密輸の際に「船から船へ積み替える」行為を指します。

ですが、今回のものは、恐らく「移し替え」しているのは水産品、具体的にはイカなどである可能性が考えられます。要するに、違法操業をしている北朝鮮の漁船を、韓国海軍が護衛しているという可能性です。何から守っているのかというと、違法操業を日本の海保などに摘発されるのから「守って」いるわけです。

そうであれば大変に悪質ですが、だからと言って、このまま日韓あるいは「日本対南北朝鮮」の対立を続けて行くのは危険です。危険というのには具体的な意味があります。

それは、このままでは北朝鮮問題で日韓がアメリカと一緒に圧力がかけられないということではありません。また実際に統一のプロセスで、日本と統一途上の韓国との間で軍事的緊張が発生するからでもありません。

もちろん、この2つの問題は重要です。ですが、そこで一線を超えて世界の笑い者になる可能性は限りなく低いと思われます。アメリカが調停しなければ、中国が調停し、どちらにしても政治的な解決の材料にするのが、当事国の共通の利益だからです。

問題は、水産資源です。このままですと、日本海での水産資源については、まず日本側の漁業従事者に大きな不利益が固定化してしまいます。また、乱獲による資源への影響も心配です。

そう考えると、このまま対立をエスカレートすることには、何のメリットもないわけです。「いずれ北朝鮮とも直接対話をして漁業協定を」という方向に持っていかねばならないわけで、いつまでも戦争ゴッコや、狐と狸の化かし合いを海上で続けるのもムリでしょう。

この問題ですが、まずは日本と韓国との間で真剣に対話をしないと、どこかで本当に中国あるいは、ひょっとしてロシア辺りが介入してきて、いずれにしても不必要なまでに政治的なポイントを得点してしまいそうです。

image by: Alexander Gatsenko / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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