世界中が呆れ顔。米英という旧覇権国が撒き散らす老害の大迷惑

 

「アメリカ・ファースト」の罪と罰

しかしトランプが本当に寂しいのは、家族やスタッフ・閣僚の不在ばかりではなく、世界との関係である。

少し歴史を振り返ると、今から29年と1カ月前にマルタ島でのゴルバチョフ大統領との会談で冷戦を終結させたのはブッシュ父大統領の偉大な功績ではあるが、彼の罪は、それを冷戦という第3次世界大戦に勝利したのは米国で、これから米国はもはや敵のいない唯一超大国”として世界で自由に振る舞うことができるという、完全に誤った時代認識を抱き、その具体化の1つとして、91年に湾岸戦争を仕掛けたことにある。冷戦が終われば覇権も終わり、最後は戦争で決着をつけようという野蛮な軍事力信仰も終わるというのが時代の意味であったというのに、米国自身がそのことを理解し切れずに、逆に軍事力行使に暴走したのである。

次のクリントン政権は、ある程度その誤りに気づいていて、当時言われた言葉では「軍民転換」、つまり過去の軍事開発で培われた世界最先端の技術、例えばインターネットやデジタル衛星通信・放送などを思い切って民間に開放し、それによって米国がハイテク・IT分野とそれを駆使した電子的金融空間の構築でイニシアティブを発揮するという戦略を採った。もし2000年の大統領選で、クリントン政権下で情報スーパーハイウェイ構想を推進したゴア副大統領が次期大統領に選ばれていたら、その後の米国の進路はだいぶ違ったかもしれないが、勝ったのはブッシュ子で、しかも間の悪いことに、就任半年後余りで9・11同時多発テロが襲い、ブッシュの「これは戦争だ!」の一言で米国が軍国化に突き進むことになった。

そのため米国は、覇権国であることを止め、それでも依然として最大の経済大国ではあるけれども他に命令を発するような資格は持たない「普通の大国」の1つであるという適正なポジションに自分を軟着陸させるチャンスを失ってしまった。元英首相のゴードン・プラウンが「『アメリカ・ファースト』は過去にしがみつく旧覇権国の自傷衝動のようなものだ」と言っているのは、その通りである(ニューズウィーク1月1日号)。

print
いま読まれてます

  • 世界中が呆れ顔。米英という旧覇権国が撒き散らす老害の大迷惑
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け