北方領土は北海道・北東沖、知床半島先に位置する択捉島(3,167キロ平方メートル)、国後島(1,490キロ平方メートル)、色丹島(249キロ平方メートル)、歯舞群島(93キロ平方メートル)の千島列島四島を指す。1875年の樺太・千島交換条約で千島列島は日本領、樺太をロシア領とする協定を結んだ。ところが、45年2月の米英ソによるヤルタ協定で千島列島をソ連に引き渡すことで合意したため、第二次大戦末期の45年8月9日にソ連軍が参戦し千島列島と北方四島を占領し約1万7,000人の日本人を退去させた。
その後51年のサンフランシスコ講和条約により日本は千島列島を放棄したが、56年10月の日ソ共同宣言で「平和条約締結後に歯舞、色丹の日本引渡し」を明記。ただ平和条約は締結されないまま今日に至っている。
安倍首相が北方領土に最も力を入れ、北方領土に経済協力をしてゆけば、プーチンも折れてきやすいとみてここ1年は協力を進めている。しかし、日本が経済協力を進めればプーチンが妥協するかといえば、したたかなプーチンは甘くはない。現に最近、四島の主権は渡さないと主張し始めている。色丹島の住民は現在約3,000人(歯舞は0人)で、択捉、国後、両島で約1万3,000人に及ぶといい、ロシア人の立退きは殆んど不可能なのだ。
安倍首相が外交に熱心なのは国民も認めているが、結果として経済協力の手を差し伸べているだけで日本の国益には殆んど繋がっていないのが現実だ。安倍外交が訪問先でパスポートにスタンプを押してくるだけの“スタンプラリー外交”と皮肉られるでもあろう。
(財界 2019新春特別号 第486回)
image by: Drop of Light / Shutterstock.com