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軍事アナリストが警鐘。絶対に煽ってはいけない対馬海峡38度線論

文在寅政権が取り続ける反日・親北朝鮮の態度によって、世論を煽り動揺を招く「対馬海峡38度線論」が取り沙汰されていますが、これに警鐘をならすのは、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さんです。仮に在韓米軍が撤退することになっても、周辺国が日本に容易には手出しできない現実をしっかり伝え、安倍安定政権だからできる硬軟織り交ぜた対応をすべきと提言しています。

「対馬海峡38度線論」だって?

「38度線が対馬海峡まで南下してくる」という議論が高まっているのをご存知でしょうか。例えばこんな具合です。

「その場合、南北を分けていた38度線が、対馬海峡まで下りてくることになる。日本は防衛政策の抜本的見直しを迫られる。もし朝鮮半島が中国の庇護下に入れば、中国と対峙する最前線は日本ということになる(政府高官)」(2018年4月19日付産経新聞 阿比留瑠比編集委員)

最近の「対馬海峡38度線論」の高まりは、韓国で再び頭をもたげた徴用工問題や慰安婦問題に加え、韓国駆逐艦による海上自衛隊哨戒機に対するレーダー照射事件が背景にあることはいうまでもありません。

とりわけ、文在寅政権になってから韓国内の反日感情が高まっているかに見えるのは、ひとえに文在寅政権を支えている労働組合「全国民主労働組合総連盟(民労総)」の存在が根っこにあると考えてよいでしょう。文在寅政権は、この労働組合のご機嫌を取る形で反日感情を煽り、ポピュリズムに支えられていると言っても過言ではありません。

この文在寅政権が、昨年6月12日の米朝首脳会談を受けて北朝鮮との融和姿勢を際立たせており、在韓米軍撤退や南北統一といった観測が生まれ、それが「対馬海峡38度線論」という日本国内の危機感に繋がっているのです。これについては、「けしからん」と憤ることも、「たいしたことではないから冷静に対応すべきだ」と言うことも、口で言うのは難しいことではありません。しかし、現実の国際政治の舵取りを考える時、ことはそれほど単純ではないのです。

韓国との関係が悪化することは、韓国が米国と同盟関係にあること一つをとってみても、日本の安全に良い影響が出るとは考えられないからです。日本と韓国の関係が悪化すれば、韓国に対する米国の関与も消極的な方向に傾くでしょう。そこに隙間が生じるのは避けがたいことです。そして、日韓両国の関係悪化の間隙を縫って、北朝鮮、中国、ロシアなどが活動を活発化することは目に見えているのです。それが国際関係というものでもあります。

ここはひとつ、世界をリードする日本の立場を自覚して、次の点を同時に進めていくことが重要となるでしょう。徴用工問題と慰安婦問題については、政府間の合意に従って韓国政府が行動することを求め続け、同時に日本の正当性について国際的に発信し続けなければなりません。

レーダー照射事件については、開示可能なデータに基づき韓国側に謝罪と責任者の処罰を求め続け、これも同時に国際世論に日本の正当性を認めさせるだけの客観的な証拠を発信し続ける必要があります。

同時に、こうした問題が生起したからといって韓国国民の全てが反日感情で凝り固まっていると考えるような先入観を抱かず、韓国側の知日派、親日派を支え続け、増やしていくような発信を、韓国国内と国際世論に向けても続けなければなりません。

韓国国内に向けては、韓国の安全が日米安保体制によって支えられている現実について、米国から見た日本の戦略的重要性や朝鮮国連軍を支えている日本の存在を通して、伝え続ける必要があります。日本国内に向けては、日本が米国にとって必要不可欠な戦略的根拠地であり、仮に在韓米軍が撤退するような事態が生じても、周辺国が容易に手出しできない現実を示し、国民の動揺を避けなければなりません。

そして、日米同盟を前提としながらも、国境を接する韓国、北朝鮮、中国、ロシアに対する備えを、優先順位を正しく設定して整備していくのです。これを同時進行させることができるのは、安定政権を維持している安倍政権をおいて他にないと言ってよいでしょう。これから3年足らずの間に、安倍政権が上記の取り組みを実現することができるかどうか。そこで日本の未来の明暗が分かれてくると考えるべきなのです。

韓国の反日姿勢や「対馬海峡38度線論」でいたずらに激高し、短絡的な世論を煽ることは、安倍政権の足を引っ張る「贔屓の引き倒し」につながりかねず、日本の国益を損ねる可能性があることを忘れてはなりません。先に挙げた取り組みは、どれが先ということはありません。同時に、しかも着実に進めることが日本の平和と安全、そして繁栄にとって重要なのです。(小川和久)

image by:meunierd, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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