しかし、これは一方的にクリエイターに問題があるわけではない。広告制作を依頼する、クライアントサイドに問題があることも多々ある。広告制作、キャンペーン開発などの、マーケティングコミュニケーションに関しては、クライアントサイドからクリエイターサイドに、明確な戦略の説明をしないと、開発サイドもブレてしまう。
製品の特徴は何で、ターゲットは誰で、キャンペーンの到達目標はこれだ、という重要な指標を、クリエイティブブリーフという書式にまとめていた。これは、新製品のあるべき姿を、クリエイターと共有し、共通理解を持つことを目的とする。それを元に製作に入ってもらうことが、「売れる」CM、キャンペーン開発には重要だ。
購買に至るまでの顧客心理のフレームワークで有名な、AIDMAの最初のAは、Attention。注目、という意味なのだが、注目させる、目立たせる、という企業視点に加えて、伝える、という顧客視点で考えるべきだ。なぜなら、顧客は、知らないものは買わないからだ。
かっこいいCMを作ることは悪いことではない。しかし、自社製品の状況において、取るべき戦略がある。
全国的に、知名度がこれから、というハズキルーペは、知名度を上げること、さらに、話題性を作るシンプルでストレートなCMが必要だ、と松村会長は考えたのであろう。その点をクライアントサイドから、会長直々にブリーフするという点が、このヒットCMにつながったのであろう。