集合住宅にはさまざまなタイプの方が住まわれていて、中にはコミュニティの行事に出ず孤立している人もいます。「そのような住人にどう接するべきなのか」という質問を受けたというマンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の中で、他人との付き合いが苦手な人がコミュニティと繋がることのできる方法を紹介しています。
人付き合いが苦手な人のつながり方
こんにちは!廣田信子です。
先日、マンションの防災とコミュニティに関する取材が入りました。いきなり、コミュニティ行事にも出てこない孤立している高齢者をどうすればいいのか…と。
コミュニティ行事に参加しない人=孤立した人それをなくすにはどうすればいいか…、という画一的な話が繰り返されますが、人には性格や事情があって、賑やかな場に出ていったり自分のことを話すのは苦手…という人がいても当り前、そこから出発しないと…という話をしました。
でも、そういう方が、孤独を感じていない訳ではないのです。彼らは、自分から周りに助けを求めることができません。だから不安もあるのです。と同時に、人との付き合いが苦手な故に、自分が周りに何か貢献をしたという経験もないことが多いのです。だから、もし、誰かと少しでもつながりたいと思ったら、何か、誰かの役に立つことを自分からやってみることだ…、そう教えてくれた人がいました。そして、ある事例を話してくれました。
ずっと独身の高齢男性Aさんは、事情があって、身内との関わりが薄く、友人もいません。会社を定年退職した後、毎日が孤独でした。かといって、趣味の会や賑やかなところに出ていくことも積極的に人と話をするのも苦手です。自分が生きている意味がつかめないときに、このままではいけない、自分にできることを何かやってみようと、思い立ちました。
人と話しをするのが苦手で、特に趣味も特技もない自分にもできることとして、毎朝、ご近所を回って、道路や公園、川辺のゴミを拾うことを始めました。誰が褒めてくれる訳でもないけど、きれいになった道路や川辺を見て、自分が何かの役に立っている実感があって、以前のようなむなしさは消えて行きました。
そして、そういう姿は、必ず誰かが見ているものなんですね。そのうち、朝散歩をしている方から、「いつもご苦労様です」と声をかけられるようになり、お天気の話など、簡単な会話を交わすように。さらに、あるとき、同じ年代の男性から、自分もいっしょにゴミ拾いに参加してもいいですか?と声をかけられ、いっしょにゴミ拾いをするようになりました。地域を分担して、最後に合流して、缶コーヒーを飲みながら、少し話をするようになりました。
そのうち、私も参加したいという人が現れて、今では、4人のグループになっています。毎日、4人でゴミ拾いをしているので、その地域はピカピカ、そんなに拾うゴミもないので(ゴミがないところには、ゴミが捨てにくいので、捨てる人も減るのです)、そのうち、散歩が主になりましたが、散歩しながら少しづつ自分の話もするようになり、あまり、お互いの事情に踏み込まないけれど、今日の無事を確認し合う「仲間」ができました。
仲間をつくりたいと思って始めたゴミ拾いではありませんが、それを黙々と行っているAさんの姿に共感し、自然にできた仲間なので、そんなに饒舌に話をする必要も無く、人付き合いが得意じゃないAさんにとっても、負担がないつながりができたのです。
コミュニティ行事に参加して積極的に人と付き合うのは苦手だけど、どこかで不安や孤独を感じている人は、自分にとって負担にならない形での周りへの貢献をやってみることです。その行動が、同じような感性の人を引きつけ自分にとって居心地がいい仲間ができます。自分から積極的に会合に参加したり、がんばって話しかけたり、名刺を配ったり、ということが苦手でもいいのです。
私もそういうことが実は得意な方じゃないので、自分にとって一番負担にならない形で、少しは誰かの役に立てることをしたいと思って、このブログやメルマガを書いている気がします。改めて、今の自分の周りを見回すとおかげさまで、それぞれ個性がありながら、気持ちよくいい距離感で付き合える仲間に恵まれていて、ありがたいな…と思います。
自分が、ストレスなく見返りを求めないできることを小さなことでもいいので行動してみることで、その行為の持つ波動に合った人が自然に引き寄せられるというのは、本当だな…と思います。
行事に出てこないで周りとの付き合いがなく孤立している高齢者をどうしたらいいかという最初の問いに対しては、コミュニティ行事のような人付き合いが得意な人が中心の世界に、人付き合いが苦手で、自分の世界に踏み込まれたくないと思っている人をいきなり引き込もうと持ってもうまくいくはずはありません。
でも、人付き合いが苦手な人にはそれなりの社会とのつながり方があるのです。それには、まず、自分から貢献できる行動をすることです。ぜひ、不安や孤独を感じている人がいたら、自分がストレスなく、自分だけで始められる何かを探してほしいな…と思います。
周囲に人にできることは、その人がそれに気づくきっかけができるような働きかけじゃないでしょうか。あまり負担なくできそうな簡単なことを、ぜひお願いしたいと頼んでみることが、そのきっかけになることもあります。それは、やさしいお節介だと思います。
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