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ファーウェイ問題より深刻。中国人「手取り年収3割減」の衝撃

アメリカ・ラスベガスで開催されていた世界最大の家電IT見本市「CES」。現地で取材したケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんによると、昨今の米中貿易摩擦の影響が、今回のCESにも色濃く表れていたとのこと。気になる「5G」の現状に関するレポートも併せて、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』にてその模様を紹介しています。

CES参加が危ぶまれたファーウェイは「通常営業」━━中国「可処分所得3割減」で、メーカーに大打撃か

今回のCESで話題となったのが中国メーカーの動向だ。

昨年後半に、ファーウェイの幹部が逮捕されるという事件があり、「中国メーカーはCESに出展するのか」が関係者の間で注目されていた。

会期初日、早速、ファーウェイブースを訪ねたところ、昨年となんら変わっていなかった。ブースにはMate 20 Proなどやパソコンなどの製品が並び、来場者で賑わっていた。幹部の逮捕報道など何処吹く風で、高い関心を集めていた。

ただし、昨年、アメリカ企業との取引停止の処分が下り、経営が危ぶまれるまで追い詰められたZTEに関しては出展が見送られてしまった

CESの来場者数に関しては、主催者の正式発表を待つ必要があるが、プレスデーで取材をしていたメディア関係者の体感では「中国メディアの記者が減ったような気がする」という声が相次いだ。今後、米中関係がさらに冷え込むと来年以降のCESは、来場者が減り、ホテルの宿泊費も値下げしていく可能性もありそうだ。

ただ、米中の経済摩擦がさらに悪化すれば、当然のことなら、電機メーカーにも悪影響を及ぼしかねない

チャイナリスクについて、ソニービデオ&サウンドプロダクツとソニービジュアルプロダクツの社長でもある高木一郎氏に尋ねたところ、「製造拠点を中国においているカテゴリもあり、今後の動向に注目している。リスクヘッジについても、通常、経営的に考えられる施策はすぐに打つ準備をしている。中国では現在、可処分所得(給与の手取り金額)が変化している。年初年末の株安が顕著で、3割も可処分所得が落ちている。幸いにもソニーは数量を売ることを前提にした商売をしていないので、数が売れなくても価格をキープしていくことはできる」という。

製造拠点を他の国に移管する可能性については「輸出して関税が倍になる、25%になる、というカテゴリについては考える必要はあるだろう」とした。

ここでの注目は「可処分所得が3割も落ちている」という点だ。高木氏は「数が売れなくても価格をキープできる」としているが、ソニーは、プレミアムな高価格帯の商品に絞り込むことで、復活を遂げた経緯がある。可処分所得が減ることで、プレミアムな価格帯にも影響が出そうな気がするのだが、果たして、どうなるだろうか。

中国市場での落ち込みに関しては、アップル・iPhoneも大打撃を受けていると聞く。2019年の中国市場はメーカーにとって試練の場となるかもしれない。

CESで話題に事欠かなかった「5G」。実は「期待はずれ」━━T-Mobileが600MHzで5Gエリア展開するのはアリなのか

今年のCES、目玉は「5G」だと思って、鼻息荒くラスベガス入りした。

しかし、結果は「期待はずれ」。ここまで何もないとは思わなかった。

実際のところ、会場内では「5G」を掲げるブースも多く、基調講演や記者会見などで5Gを取り上げるところも多かった。話題性という意味では、5Gが盛り上がっていたのだが、肝心の製品やサービス、ソリューションの具体的で目新しい展示が全くなかったのだ。

唯一、きちんと5Gに関する展示を行っていたのが、クアルコムだ。中国メーカーの5Gスマホのプロトタイプを並べ、しかも記者会見では「2019年に30機種以上の5Gスマホが登場する」と明言した。インテルやファーウェイも5Gチップセットを手がけているはずだが、いずれも製品に関する展示はなかった。

アメリカでは2019年前半にベライゾンAT&T5Gサービスを始める予定だが、両社ともCESで5G関連の目立った展示は行っておらず、まさに「期待はずれ」に終わってしまった感がある。

そんななか、T-Mobile USが5Gに関する興味深い展示をしていた。

彼らは、600MHz帯で5Gの電波を吹くというデモをアピール。ミリ波に比べ、一つの基地局で圧倒的に広いエリアをカバーできると訴求していたのだ。ほかにも、ミリ波では窓を閉めただけで電波が弱くなるとしており「家の中までカバーするなら600MHz帯だ」と言いたいようなのだ。

確かに28GHzなどでは、数百メートル程度しかカバーできず、スマホの前に人が立つだけで電波が入らないなど、どこまで実用的なのか、かなり微妙な感じがしている。その点においては600MHz帯で5Gが提供できれば、アメリカでも一気にエリアをカバーできることになる。

しかし、1つの基地局で、広大なエリアをカバーするとなると、当然、それぞれの端末のスピードは遅くなるし、遅延も発生することだろう。600MHzで、世間が期待する5Gのスペックを提供できるかはかなり怪しいはずだ。

ただ、この流れで行くと、T-Mobileは、他社に先駆けて「エリアの広い5G」をアピールしてくるのではないか。かつて、HSPA+にも関わらず「4G」を名乗り出し、アメリカでは各社が「なんちゃって4G」を訴求しはじめた状況がまたやってくるのではないか。

「5Gはピンポイントで使う」というのがキャリアのなんとなくの共通認識であったが、T-Mobileがこのような動きをしてきただけに、他のキャリアも「5Gをプラチナバンドでいち早く全国展開する」という流れに付き合わされることになるかもしれない。

image by: JHVEPhoto / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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