北方領土交渉は本当に絶望的なのか?ロシアの強硬姿勢にこそ希望

 

面積等分なら、歯舞、色丹はもとより、国後の全部と択捉の5分の1ほどが日本に戻ってきます。これは、2島か4島かの議論の果てに「ゼロ島」になってしまう危険性と比べて、夢のような話です。そんなこと、あるわけないじゃないか、というのが、大方の意見でしょう。私も、そのように思っていないわけではありません。

でも、ロシアの立場で考えると、北方領土問題の解決が遅れることは、日本国民のロシアに対する感情が悪化し、それはロシアを睨んだ日米安保体制の強化につながるという、最も望ましくない結果に結びつきかねません。

それが、2島であれ3島であれ日本に返還し、平和条約を締結することになれば、前にお話ししたドイツ最終規定条約に倣って、返還した島々に米軍の駐留することを避けることも現実味を帯びてきます。

これは、日本国民の反ロ感情と向き合い続け、ヨーロッパ諸国との二正面作戦を余儀なくされることに比べれば、ロシアにとって安上がりな安全保障の選択肢とも言えるのです。日本国民の反ロ感情が好転すれば、日本の経済支援による極東の発展も加速されるでしょう。

それが実現するかどうかのカギを握るのは、プーチン大統領を支えてきたロシア国民のナショナリズムです。多くのロシア国民が納得するためには、ぎりぎりまで最大限の強硬姿勢を示し続け、土壇場でプーチン大統領が「苦渋の決断」で「名を捨てて実を取った」と、ロシア国民の前で涙を流すくらいの演出が必要でしょう。

そう考えると、ここにきてのロシアの強硬姿勢と、交渉の進展に言及することを避けている河野外相の姿勢には、なにやらウラがありそうな気がしてなりません。(小川和久)

image by: Aksabir, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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