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【書評】日本人が殆ど知らない、早期がんは95%が治るという事実

国民の二人に一人が羅患すると言われているがん。もしもがんになったら……と考えるのは「悲観的」なことだと思われがちですが、今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介している書籍の中では、東大病院准教授の著者が「私はがんで死にたい」と語っています。一体なぜなのでしょうか。

偏屈BOOK案内:『がんの時代』中川恵一


がんの時代
中川恵一 著・海竜社

著者は東京大学医学部附属病院放射線科准教授、文部科学省「がん教育」の在り方に関する検討会委員。表紙は白地中央にタイトルを黒いゴシック大文字で置いた、デザイン以前のシロモノ。災害大国日本では、がんという病気も一種の天災と捉えている。運命のようにも思える。確率的な病気であるがんには、絶対がない。だが、がんは天災と違ってコントロールできる病気だという。

著者はまず、わたしはがんで死にたいと宣言する。心臓発作などで、ある日突然死ぬのはゴメンだ。やり残したこともあるし、燃やしたい資料もある。人生を締めくくる時間が欲しいのだという。がんは治らないとわかっても、数年の猶予がある。死の直前まで、痛みを緩和してつきあえば普通に生活できる病気である。がんになって、生きることの素晴らしさが分かったという人もいる。

心の準備をして迎える死となんの準備もしないで迎える死では大きな差がある。告知はがんと向き合い、戦うためのスタートラインだという。いや、戦って勝てる相手ではないとわたしは思ってきた。だから、がん検診に行ったことがない。がんになっても絶望はしない。程度の問題だが。痛みの緩和処置をしてもらい、あとは呑気に暮らしていけ(れば)ばいい、と思っていたのだが……。

現在、年間101万人が新たにがんと診断され、37万4,000人が死んでいる。日本のがん死亡数は戦前から一貫して増え続けている。欧米各国では年々減少している。先進国の中でがん死亡数が増えているのは日本くらいである。日本はがん対策、治療においては後進国なのだ。緩和治療においてはもっと遅れている。

日本はモルヒネの使用量が先進国で最低レベルである。日本のがん患者は先進国ではトップクラスの、世界平均以上の激しい痛みに耐えている。がんの痛みを取り除く基本は、モルヒネあるいは類似薬物を薬として飲むという単純なものだ。しかしこの方法(WHO式がん疼痛管理プログラム)を知らない医師も非常に多いようだ。無慈悲な医療者側には、患者の痛みに対する関心が乏しい。

日本人男性の発がん原因のトップは喫煙で約3割男女合わせた日本人全体の1位は感染症である。B型肝炎ワクチンとHPVワクチンは、多くの国で定期接種が勧められているが、日本では極めて消極的だ。学界が接種を推奨する一方で、国としては積極的に推奨を行わないという不可解・無責任な状況が続いている。

遺伝はがんの原因の5%に過ぎない。がんは宿命ではない。2/3は生活習慣で、早期発見のカギはがん検診である。生活習慣を整え、検診をきちんと受ければがん死のリスクは大きく減らせる。ほとんどのがんは、見つかってから時間が経つほど転移する割合が増える。早期発見のためには、検診を受けるしかない。

がんになったとしても、緩和ケアを受ければ最後まで自分らしく生きられる病気なのだという。適切な緩和ケアが前提だが、「がんは人生を仕上げ、愛する人たちとの時間を与えてくれる病気です」。あまり行きすぎた治療をしない限り、寝たきりにはならない。このへんは医者次第のような気がするが。

対談で現れた養老孟司さんは、いつのとおり「がん検診も人間ドックも受けないで起こってくる結果は、自分で背負うしかない。がんになったらなんて、そんなこと気にしてません。余計なお世話というかんじ」と言って笑う。がんは全体で65%が治る早期がんの場合が約95%。検診を受けよう。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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