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レーダー照射事件の教訓「フェアに振る舞うはず」と思い込まぬ事

泥沼化の様相を示している日韓関係ですが、火器管制レーダー照射事件については、韓国側がミスを認め早期決着を図ろうとしていると、以前の記事、『軍事アナリストが断言。レーダー照射事件は「韓国の全面降伏」』でも指摘していた軍事アナリストの小川和久さん。この事件については、阪神・淡路大震災でミスを認めなかった当時の自治省消防庁が、一転協力姿勢となった例を引き、政治レベルでの舵取りによって収めるべきだと、自身の主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、持論を展開しています。

日韓に共通する決着の構図

海上自衛隊のP-1哨戒機に対する韓国駆逐艦の火器管制レーダー照射事件で、防衛省は協議を打ち切ることにしました。

「防衛省は21日、韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題の『最終見解』を発表した。レーダー波の解析などで韓国側による照射は明らかと指摘。根拠となる音のデータも新たに公開した。韓国側が客観的な事実認定に応じないとして、日韓防衛当局間の協議打ち切りの方針を示した。

最終見解は、レーダー照射問題に関する韓国側の一方的な主張に対し、客観的事実を示して反論。韓国側に『改めて強く抗議』し、『再発防止を徹底することを強く求める』と記した」(1月22日付読売新聞)

最後に、「ただ、北朝鮮問題などがあることから、日韓、日米韓の防衛協力は続けていく考えも強調した」(22日付朝日新聞)とあるのは、米国の同盟国同士として協調しなければならない面があるからです。

しかし、表向きはともかく、韓国海軍の側は自分たちのミスを1月7日の段階で認め、事態の早期決着を図ろうとしてきたことは、1月10日号の編集後記で紹介したとおりです。あとは、政治レベルで両国関係が冷え込まないよう、うまく舵取りをするだけですが、同じような問題解決のパターンは韓国だけではなく、日本でもあることは認識しておくべきでしょう。

現場は自分たちのミスを糊塗しようとしてウソ八百を並べる。しかし、内部にはそれをよしとしない声があり、事実上、ミスを認める動きに出る。そして、上層部が軟着陸を図るという構図です。

私の経験で言えば、1995年の阪神・淡路大震災の時、空中消火をめぐって当時の自治省消防庁と対立したことがあります。多くの犠牲者が出た神戸市兵庫区、長田区の火災について、出動要請を求める陸上自衛隊に対して3日間にわたって回答せず、最後に「燃えてしまったから空中消火は必要ない」と回答した一件です。

この看過できない「未必の故意」とも言うべき不作為を指摘したところ、それこそマスコミを総動員して「市街地火災に対する空中消火は世界的にも前例がない」と、自分たちの不作為を正当化してきたのです。

しかし、心ある第一線の消防隊員や兵庫県上層部、米国ロサンゼルス市消防局の協力のもと、調査を進めていくほどに、自治省消防庁の主張は覆っていきました。そして翌年12月には、私が月刊『文藝春秋』に執筆しようとしていた記事に対しても非協力的だった自治省消防庁が、掌を返したように協力姿勢を示したのです。

これは、自治省消防庁のキャリア官僚の間で「小川さんの指摘に答えられないようでは、国民の負託に応えることはできない」という声が出て、トップダウンで協力姿勢に転じた結果です。その後、私は足かけ10年の期限いっぱい消防審議会の委員を務め、いまも専門委員として関わりを続けています。

韓国との一件でも、うまく政治的に着地できれば、安全保障面の関係を一定のレベルで維持することは可能でしょう。あらためて胸に刻むべき教訓。相手との文化の違いを前提に向き合い、同じようにフェアに振る舞うはずだと思い込まないこと、でしょうか。(小川和久)

image by: viper-zero / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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