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日本をより安全に。軍事アナリストが想像する米国との「合邦」案

隣国との緊張関係が続く防衛省の幹部から、「日本と米国が同じ国になればいい」というぼやきが出たと朝日新聞が伝えています。これに反応したのが、メルマガ『NEWSを疑え!』の著者で軍事アナリストの小川和久さん。30年ほど前の自身の「日本がアメリカの1つの州になったら」というアイデアを再考察し、経済面軍事面から周辺国が容易に手出しできない日本の価値を客観視しています。

米国の「日本州」が誕生したら

30年ほど前、私が言っていたことと同じことを考えている人がいるようです。

「韓国疲れだ。日本を米西海岸沖に移したい」防衛省幹部ぼやき

「海上自衛隊機へのレーダー照射問題などでの対立で、防衛省内で韓国に対する不満が高まっている。防衛省幹部は25日、『韓国疲れだ。嫌だと思ってもお隣さん。日本列島を(米西海岸の)カリフォルニア沖に移したい』とぼやき、『そうすれば北朝鮮ともさよならできる』と加えた。

この幹部はさらに『私は反対だが』と前置きしつつ、日本と米国が同じ国になればいいという考えにも言及。『(約3億2千万人の米国に対して日本の人口は)1億3千万人だから大統領選は我々が取る』『47都道府県を(別々の)州にすれば、日系人もいるからうまくいけば「日本党」で上院で多数派になる』などと想像を膨らませた。ただ、『でも、できないからしょうがない。(朝鮮半島と)好きでも嫌いでも、つき合っていくしかない』とも語った」(1月26日付朝日新聞)

この防衛省高官は、レーダー照射事件でこじれた韓国との付き合いに嫌気がさし、うんざりしているようです。まあ、それはそれ。お互いに引っ越しできない関係ですから、辛抱強く関係改善を図らなければなりませんが、30年前に私が口にしていたことを整理しておくと、次のようになります。

日本が米国と「合邦」すると、米国の人口3億2783万人に日本の1億2632万人を加えて4億5415万人。日本人だけで全米人口の約28%を占めることになります。

そうなると、うまく選挙戦を戦うことができれば、日本人が大統領になることも夢ではありません。米国側のナショナリズムの問題がありますから、そう簡単にはいかないでしょうが、政府高官をはじめ、政財界の枢要なポストへの日本人の進出は進むでしょう。

日本と合邦した「ニュー・アメリカ」は、GDP(国内総生産)でも米国19兆3600億ドルと日本の4兆8840億ドルをあわせると24兆2440億ドルとなり、EUの17兆3250億ドル、中国の11兆9400億ドル大きく引き離すことになります。

米国内における「日本州」のGDPは、これまでトップのカリフォルニア州の2兆4480億ドルの約2倍ですから、米国で第1位の経済力を誇ることになります。

軍事力については、自衛隊を米国の州兵(ナショナルガード)のような予備役的な位置づけにするのは現実的ではありません。特別な立法措置により、現在の防衛力を再構築して米軍全体における役割分担を、さらに明確にしていくことになるでしょう。世界第2位の対潜水艦戦(ASW)能力と世界3~4位の日本列島に対する防空能力に加え、重要な役割分担の分野を決めるのです。

このようになった日本州は、西恭之さん(静岡県立大学特任助教)が紹介してくれたトーマス・シェリング(ゲーム理論の泰斗でノーベル経済学賞)の言葉、「同盟の抑止力を高めるには、仮想敵国に対して、その同盟国がカリフォルニア州と同じ重要性をもっていると伝え続けること」を体現するものとして、カリフォルニア州以上の「米国の逆鱗」となるのは間違いありません。

中国もロシアも北朝鮮も、米国の逆鱗に触れるとは考えられませんから、日本州の安全は現在と比べても高まり、レーダー照射事件のような問題も米国との問題ということになると、韓国側から起こすことはなくなるでしょう。

もちろん、日本の歴史、伝統の問題がありますから、目下のところ、実現可能性はゼロなのでしょう。しかし、国際関係の激変や科学技術の発展によって、世界中で地域・国家の再編状況が生まれ、その中で「アメリカ合衆国日本州」の誕生もあり得ることとして、視野に入れておくことは、日本人が自国の価値を客観的に知るうえでも意味のないことではないと思います。

ついでながら、「合邦」については、友人の韓国の将軍から、なかば冗談だったと思いますが、「提案」されたことがあります。「小川ちゃん、韓国と日本が合邦すれば、北朝鮮なんて問題ないし、中国も手を出せないから、合邦しようよ」一連の韓国側の反日的な動きを見る限り、これは悪い冗談でしかないのですが、この頃は真顔で持ちかけられたのを懐かしく思い出しています。(小川和久)

image by: FreshStock, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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