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「お金さえ貰えればいいや」という社員をなくす米国式の教育法

人に誇れる仕事をしたいと思い入社したはずなのに、気がつけば「お金がもらえればいいや」となげやりに仕事をこなすようになってしまっている…。ご自身はもとより、周りにもそんな雰囲気を醸し出している人はいないでしょうか。今回の無料メルマガ『食品工場の工場長の仕事』では著者で食品安全のプロである河岸宏和さんが、「本来人間はいい仕事をしたいと思っている」とした上で、あるアメリカ映画を例に上げながら、仕事のモチベーションを保つために大切なことを記しています。

人間はいい仕事をしたい

あなたが会社に入社してきた時、工場に初めて出社してきた時を思い出して見てください。初めて出社してきたすべての方が、「いい物を造ろう」と思って出社してきたと思います。

時間が経って仕事に慣れてきてしまうと、「いい商品を造ろう」、「いい仕事をしよう」と言う考え方から、「お金がもらえればいいや」「時間を過ごせばいいや」「定時まで仕事をすればいいや」という考え方に変わって来てしまいます。

ここで一つアメリカの物語のお話をします。

バンド・オブ・ブラザース』というトム・ハンクスさんが監督の物語があります。DVDで発売されています。レンタルビデオ店に行くと必ずあります。このアメリカの物語は米国陸軍のパラシュート歩兵連隊の中のE中隊の兵士たちの足跡を、初陣のノルマンディー降下作戦に始まり、オランダ、ベルギー、そしてドイツへと追った物語です。第二次世界大戦において、彼らが参加した、Dデイ、マーケット・ガーデン、そしてバルジの各作戦は、いずれも決定的に重要、かつ劇的なものです。

E中隊は、パラシュート歩兵連隊の教育を受けるときから、他の中隊が休日を楽しんでいるときにも厳しい訓練を受け、常に最高の中隊になることを求められていました。最高の中隊を造るためには、指導者は常に教育、訓練を行っていました。いい仕事をするためには教育しかない事をこのドラマは教えてくれます。

教育で徹底的に大切なのは、服装と服装に準ずる装備の整備がもっとも重要であると、徹底的に教育している点が描かれています。第二次世界大戦の最中に、Dデイを迎えるために1年以上前から教育を徹底的に行っていたのです。「最後の一人まで、竹槍をもって戦う」と精神論で戦っていた国とは使命を全うするための考え方が異なっているのです。

『バンド・オブ・ブラザース』は、徹底的に教育する事と人をほめる事の大切さを教えてくれます。難しい事を成し遂げたときに、ほめる事、ほめる事は、皆の前で拍手をすることだけかもしれません。しかし、難しい戦いを成し遂げた時には勲章を与え必ず功績を褒め称えます。そして、教育材料として新しく入隊してくる人たちに勇気ある功績を伝えていくのです。軍隊での勲章は、報奨金を含んでいる場合が多いので家族に対しても非常に栄誉ある事になります。

自分の機械だと思わせる教育を行う

『バンド・オブ・ブラザース』の中で、戦いの最中に銃が作動せずに弾を撃つことが出来ない場面が出てきます。また、戦いの間には銃を分解して磨き混んでいる場面が多く出てきます。

私たちの生活を考えても、自分の車を運転しているときと、会社の車を運転しているとき、レンタカーを運転している時は、車に対する優しさがちがってくると思います。運転が終わって、車を洗うとき、整備する時の思いいれは運転をしているときよりももっと自分の車に対する想いが強いと思います。

工場で働く人たちが全て自分の工場と思って働けるように教育を行う事が大切です。私もハム工場に勤めていたときに、時間さえあれば、深絞り真空包装機を磨き混んでいました。特にフイルムを挟む爪の部分は、バネが折れやすかったので、折れているバネは交換を行って、包装作業中には、機械トラブルが起きないように自分でメンテナンスを行っていたのです。

ハムのスライサーも、作業が終わった時点で、砥石で刃を磨き込んでいたのです。24時間工場で一直、二直体制で設備を使う場合があると思います。各直で起きた設備上の問題点を記録して置く事で設備の状態を保つことが出来ると思います。

「褒め称えること」の重要性

いい仕事をしてほめられる事は非常にうれしいものです。子供のころは学校のテストでいい成績をとったり、運動会で活躍すると、仲間や親が褒めてくれました。

日本の社会では社会人になってしまうと、なかなか褒めてもらえないものです。社会人になって偉くなると、勲章がほしくなるのは、子供のころの花丸がほしいのと同じ感覚かもしれません。

私はアメリカの企業で仕事をしたことが有りますが、アメリカの企業は本当に人をほめる事を大切にします。売り上げなどが目標を達成したとき、いい仕事をしたときは、全員で拍手をして人を褒め称えます。いい仕事をしている方を見かけた時は、「ありがとうカード」を書いて掲示板に掲示します。毎月のベスト従業員を掲示板に写真入りで掲示して褒め称えます。

人間は働くときに、お金だけで働くのでは無いと思います。

「人間はいい仕事をしたい」
「世の中の役に立ちたい」
「人から褒められたい」

と思って仕事をしているはずです。クレームが発生したことで従業員、仲間を非難するのでは無く、いい仕事をしている人を褒め称えることがいい商品を造る事に繋がると私は思っています。工場で働く従業員の方がすべて自分の工場、自分の機械と思って働く事で、クレームの芽を摘むことが出来るとおもいませんか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 河岸宏和(食品安全教育研究所 代表) 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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