沖縄県民投票の選択肢「どちらでもない」に潜む、3つの落とし穴

 

民主主義を貶める官邸と自民党

直接民主主義の手段を活かして間接民主主義の弱点を補うというのは、成熟国では当たり前の常識に属するけれども、日本ではそうではない。

そもそもこの県民投票は、元シールズ琉球の元山仁士郎氏が中心となって「辺野古県民投票の会」を立ち上げて署名運動を始めたことに端を発する。署名はたちまち9万2,848も集まり、その請願を受けて県議会が県民投票のための条例を制定した。

これに対して異常とも言える敵意を露わにしたのが安倍官邸で、まず第1に、自民党を通じて宜野湾市をはじめとするいくつかの市の市長と市議会に対して、この県民投票に不参加を表明するよう裏工作を行った。その結果、5つの市で不参加方針が打ち出され、そのため全県民が直接投票で民意を表明するというその趣旨は著しく毀損されることになった。

しかしこれは安倍政権にとっては実はまずい話で、もし国会が発議して改憲の国民投票が行われるということになって、どこか地方の県や市町村が「こういう形の改憲発議には疑問があるのでウチは参加しません」と言い出した場合にそれを咎めることが出来なくなる。ところが安倍首相は、直接民主主義と間接民主主義の関係についての原理的考察とは無縁の脳的生活をしているので、たぶんそこまで思い及ばなかったのだろう。目先の沖縄での困難を打開するために強行突破方針を採ったのだと推測される。

この自民党攻撃に対して元山氏は、宜野湾市役所前でハンガー・ストライキを敢行する。1月15日からドクター・ストップがかかった19日まで、水だけしか飲まずに座り続けるというその決死的な行動に対して、市民の間では「若者が命懸けで訴えているのだから」という賛同が広がった。その賛同の中には、辺野古反対・玉城支持の創価学会の2~3割の勢力も含まれていたと言われている。そのため、自民党の第1堤防は決壊し、5市も県民投票に参加することになった。

そこで第2の防衛線が、既に触れたように「どちらでもないという目眩ましのような選択肢を付け加えることだった。

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