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日本はなぜ「極東」なのか?「スタンダード世界地図」のススメ

メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』の著者で、米国の邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんは、ニューヨークからの出張で日本に戻って来るたびに感じた違和感をメルマガで伝えてくれます。今回は、日本で目にした世界地図についてです。国際情勢や世界史などの理解のためにも、世界でスタンダードと言える、日本を最も東に位置づけた世界地図を利用したほうがいいと訴えています。

世界地図を見てみれば

日本出張のたび、あらゆる違和感を感じることは、ここメルマガでも過去色々書いてきました。で、前回、いちばん「あれ?」と妙な気持ち悪さを感じたことは、日本の「世界地図」を見たときでした。たまたま訪問した企業の待合室に飾ってあった「世界地図」。

もちろん初めて見たわけではありません。まず、学生時代の地理の教科書にも掲載されていました。渡米前には、それが当たり前の「世界地図」でした。で、待合室で待たされている間、ぼーっと何も考えずに眺めていると何かスッキリしない。あきらかに不自然な感じがする。

当たり前の話ですが、世界各国、国によって「世界地図」は違います。いや、違わない。違うのはそれぞれの国のポジションです。日本だと、当然、地図のど真ん中に日本が位置する世界地図です。それと同様、世界も、それぞれ自国が中心に位置する世界地図が、彼らにとって世界地図です。

渡米前の僕が見慣れている日本の世界地図は、日本が真ん中、向かって左(つまり西側)に中国ほか、アジア大陸。太平洋を挟んで向かって右(つまり東側)にアメリカ大陸があります。

イギリスだと、イギリスが中心で、アメリカはアメリカが中心です。オーストラリアに至っては、「下の方にうちの国があるより、上の方のがいい感じだろう」ってことで、上下ひっくり返した世界地図が主流だそうです。(もちろん南半球が地図上、上に来るのはあきらかに不自然なので、半分ジョーク的要素も含まれているみたいなのですが

当然、自国が真ん中に位置する世界地図が世界各国の常識であるならば、それでもいい。でもね。やっぱり日本が真ん中の世界地図って、あまりにも不自然なんです。なにが不自然かというと、世界史的にも、国際情勢的にも、世界地理的にも、色々とすべてがややこしくなる。

日本で暮らしていた時には、それが普通で気にもなりませんでした。北米で暮らしたあとは、日本の世界地図がどう見ても「いびつ」に感じてしまいます。各国によって世界地図の見た目が違っても、おそらく世界的にいちばんスタンダードな世界地図は、ロンドンかニューヨークが中心にある世界地図なはずです。

これだと日付変更線も含め、現在の国際情勢を俯瞰するにしても、かなりスッキリします。この地図だと、日本は、端っこです。向かっていちばん右。最東端。そう、東の端っこなんです。世界で日本は「極東」と言われています。「日の出ずる国」とも。

端っこが嫌だから、自国の世界地図くらい真ん中に持ってこよう、という気持ちはわかります。でも、世界では、世界の人間から見れば、日本のロケーションは端っこなんです。世界で最も刷られている「世界地図」がそうなっている。

端っこでいいじゃないか。あんな端っこのちっちゃい、ちっちゃい国が、世界的にも非常に重要な意味を持つ国でいる。80年代には「経済大国」となり、今現在でも世界最大のサブカルチャー大国として認識され、食に至っては、フランスを抑えて、世界ナンバーワンと思われている。

欧米諸国からは驚異だったと思います。何度も言うけど、端っこだもの。いちばん隅っこ。で、地図を見れば一目瞭然ですが、笑えるほどちっちゃい。そんな国が第2次世界大戦以前、清やロシアといった当時の大国に戦争で勝利し、戦後40年以上経ってからはロックフェラーセンターまで買っちゃった。わけわかんないと思います。世界の人は。この小国、どんだけすごいんだ、と思ったことでしょう。

その地図だと、日付変更線は当然のごとく、いちばん右。つまり、最も早く、太陽が昇るのは日本だということが、一目瞭然でわかります。日の出ずる国だからこそ、の神秘性すら、世界は感じてくれたのではないでしょうか。真っ先に太陽の恵みをもらえる国だからこそ、何か特別なエリアとして、特別なフォースを持ち、経済も文化も世界の中心に食い込んだ。(とか?これは、勝手な想像だけど)

あとは、世界は「西欧」「中東」「極東」と分かれるように、やっぱりスタンダードな世界地図の方が東西南北もスッキリ納得できるんです。日本が真ん中の地図だと、東側に「西欧」、西側に「極東」と、わけわかんなくなる。

例えば、世界の航空会社の国際便でいちばん、本数が多いのは、ロンドン─ニューヨーク間だそうです。これもスタンダード版だと、納得です。世界地理から見ると、実は、意外と、ロンドン─ニューヨークは近い。スタンダード版を見慣れている世界の人は、今の世界の(語弊はあるけど)主役の2都市の距離感を無意識に意識下に刷り込んでいるはずです。大西洋を挟んで、ヒョイっと行ける。経済上、金融上、貿易上、この2都市間は行き来が多いんだろうなぁくらいは地図を眺めるだけで想像がつく。

日本版世界地図に慣れている人に、いきなり「ニューヨーク─ロンドン間って、どれくらい離れてると思う?」と聞いても、すぐには答えられないかもしれません。日本版世界地図では2都市間は、平面上で見ると世界の端っこと端っこ。(ニューヨークとロンドンをそれぞれ端っこに置くのも、結構、ツラの皮厚いな、ニッポン!笑)

例えば、世界ではスパニッシュ(スペイン語)の存在感はえげつないほどです。かなりの国で話されている言語です。ひょっとすると、世界的に見ても、英語の次に多いのではないでしょうか。いや、中国とインドは国民の絶対数がハンパないから、勝てないか。そうだとしても英語、中国語、ヒンディー語に続いて、世界で「話されている言語」なはずです。そうスパニッシュは、本国スペインの為の言語ではなく、中南米の多くの国で公用語として使われています。

僕が知っているだけで、メキシコ、グアテマラ、コスタリカ、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ウルグアイ、コロンビアもそうじゃなかったっけ。そして、旅行で行ったキューバ、ドミニカもそうでした。プエルトリコの一部でも使われているはずです。で、僕が知らないだけで、もっとあるはずです。公用語かどうかは別として、中南米のすべての国で通じるはずだし、北米でも一部では通じます。

つまり、そう大国ではないスペイン本国のスペイン人よりも、スペイン語を話す世界人口の方が多い。ではなぜ、フランス語でも、ドイツ語でも、ハンガリー語でもなく、スペイン語なのか。それすら世界スタンダード版「世界地図」を眺めると答えは出てきます。前述のニューヨーク─ロンドン間同様、答えは地理的に「すぐそこ」だから。

アメリカ大陸を発見したのは、ご存知コロンブス。大航海時代において、最初にアメリカに到着したクリストファー・コロンブスはスペイン人です。(実はスペイン人ではなく、厳密にいうと諸説あるみたいですが、ジェノバ共和国で生まれたイタリア人というのが有力だそうです。最近ではスコットランド人説もあるみたいです。ただ、スペイン育ち説を便宜上取らせてください。)

スタンダード版世界地図だと、当時、世界の主役だったスペインが、大航海時代に、当然、たどり着くには、大西洋を挟んだ対岸、南北合わせたアメリカ大陸なはずです。スペインが、カリブ海諸島をはじめ、南北の大陸を領土支配したことは、何を今さら、歴史の教科書で習った常識じゃないかと言われそうですが、習ったのは、その一連の説明だけです。頭に絵的にシッカリ入ってこない。スタンダード版世界地図を見れば、大西洋を航海した船の乗組員たちの、まだ見ぬ新天地を求めた大冒険までも、無意識に想像できてしまいます(そうでもない?笑)

要は、歴史なんて、絶対に地理的な背景と同時に勉強しないと頭に入ってこないんだ!と僕は思っています。世界地図を片手にビジュアルと一緒に理解するべき。そう考えると、世界の歴史、地理的条件は、やっぱり日本版世界地図だとかなり不便です。日本版だと、当然、スペインとカリブ諸島はこれまた端と端。

今現在、スペイン語を公用語とする地域は、歴史的地理的条件によって、あそこまで拡大された。日本版地図だと、まったくピンとこない。真逆だからね。ブラジルはポルトガル語なのも、同じ理由です。スペインのライバル、ポルトガルが、ブラジルだけは領有した。くどいようですが、スタンダード版世界地図は、ブラジルの位置は、ポルトガルが統治しやすい、海を挟んだお隣の国。

ひょっとしたら、日本版世界地図に慣れてしまっている日本人の中には「ポルトガルって、ヨーロッパだよね? ブラジルって南米でしょ。なんか、すっげー離れてない?なのに、ブラジルの公用語はポルトガル語なの?」って人もいるかもしれない(さすがにいないか・笑)

とにかく、日本版世界地図は、地理の勉強にも、世界史の勉強にも不向きなんです。もちろん、前述したように、自国を世界のど真ん中に位置する地図があってもいい。その場合、日付変更線が邪魔なほどど真ん中に来ちゃうけど(笑)気持ちもわかります。でも、せめて、小中高校の教室では、世界スタンダード版世界地図を貼った方がいいんじゃないでしょうか。世界史の授業も、地理の授業も、絶対、その方が楽しめます。

僕の同級生の多くが、世界史、国際政治、世界地理の授業で途中脱落して行ったのは、日本版世界地図の不自然さ、いびつさ、わけわかんなさで、勉強が面白くなくなっていったんじゃないでしょうか。世界版世界地図を見せながらだと、面白く、世界史を、国際情勢を、地理を教えられる先生が出てきそうな気がするのです。で、自国が地図の端っこであることにも、もちろん言及してもらいたい。

「そう、世界はこんなに広い。で、日本はこぉーんな端っこで、こぉーんなにちっちゃいんだ。それが今では世界をリードする先進国の選ばれしG7のひとつにアジアでは唯一なってる。国土も地理も関係ない。この島国に暮らす日本人という人種がどれだけ優秀かを、この世界地図は物語ってるんだー」と。

image by: dikobraziy, shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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