本気とは思えぬ、日本経済新聞「米が民主主義の牙城」という皮肉

 

モンゴルの遊牧民世界では、王族や諸部族の長や長老・重臣が集まって大王(ハン)を選んだり、重大な決定を行う会議は「クリル・タイ」と呼ばれ、若き猛将テムジンにチンギス・ハンの称号を与えるかどうかのその大会合は昼間の議論と夜の祝宴が1週間も続いた。モンゴルの統治システムでは、ハンの1代の内に何度かしか開かれないクリル・タイ以外の1ランク下の会合をジェルゲと言い、現在のアフガニスタンの国会に当たるジェルガはその名残である。

あるいは、米国先住民の間でも同様で、星川淳は著書『魂の民主主義』で、イロコイ族の連邦憲章の民主制の思想が米国建国の憲法に影響を与え、ひいてはそれが日本の平和憲法にまで伝わっているという脈絡を明らかにした。

効率を重んじる近代社会ではそんな悠長なことはやっていられないので、多数決とか代議制とかが当たり前になってきたのだが、その近代民主主義の祖とされるルソーも、議会制民主主義の母国である英国について「投票で政治家を選ぶ仕組みは、選挙期間だけしか人を自由にしない。終わると奴隷にする」と言った(前出朝日)。奴隷たちは次の4年間に誰の奴隷になりたいかを選べるだけ──というのは余りにシニカルな代議制民主主義の定義である。

世界自由度ランキングで米国は52位

さて、米国に「フリーダム・ハウス」という老舗NPOがある。1941年に、ナチズムに立ち向かう世論を高めるために、一部政府出資も得て設立された調査機関で、個人の権利、選挙の方法、法の支配など独自に開発した25項目の指標で評価した、世界各国の「自由度」ランキングを毎年発表している。

Freedom House

その最新の2019年版は最近発表されたばかりだが、それによると米国は昨年と同じ86点で、同調査が始まって以来の最低レベルを低迷している。ちなみに、2009年には94点というそこそこの地位にあったので、この10年、とりわけトランプになってからの下落が大きいのだろう。

 

image by: Yuganov Konstantin, shutterstock.com

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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