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ZOZOから大手アパレルショップが撤退、その理由に隠された本質

大手アパレルブランド数社がZOZOTOWNから退店することが話題となっています。なぜそのような騒動が起きたのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、その問題の本質を考察するとともに、大手ECサイトと手を切り売上を立てる方法をレクチャーしています。

ネットショップの2つの問題

ZOZOタウンと出店社との間で、ちょっとしたアツレキが生じています。原因は、「ZOZOARIGATOという会員割引の価格戦略を打ち出したことです。この政策に反対の意を表明して、いくつかの大手アパレルブランドが退店することになりました。どうしてこんなことになったのでしょう。表向きは、「値引き販売によるブランドイメージが悪くなるから」ということです。しかし、本当の理由は別のところにあるような気がします。

2月25日付の中部経済新聞に、こんな記事がありました。

EC市場が拡大し、小売業者のインターネット通販への依存度が進んでいる。公正取引委員会が昨年実施した調査では、米アマゾン・コムなどを念頭に不満が生じても販売をやめられないと答えた小売業者が約7割に上った。

そうなんです。楽天、ヤフー、アマゾンといった大手ECモールに出店して売上を伸ばしてきたのはいいけれど販売をやめたいと思ってもやめられないということを言っています。

では、どうして販売をやめたいのでしょうか。そして、どうして販売がやめられないのでしょうか。

販売をやめたいのは、いくら売っても儲けが出ないからです。確かに、大手モールに出店してうまく販売すれば、売上は伸びます。ところが、出店手数料や販売手数料がばかになりません。そのうえ、モールが時々行う「セール」や「キャンペーン」に付き合うと販売価格を下げなければいけません。メールマガジンの発行も、もう無料では行ってはくれません。さらに言えば、ネットでは激しい価格競争が繰り広げられます。ぎりぎりの価格で勝負をしているお店も多いです。

こうしたことから、売っても売っても利益がとれなくなってしまうという状態に陥ります。ですから、もう出店をやめたいと思うお店が出てくるのは当たり前です。

問題の本質

ところが、こうしたネット販売に積極的なお店のネット売上は、もう何億円、何十億円という数字に達しています。今さらやめるわけにはいきません。やめれば、急激に売上が下がるからです。

しかし、大手ブランドが退店する問題の本質は、ここにあるのではありません。今起こっている問題の本質は、「価格決定権」にあるのです。

一見、ネットでの価格決定権はネットへの出店社の方にあるように思えます。しかし、モールでのセールは、出店社の意思ではありません。販売手数料も、モールの都合で上がっていきます。明らかに価格決定権はモール側にあるのです。

ですから、ZOZOタウンから退店する大手ブランドが出てくるのは当たり前です。退店を決めたブランドは、ZOZOに頼らなくてもネット販売を行う自信があります。自社に価格決定権がないことが許せないのです。

一方、モール頼りのブランドはどうでしょう。退店しても、それまでのような売上が確保できる自信はありません。価格決定権がモールにあっても、退店をするのがむつかしいのです。スポーツショップもこれと同じ状況に陥っているところがあるかもしれません。

さらに、モール頼みのネットショップにはもう1つの問題があります。それは、「顧客リストが入手できない、ということです。モールは、出店社に購入者のメールアドレスを知らせてくれません。顧客リストをお店が自由に使えない仕組みになっています。うまいこと考えましたね。

ネットの商売は、顧客リストこそ最大の財産です。その情報を渡してくれなければ、ネット販売をしている意味がありません。お客様との本当のつながりができにくくなります。本当に大きな問題です。

では、この2つの問題に対して、ネットショップはどのように対処したらいいのでしょう。

問題への対処法

もちろん、一刻も早くモール頼みの商売から抜け出すことです。モールではなく、自社サイトで販売することを考えなければいけません。そうすれば、価格決定権は取り戻せます。顧客リストも、自分で自由に使えます。不毛な価格競争からも抜け出せるでしょう。

とはいえ、自社サイトで販売を始めたとしても、すぐにモールと同じ売り上げが出来るわけではありません。それなりに時間がかかります。新たにお客様との関係性を作り出さなければ、商品を買ってはくれないでしょう。そのための時間が必要です。

そして、どんな方法でお客様との関係を作るかという、戦略も考えなくてはなりません。ネットのお客様ですから、まずはネットでの関係性を作るのが手早い方法です。

ツールとしては、ブログ、メールマガジン、ツイッターが良いでしょう。それらのメディアを通じてお客様と仲良くなれば、お店の宣伝もしてくれます。

ネットでのつながりだけでなく、リアルにお客様と出会う工夫も必要です。そのためにお金を掛ける必要はありません。お客様同志が交流できる、ちょっとしたコミュニティーを作ったり食事会を開くのも手です。

そして、ネットで売る商品は、自分のこだわりや思いがあるものを増やしていきます。品質の高いものやストーリーのある商品でお客様の心をつかむことです。ただし、いくらこだわりや思いがあったとしても、売れなくては意味がありません。お店独自のヒット商品が生めれば、最高です。それでモール頼みの商売から抜け出すことができます。

いかがでしょうか。価格決定権は相手に渡してはいけません。そして、顧客リストは宝です。2つの武器を手にして、うまく活用できれば、ネットショップには未来があります。

■今日のツボ■

image by: Sharaf Maksumov / Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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