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中国、八方塞がり。日本と同盟の米国がフィリピンも守ると明言

3月1日、米国の国務長官はフィリピン大統領との会談の後、「中国と比で領有権争い中の南シナ海で武力攻撃が起こった際、相互条約内で比を防衛する」と公式明言しました。これを受け無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、近年の米比関係を振り返り、現在の米が中国を名指で牽制する効果について、日中の領土問題争いに準えながら詳しく解説しています。

アメリカ、「フィリピンを中国から守る!」宣言

アメリカの対フィリピン政策が変わったようです。今回の話は、沖縄の皆さんにもぜひ知っていただきたい内容。

中国は、「南シナ海のほとんどすべては中国領」とする、いわゆる「九段線」を主張しています。それで、いろいろな国と領土問題になっている。フィリピンとももめているのです。

しかし、中国と比べるとフィリピンは小国。「力ではかなわない!」ということで2013年、フィリピンは、仲裁裁判所に訴えました結果はフィリピンの大勝利。CNN.co.jp2016年7月13日付から。

中国は、海南島の南方から東方にかけて、南シナ海の9割を囲い込む「九段線」という境界線を設定し、資源採掘や人工島造成を行う権利の根拠としている。仲裁裁はこの権利を認めない立場を示した。仲裁裁はまた、中国が人工島から200カイリまでを排他的経済水域(EEZ)としてきた主張に対し、人工島はEEZ設定の根拠にはならないと判断した。さらに、中国は人工島周辺で自然環境を破壊しているとの見方を示した。

ところが中国。「仲裁裁判所が間違っている!俺たちはこの判決には従わない!」と高らかに宣言しました。

仲裁判断、中国外交に大打撃習主席「一切受け入れない」

AFP=時事 2016年7月13日(水)10時7分配信

 

【AFP=時事】オランダ・ハーグ(Hague)にある常設仲裁裁判所(PCA)が南シナ海(South China Sea)をめぐる中国の主張には法的根拠がないとの判断を示したことについて、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は、一帯の島々は古来より中国の領土だとして、政府は今回の判断に基づくいかなる行動も受け入れないと述べた。国営の新華社(Xinhua)通信が伝えた。

哀れ。小国フィリピンの理は正しく、仲裁裁判所がそれを認めた。ところが中国は公然とこの判決を無視し、何も困ることがない。そして、ドゥテルテ大統領は2年前、「敗北宣言」をしていました。

南シナ海問題、「中国を止められない」ドゥテルテ比大統領

AFP=時事 2017年3/19(日)21:43配信

 

【AFP=時事】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は19日、中国はあまりに強大であり、フィリピンや中国が領有権を争う南シナ海(South China Sea)のスカボロー礁(Scarborough Shoal)で中国が進めている構造物建設を止めることはできないと述べた。

この発言、トランプさんが大統領になった直後」といえる時期です。その前、オバマさんとドゥテルテさんの関係はどうだったのでしょうか?リベラルなオバマさんは、「麻薬密売人抹殺するドゥテルテさんが大嫌いでした。それでも「戦略的」に考える人であれば、「嫌いだが仲良くしよう」と考え、そうしたことでしょう。しかし、オバマさんは、「嫌いだから嫌い」という態度をつづけ、アメリカフィリピン関係は悪いままでした。もちろん、ドゥテルテさんにも責任はあります。この方は、ずっとアメリカ批判をつづけていた。

ここに、日本、特に沖縄への大きな教訓があります。フィリピンとアメリカの関係が悪くなった。すると、即座に中国が侵略に動き始めた。フィリピンは、仲裁裁判所に訴え、主張を認められた。ところが、中国は、その判決を無視して侵略をつづけている。

これを沖縄にあてはめるとどうなるでしょうか?日本とアメリカの関係が悪くなれば、中国は、即座に尖閣を奪いに動くことでしょう。その次は沖縄です。なんといっても、中国は、「日本に沖縄の領有権はない!」と宣言しているのですから。完全証拠はこちら。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

アメリカ、「フィリピンを中国から守る!」宣言

しかし、2018年に米中覇権戦争がはじまった。それで、フィリピンに追い風」が吹いてきたようです。

南シナ海でフィリピンに攻撃あれば米が防衛、ポンペオ氏 中国けん制
3/1(金)18:07配信【AFP=時事】マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は1日、南シナ海(South China Sea)の大半の領有権を主張する中国を念頭に、同海域でフィリピンに対する武力攻撃が行われた場合には相互防衛条約に基づいて同国を防衛すると明言した。

アメリカとフィリピンは1951年「米比相互防衛条約」を締結しています。これがあるのに、「明言」する意味はなんでしょうか?日本の尖閣と同じですね。日米安保がある。しかし、アメリカの政府高官は時々、「尖閣は、日米安保の適用範囲」といいます。この一言で、中国は、「嗚呼、尖閣を侵略したらアメリカが出てくることを知り、「ほんじゃあ侵略はやめておこうか」となる。

ポンペオ氏はフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領との会談後、記者会見を行い、その中でフィリピンなどが領有権を主張する南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島、Spratly Islands)で中国が推し進めている人工島建設について、米比両国にとっての潜在的脅威だとの認識を示した。ポンペオ氏は「南シナ海における中国の人工島建設や軍事活動はフィリピンのみならず、米国の主権や安全保障、ひいては経済活動をも脅かしている」「南シナ海は太平洋の一部であり、フィリピン軍や航空機、公船に対する武力攻撃が行われた場合には米比相互防衛条約の第4条に基づき、相互防衛義務を発動する」と明言した。
(同上)

中国の行動がアメリカにとっても脅威だ」と認識しているのはありがたいことです。

米政府高官が南シナ海における同盟国防衛について公式に発言したのは今回が初めて。
(同上)

今回が初めて」だそうです。

「こんなことで、何か効果があるの?」と思うかもしれません。繰り返しになりますが、効果あります。尖閣中国漁船衝突事件が起こった2010年、尖閣が国有化された2012年いずれの場合も、中国は、尖閣侵攻の準備を進めていました。しかし、アメリカから「尖閣は日米安保の適用範囲と明言され引き下がったのです。

中国が、尖閣、沖縄を狙っているのは、事実です。そして、中国がなぜ動けないかというと米軍がいるから。このことは、アメリカが好きだろうが、嫌いだろうが、現実として認めるしかありません。

ポンペオさんの発言。フィリピンにとっては、まことに喜ばしいことといえるでしょう。

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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