落日のイギリス。EU離脱問題のデッドラインが迫る英国の右往左往

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2年間の猶予を取り付けたイギリスのEU離脱問題のデッドラインが、いよいよ3月29日に迫っています。未だ問題山積で選択肢のどれもが実現不可能とされる、まさに八方塞がりの現状を、様々なメディアで活躍中の嶌信彦さんが自身の無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』で詳しく解説しています。

イギリスのEU離脱に横たわる難題─3月29日がデッドライン─

3月29日にイギリスとヨーロッパは、どんな日を迎えるのだろうか。この日は、イギリスのEU離脱を決断すべき最終日だ。昨年暮、イギリスのメイ首相は欧州3都市をまわりEUからブレグジッド(イギリスのEU離脱)協提案の譲歩を求める旅に出かけた。しかし譲歩は得られず、EUの有力指導者との間で「離脱は協定に合意した上で行う」という約束を取り付けただけだった。しかし、合意約束も1月のイギリス下院の採決で反対432賛成202という大差で否決されてしまう。しかも各党とも離脱に向けた合意案をまとめられず、いまだに合意なき離脱に向けて議会は漂流したままなのだ。かつての大英帝国は、EUから見放され内にあってはバラバラの状態で、まさに立ち往生している状態といえる。

当初はイギリスもEUの一員だった

EUは、もともと第2次大戦後の欧州復興をはかるための欧州鉄鋼共同体から始まった。その後参加国が増え、欧州経済共同体となり、欧州経済の発展成長のために関税の撤廃や様々な規制を緩和していった。当初の加盟国はベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ──の6カ国。1973年に第一次拡大が行われデンマーク、アイルランド、イギリスが加わった。さらにクロアチアが入った第6次拡大(2013年)まであり、現加盟国は28カ国となっている。

EU成立時は欧州合衆国への理想も

28カ国の欧州共同体が成立した時、ヨーロッパは、いわば“ヨーロッパ合衆国”の様相を見せ、アメリカと対抗する大きな政治経済同盟のように見えたものだ。しかも経済規制もゆるやかになり、通貨もユーロで一本化する方向になれば、市場が大きくなり有利な場所に工場を建設できるなど、ヨーロッパの発展、成長、発言力に大きな期待を持たせたのである。

大英帝国の思い

ただかつての大英帝国・イギリスだけは、当初から釈然としない思いがあったようだ。それは欧州の主導権を巡る問題だった。EUの主導権は次第に大陸のフランスドイツに集約されていくようになったからだ。かつてサッチャー英元首相は、ドイツが中心となりフランスがその後押しする様をみて「フランスはいつからドイツの前で跳ね回り靴をなめるような態度に出るのか」と毒づいたこともあった。過去の大戦でドイツが欧州を蹂躙した過去があるだけにドイツ主導のヨーロッパ合衆国の存在はやはり認めがたかったのだろう。英国はユーロにも加盟しなかった。

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