交渉のプロが懸念。日朝会談が実現しても袋小路に入り込む理由

 

それはなぜか?一言で表すなら、今回の会談失敗を受けて、中国が北朝鮮を見放すことになるからです。その兆候は、いくつかの動きを見て予測できます。一つ目には、往復とも中国経由の鉄道の旅となった金正恩氏ですが、本来ならば北京の習近平氏に“成果”の報告をしに立ち寄ることになっていたのを、中国側からキャンセルを入れたことがあります。

米朝首脳会談の結果、何かしら成果があれば、それを対米交渉の材料にしようと計画していたようですが、会談が物別れに終わったことで、北朝鮮の後ろ盾として、米朝首脳会談の合意内容を北朝鮮に履行させるべく働く対価を、切り札として使えなくなりました。反対に、これ以上、北朝鮮への肩入れのイメージが付くと、アメリカからの攻撃がより厳しくなると踏んだようです。

実際に、北朝鮮と距離を置く戦略は功を奏し、米中首脳会談に向けての実務者協議はdeadlockを回避し、いくつかの進展を遂げているとの情報があります。

他には、実は今回の会談前に、金正恩氏が北京を訪問した際に、「経済制裁の撤廃を求めるために、中国にも協力してほしい」との要請をしたようですが、習近平国家主席からは一蹴され、「それよりもまず、非核化が先だ」とたしなめられたようです。

それにも関わらず、アメリカ側のポジションを読み違えたのか、28日の米朝首脳会談2日目に「制裁の全面解除」をトランプ大統領に要求してしまったことで、見事に墓穴を掘り、それが習近平国家主席からの信用やサポートも一気に失ったと思われます。

これで体制保障の後ろ盾を失い、実質的に頼れる(うまく使える)のは、韓国の文大統領のみという図式になりましたが、日米の支持を失い、中国やロシアからも相手にされなくなった韓国政府に北朝鮮を支える力はないと思われます。(実際に、各国からは文大統領は、周辺国に対し出来もしない約束をばらまき、北朝鮮の手下になり下がって、今や完全に信頼を失っているという批判を受けています。)

「合意なし」による日本への影響は?

今回の会談で合意がなかったことは、日本にはどのような影響があるでしょうか。

良い点から指摘しますと、メディアも報じているように、トランプ大統領が大幅な妥協に走り、日本が孤立するという状況は避けることができました。No deal is better than bad dealが、まだうまく機能し、日米の連携と信頼は高まったかもしれません。

しかし、良い点は、恐らくこれだけでしょう。実際には対北朝鮮の交渉ではより複雑な状況になりましたし、北朝鮮の核の脅威は少しも和らいでいません。実際に3月6日は東倉里のミサイル発射場は復旧工事が始まっていますし、今回、廃棄対象として北朝鮮から差し出された寧辺も、報告されていない近隣の施設とともに、稼働中です。

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