交渉のプロが懸念。日朝会談が実現しても袋小路に入り込む理由

 

そして、日本にとっては、ずっと前からテポドンやノドンという短中距離のミサイルの脅威は存在し、話題に上るICBMよりもはるかに技術的にも進んでいるため、つねに攻撃(もしかしたら核攻撃)の脅威にさらされ続けています。今回の首脳会談の失敗は、その脅威を取り除くことについても失敗と受け取るべきでしょう。

そして、私が懸念するのは、拉致被害者の問題を巡る日朝交渉についてです。会談後、安倍総理も含め、日本政府は、「会談中にトランプ大統領が2度にわたり拉致問題の解決について話した」ということに嬉々としていましたが、どの程度の話だったのか、その内容については確証がありません。

また、今回の会談決裂を受けて、北朝鮮が日本との直接交渉に傾くのではないかという淡い期待も表明されていますが、今、日朝首脳会談や協議を行うことは、非核化と制裁というマルチのゲームをよりややこしくする危険性があり、日本にとっては、アメリカとの微妙な外交的なバランスを悪化させかねないことになり得ます。

あくまでも日本の主目的は、拉致問題の解決だと思われますが、仮に何かしらの譲歩および情報が北朝鮮からもたらされたとしても、その対価として経済支援や日本も参加する国際的な対北朝鮮制裁を弱めるようなことを求められたら、交渉上、袋小路に陥ります。

韓国や中国は当てになりませんし、ロシアも当てにならない中、トランプ大統領は、拉致問題の解決に対してモラルサポートはしてくれるかもしれませんが、実質的な交渉の後押しにはなりません。もしかしたら、第2回米朝首脳会談前よりも、外交的には(交渉的には)難しさを極めている気がします。

あえてポジティブな材料を探すとすれば、今回の第2回米朝首脳会談が決裂したことで、完全にうろたえる韓国の文大統領が、3月1日の矛盾に満ちた演説で、日本への攻撃姿勢を弱めたことで、日韓の武力衝突はしばらく回避できそうな希望が出てきたことでしょうか。

全アジア、特に北東アジア地域を見た際、南シナ海における米中の軍事的な緊張は平行線を辿る中、極東アジア地域に広がるロシアの軍事的なプレゼンスの高まりが顕在化し、そしてそれに対抗する日米の連携がより密になる中、南北朝鮮、つまり朝鮮半島が、北東アジア地域における力の空白地帯として、大いに混乱材料となる(悲劇の根源となる)可能性がより高くなってきてしまいました。

第3回米朝首脳会談の見通しがしばらく立たない中、どのようにこの混乱のかじ取りをするのか。とても懸念すべき複雑な情勢になってきたと思われます。

image by: rob zs, shutterstock.com

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