日本企業のムダな「出張」が、この国の発展を大幅に遅らせている

 

二つ目は、配偶者の出張時には仮に配偶者が他社の社員であってもワークライフ上の配慮をするという制度をきめ細かく実施するということです。例えば、妻が2泊3日の中国出張だという場合には、夫は仮に妻とは別の会社であっても、その上司が子育てや介護などの状況により、妻の出張期間については「残業させない」とか「遠距離の日帰り出張をさせない」といった対応をするのです。勿論、頻繁になる場合はもっとキッチリした話し合いをすべきですが、臨時の問題であれば融通を効かせるようにすべきです。

昭和的な発想法からすれば「他の会社の出張のしわ寄せがどうしてウチに来るんだ」といった反発が来るかもしれませんが、とにかく「お互いさま」ということで対応はできないでしょうか。

三つ目は、とにかく出張は「事前にしっかり計画して命令」するということです。配偶者に対応させるとか、シッターを雇うとか、子育て世代の場合は、色々な準備が必要です。ですから、直前に言われても対応できないことも、事前に計画されていれば対応できるわけです。

例えば世界各国では、様々な国際会議や見本市が開催されています。特に変化の激しい、IT、自動車、フィンテックといった分野では、最先端を走ろうと思うのであればマネジメント予備軍も、エンジニアも、そして男も女も、既婚者も子育て世代も、介護中の人も、そうした最先端に触れることは必要です。いくら「ワークライフバランス」が大事といっても、そうした人々に最先端を学び人脈を作るチャンスから遠ざけてはいけないと思います。

勿論、製品が大きなトラブルを起こして、緊急で現場に飛ばなくてはならないといった突発的な事態も排除はできません。その場合は、会社としては割増の日当等で子育てや家事に関する突発ケアの費用を出すとか、何らかの配慮が必要でしょう。

いずれにしても、働き方改革の中で、とかく見落とされがちな「出張」について、より働きやすい制度を導入すれば、優秀な人材の確保には大きな効果があるのではないでしょうか?

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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