日本企業のムダな「出張」が、この国の発展を大幅に遅らせている

 

更に問題となるのが宿泊出張です。これは、家事との「両立しない具合」としては直行直帰どころではありません。まして、海外出張となれば中国や韓国はともかく、東南アジアや南アジア、中東、欧米の場合は数日では済まないわけです。

例えば能力があり、将来的には国際業務を担当させたいとか、管理職の有力候補だというような場合に、その人材が「出張させると家庭との両立が難しい」場合に、上司としては「将来のことを考えて出張で経験を積ませようとしているのに」などと、屈折した失望感」を顔に出してしまい、本人との関係もぎくしゃくするようなことも起きるかもしれません。

特にその人材が優秀であればあるほど、上司や周囲は「そんなに出張をイヤそうにするのはと不快感を持ったりすることもあるでしょう。問題は極めて複雑です。

アメリカの場合は、出張の有無は採用時の契約で明確になっていることが多く、OKという条件の場合はシッター代なども払えるような高報酬になっている場合があります。とにかく本人も、雇用する方も「全部が回るように」一応制度としてできている感じです。

ですが、日本の場合は良くも悪くも、正社員の場合は「優秀なら管理職候補に」という思いがあり、それが出張の可能不可能とコンフリクトを起こすと、本人も周囲もモヤモヤするということになります。「子育て期間中だから出張なしで」という条件や制度を設ける会社も多いですが、これを申請すると「出世コースから降りる」ことを意味するなどという意味不明の運用もあり、労使共に疲弊する感じがあります。

ではどうしたらいいのでしょうか?

三つ提言したいと思います。

一つは、とにかく出張を減らすことです。ビデオ会議などはインフラがものすごく簡単になってきた時代ですし、動画やビジュアルなどを併用することで、リモートのコミュニケーションも可能になってきています。そうした技術を駆使して、「対面しないでも実態が見抜けるとか一体感ができると言った業務ノウハウを確立することは可能な時代です。

また、多くの出張が「社外対応」ではなく「社内対応」だということもあります。新企画は事前に本社に出張して役員に根回しとか、ネガティブ情報は本社に足を運んでその場で叱責に甘んじないと首が危ないといった「江戸時代の参勤交代のようなカルチャー」は、コスト的にも働き方という意味でも壮大な無駄です。

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