傷病を抱える方に支給される公的年金である障害年金ですが、その制度についてどれくらいの人が正しく理解しているでしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、そんな障害年金について詳しく解説しています。
障害年金は原則として有期年金!障害年金停止までの流れとその後の対応
障害年金はいつまで貰えるか?という事について今日は話したいと思います。
障害年金は請求して一旦支給され始めると、基本的には有期年金です。中にはもうこれ以上治りようがないとお医者さんから判断されると、永久に支給される人もいます。例えば失明されたり、手や脚を切断されたら治らないですよね。まあ基本的には有期年金ではありますが、その傷病の状態が続く限りは支給され続けます。
ただし、1~5年間隔でその人の誕生月を境に日本年金機構から新たに診断書が郵送されて、お医者さんに今現在の傷病の状態を記載して、日本年金機構にまた診断書を提出してもらわないといけません(更新という)。再度また提出してもらった診断書を元に、その後の障害年金の等級を決めて支給続行かもしくは場合によっては支給停止という事になります。
初診日が厚生年金加入中にある人は障害厚生年金が1~3級まで存在し、初診日が国民年金加入中または20歳前にある人は障害基礎年金1級または2級のみとなります。もしこの等級より下回る場合は年金が停止となってしまいます。
更新する際は結果が出るまでは概ね3ヶ月はかかるので、その間は患者さんは非常に不安になる方は多いです。等級下がって年金停止しちゃったらその後の年金が0円になってしまうからですね^^;
大体、診断書出す時点でどのくらいの等級に該当するかどうかは作成された医師の診断書から概ね判断はできますが、これなら何級になるって安易に言っちゃってその等級にならなければ大きなクレームになりかねないからですね。等級が上がるならまだしも下がって、年金停止とかになっちゃったらね…。
とはいえ、障害年金は基本的には有期年金なので、傷病の状態が良くなっていけばいつかは年金停止という事になってきます。
ただ、年金が支給されなくなると、もう障害年金を貰う権利を失ったと思う人もいますがそうじゃない。ちょっとどういう事かという事を見ていきましょう。
1.昭和41年7月18日生まれの女性(今は52歳)
● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)
20歳になる昭和61年7月から昭和62年3月までの9ヶ月は国民年金未納。昭和62年4月から民間企業に勤め始め、平成13年9月までの174ヶ月は厚生年金に加入。この間の給与の平均(平均標準報酬月額)を32万円とします。
なお、様々な繁忙に追われる中で、幻聴や幻覚を訴えるようになった。誰かが自分の命を狙ってるとか監視されてるという強迫感を強く感じるようになり、精神的に安定しなくなってきた。
平成13年6月5日に会社仲間の勧めでA心療内科に通い、パニック障害と診断される。会社に行くのも困難になって、平成13年9月30日付で自己都合退職。その後両親と暮らしながら治療に専念となるが引きこもりがちとなる。
決して金銭的には余裕はなかったので、両親が何か社会保障はないかと探していた所に障害年金を知る。しかし、初診日(平成13年6月5日)から1年6ヶ月経ってる必要があった。1年6ヶ月は平成14年12月5日。この平成14年12月5日を障害認定日と呼び、この日以降から障害年金の請求が可能となる。
なお、A心療内科以降に何度か転院しており、平成14年12月5日時点では退職後に通い始めた4度目のD病院先だった。D病院では統合失調症という確定診断が下りていた。A心療内科ではパニック障害の誤診だったが、統合失調症と診断したD病院が初診日となるわけではなく、病気の相当因果関係のあったA心療内科が初診日となる。
例えば糖尿病だったら、その後悪化して糖尿病性網膜症で目の障害で障害年金請求する時も初診日は糖尿病の初診日を取る。相当因果関係があるから。
初診日の証明としてA心療内科で受診状況等証明書という初診日の証明書を書いてもらう必要がある(初診日からずっと同じ病院の人はこの初診日証明の書類は必要ない)。
ところで、障害年金請求の時は必ず初診日を確定させなければならない。
なぜかというと、初診日前の年金保険料納付状況を見たり(保険事故としての初診日までにあんまり未納にしてきたら年金出さないよって事)、初診日に加入していた年金制度により支給される年金が異なるという重大な日だから。
初診日の属する月の前々月(平成13年4月)までの年金に加入しなければならない月の3分の1を超える未納が無い事、または初診日の属する月の前々月までの直近1年間(平成12年5月から平成13年4月)に未納が無い事が保険料納付要件となる。
まあ、昭和61年7月から平成13年4月までの間に9ヶ月しか未納が無いから、未納期間は3分の1もないですよね。仮に未納が3分の1超えてても直近1年に未納が無いから納付条件はクリア。
初診日は厚生年金加入中だから支給されるのは障害厚生年金。国民年金加入中の傷病とか、20歳前からのまだ国民年金に加入してない時の傷病に対しては障害基礎年金のみ。
さて、障害認定日の平成14年12月5日を経過していたから、両親が諸々の書類を集め障害年金の請求に踏み切って平成15年6月中に障害厚生年金2級の支給決定通知書が来て、7月15日に障害認定月の平成14年12月の翌月分から遡って年金を支給する事になった。
- 障害厚生年金2級→32万円÷1,000×7.125×300ヶ月(厚生年金期間が174ヶ月しかないが300ヶ月最低保障)=684,000円
2級以上は国民年金から障害基礎年金も出る。
- 障害基礎年金2級→780,100円(平成31年度価額にしてます)
なお、65歳未満の配偶者や子は居ないものとします。よって、
- 障害厚生年金2級684,000円+障害基礎年金2級780,100円=1,464,100円(月額122,008円)
平成15年7月15日(初回振り込み時はこのように奇数月に年金振込となる事がある)に平成15年1月から5月までの5ヶ月分が遡って610,040円がまとめて支払われて以降は、偶数月に前2ヵ月分224,016円の支払いだった。
さて、3年ごとの診断書の提出が求められていた中で、平成27年の誕生月である7月に提出した更新の診断書の状態により2級から3級に下がる事になった。症状も落ち着きつつ、パートで働けるようになっていた。
数年ごとに定期的に提出してもらう診断書は誕生月に送られてきて、提出期限は誕生月末。障害等級が下がる場合は診断書提出月である誕生月の4ヶ月目(平成27年11月分の年金)から等級変更となる(上がる場合は誕生月の翌月分から改定)。
- 平成27年11月分から障害厚生年金3級→32万円÷1,000×7.125×300ヶ月=684,000円(月額57,000円)のみ
次回診断書の提出は平成30年7月だった。更に症状は安定していったので、平成30年7月に出した診断書の結果により平成30年11月から3級にすら該当しないという事になった。つまり平成30年11月分の年金から0円となる。ついに障害年金の支給は停止となったので、障害年金の権利はもうなくなったと思っていた。まあ停止にはなってますが、権利は消滅していない。
3級にすら該当しなくなって3年間(平成33年10月)まで、もしくは65歳までのどちらか遅いほうまでは権利は消滅しない。だから65歳までは一度発生した障害年金の権利は無くならないと思ってていい。
どういう事かというと、もし今後症状が悪化してしまった場合は、停止を解除してもらい(支給停止事由消滅届という専用書類がある)また診断書出して障害年金を支給してもらう事が可能。
例えば、平成39(新元号9)年3月に凄く症状が悪化したとしたら、悪化した事を理由に診断書と支給停止事由消滅届を出して、その翌月から年金の停止が解除となり年金の支給が再開される。最初の障害年金の請求時のようなまたいろいろ1から書類を集める必要は無い。
この時に2級の状態だったら、
- 障害厚生年金2級684,000円+障害基礎年金2級780,100円=1,464,100円(月額122,008円)
もし65歳未満の生計維持してる配偶者と18歳年度末未満の子が2人居たとしたら、それぞれの加給年金が付く。そうなると
- 障害年金総額は障害厚生年金2級684,000円+配偶者加給年金224,500円+障害基礎年金2級780,100円+子の加算金224,500円×2人=2,137,600円(月額178,133円)
となる。
※追記
障害年金を受給してる際の国民年金保険料は2級以上は法定免除(全額免除ですが将来の老齢基礎年金の2分の1の額には反映)になる。この女性は平成14年11月分の国民年金保険料から全額免除となっている(障害年金の受給権が平成14年12月に発生したのでその前月分から全額免除)。
なお、平成30年11月から3級にすら該当しなくなってるが、平成33年10月分の国民年金保険料までは法定免除が使える。法定免除になるが、もしその間に厚生年金や国民年金第3号被保険者になった場合は法定免除にはならない。
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