働き方改革を巡っては、有給休暇や時間外労働に関しての変更ばかりが大きく取り上げられていますが、実は今年の4月から変わるものは他にもあります。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』では、4月から変更になる「労働条件の通知方法」について解説しています。
労働条件通知書電子化
まもなく新年度、みなさんどこまで準備はできているかな…?
T社社長 「働き方改革では年次有給休暇や時間外労働についてが、大きく取り上げられてるけど、他に4月から変わるものはないかい?」
深田GL 「そうですねー。労働者を雇入れるときには、労働基準法の15条に基づき、労働条件を明示したものを作成しますよね」
T社社長 「労働条件通知書のことだね」
新米 「はい、その労働条件通知書の明示方法が、今までは『書面の交付』に限られていましたが、この4月からは、電子メール等を利用した電子的な交付も可能になったんです」
T社社長 「え?紙で渡さなくて良くなったということかい?」
新米 「そうなんです。これもこの春、施行される改正労働基準法施行規則に基づいてです」
T社社長 「具体的にはどういうことなんだい?」
深田GL 「書面以外で新たに認められる方法の例はファクシミリによる送信、電子メールなどによる送信です。この電子メール等には、SNSを利用したものも可能とされています」
T社社長 「SNS?」
新米 「LINEやfacebookのメッセージ機能などが想像されますね」
T社社長 「ほー、LINEやfacebookで送ることもOKなんだね」
深田GL 「はい。ただし、注意点があります。1つ目は、労働者本人が希望する場合に限ります。本人が希望しない場合は、従来通りに書面による交付が必要です」
T社社長 「会社が勝手に決めるわけにはいかないんだね。一斉メールができるなら、楽になると思ったんだけどなー」
新米 「スマホを持つ人が増え、労働者としても電子データで残る方が紛失の可能性も低い、何でもスマホで処理する人なら抵抗感も少ないと思います」
T社社長 「確かに、スマホと一日中一緒の人はその方が便利なんだろうねー」
深田GL 「そうでしょうね。しかし、その一方で、そのような環境がない人もいます。その場合は、従来通り書面による明示が必要です」
T社社長 「それは、そうなるだろうね。希望しない人にまでは無理だなぁ」
深田GL 「2点目は、電子メール等による送信においては、電子メール等の記録を出力することで書面が作成できるものに限られているということです」
T社社長 「考え方は、事業所ごとに置いてある、賃金台帳データと一緒ということだね。前に、本社以外での労働基準監督署の調査でデータでの備え付けでも良いが、すぐに印刷できるか?っていうことが条件だって是正勧告を受けたことがあるよ」
新米 「PDFファイルを添付する方法なら、そのまま印刷できますね。見やすくはないけれど、メール本文に労働条件を記載することでも問題ないと考えられます」
T社社長 「PDFファイルは便利ですね。メール本文でもいいなら、できなくはないか。でも、フォーマットをつくっておく方がいいかな」
新米 「ところが、SNSのメッセージ機能については懸念があります。LINEなどは、メッセージを画面に表示するものであり、印刷を想定しているものではありません。SNSを使う場合は、やはり添付ファイル併用になるでしょうね」
深田GL 「3点目は、受診者を特定して送信するということです。労働条件の通知なんですから、労働者個人あてに送信することは当然のことといえば当然ですね。」
新米 「個人のメールアドレスやファクシミリは問題ありません。しかし、グーグルの共有チャットや部門別の共有フォルダへの格納といった方法はNGということです」
T社社長 「そりゃそうだな、個人情報だもんな。会社としても他の人に見てもらっちゃぁ困るよ。たまに見せ合いっこして、文句を言ってくる人があるんだよ…」
深田GL 「電子化のメリットは、採用や契約更新時における事務の効率化です。事業所がたくさんあり、パートさんやアルバイトが多い会社では、効率化できるでしょう。また、現場の管理者では労働基準法への理解不足が懸念される場合は、リスクヘッジができますね」
新米 「PDF化など電子データにして管理した方が検索も楽だし、保管場所もとりません」
T社社長 「そうだね。でも、うちは、通知でなく、署名・押印をしてもらう雇用契約書と言う形にしているんだ。この場合は、どうしたらいいかなぁ」
深田GL 「労働基準法では、通知の義務があるだけですが、労使間トラブルを防ぐためには、契約書の形式の方がより良いですね。その場合は、両者の合意を電子的に記録する『電子署名』や『認定スタンプ』といったものを利用することも可能ですよ」
T社社長 「『電子署名』?『認定スタンプ』?」
深田GL 「うちもまだ導入はしていませんが、『HRテック(ヒューマン・リソース・テクノロジー)』という人事や人事関連の業務を遂行する技術を取り入れる会社も増えてきていますね」
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