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現役アナウンサーがコッソリ伝授。職場で使える自己紹介の方程式

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、現役アナウンサーの熊谷章洋さん。前回の記事「話を3分間でスッキリ話すためのコツ」の最後で課題としていた、「自己紹介の際、話す項目とかける時間は?」について、聞き手が興味を持ってくれる話題の作り方と、さりげなく自己アピールをする方法を教えてくれました。

人前で話すとき一番最初に決めるべきこと

前回は記事の終わりで、シリーズで解説している「横着ファイリング話法」で、自己紹介してみる、という課題を差し上げました。

その自己紹介が求められている状況は、

Q、あなたは、社内の人事異動で、これまでほとんど接点がなかった部署に配属され、朝礼の場で、自己紹介を求められました。あなたは、入社3年目で、社内ではまだ有名人というわけではありません。さて、あなたなら、どんな自己紹介をしますか?自己紹介で話す内容を、項目で箇条書きにして、それぞれの話にかける時間をお考え下さい。

という設定だったのですが、実はこの設問には、ちょっとしたひっかけといいましょうか、気づきの種が仕込んでありました。

設問の文言には、自己紹介で話す内容を、項目で箇条書きにして、それぞれの話にかける時間をお考え下さい。とありますが、その前に決めるべきことが書いてありませんよね。

一番最初にやるべきこと、それは、この自己紹介自体の大枠の時間を自分で決めることです。全体で何分の枠であるか、自分にはどの程度の枠が与えられているか、まず最初に認識すること。

それをしないまま、言いたいことの項目挙げを始めてしまった方は、 もしかしたら、頭の中の膨大な情報の中に、まず手を突っ込んでしまいがちなタイプかも?

自己紹介程度の分量の話ですから、全体の枠決めと同時に、ネタ挙げができないこともありませんが、ひとつ確実に言えることは、どのぐらいの分量の話をするかで、話す内容が違うべきなんですよね。

例えば、どちらも捨てがたい話のアイデアがふたつあるとして、両立ができないものだとします。もったいないからと両方話してしまったり、あるいは一方の話の中に、もう一方の話の要素をちょろっと含ませたり。あるいは、その時間枠の中に納まらない規模の話に手を付けてしまったりすると、結局何が言いたかったのかわからない、散漫な、素材がいいのにつまらない、どちらも企画倒れ共倒れの話になってしまいがちです。

また、話が長くなり始めると、聞き手の反応が気になって、話す自分自身に焦りが生じ、話す内容に集中できず、話のクオリティーが下がる、という悪循環に。

その点、話の大枠が固まっていれば、まずどちらかを選択することから始めるでしょうから、当然、話の内容から違ってくるはずですよね。どんなにいいネタを持っていても、いまこの場所での話において、枠に収まらないと思ったら、きっぱりと、それを話すことは断念する。

大枠を決めるかどうかで、内容が変わってくるというのは、例えばそういうことです。そういうことを、話を考える初期の段階でするわけですね。もちろん、自分に与えられた時間枠の存在に気が付かず、無神経に長々と話してしまうなどは、論外です。

ではその「話の大枠を時間で認識する」ところから始めてみましょう。自分がこの場でどの程度の話をしたらいいか考える、ということです。

それを決めるのは、外的環境を感じること以外に、材料がありません。例えば、職場の朝礼で、持ち回りで3分間スピーチをすることになっているとしたら、

もうすでに3分という枠は決まっていますから、きっと誰でも3分に収まる内容で話を考えるでしょうが、何か発表を、というぐらいにしか決まりごとがなかったら、その枠はどのように決めたらいいのでしょうか?

おそらく、これまでの経験から、ほかの人がだいたいこのぐらいの長さで話してきたきたから、それを踏襲することを考えるでしょうね。これが、話の枠から固める、ということです。

そんなの当たり前!!と思うかもしれませんが、枠を固めて、その枠の範囲をどんどん限定していけば、考えるべき話の内容なんて、ほんのごくわずか残るのみになるはずなのに、話の内容構成に、悩む人が多いのはどういうことでしょう?

ちなみに、私の公式サイトでアクセスが多い記事は、

なのですが、それぐらい、話す前にどういう流れを組むか知りたがっている人が多いということでしょう。その点でもっと楽になる方法が、これなんですよ。話す必要があることを、話の枠にしていくこと。

方程式の虫食い問題になるぐらいまでに、枠を作って固めてしまうことです。そうすれば、虫食い部分に、その都度「言葉を代入する」だけで、話が出来上がってしまうんです。

具体的にはどういうことなのか、上述の宿題で考えていきます。

まず、自己紹介せよ、という大枠が用意されています。これをできる限り、限定していきます。まずは時間という切り口で限定しますね。 条件は、

そういう立場で、自己紹介をすべき時間、話せる時間は、どのぐらいかと考えると、朝の忙しい時間の前、立っている人もいるでしょうし、若手という身分で、滔々と話ができる立場でもありません。ただし、名前と経歴を並べるだけの自己紹介は避けたいところですね。

アルバイトの現場のような、便宜的な顔合わせではなく、そのあとも相当期間、同僚となる人たちに対して、社会人としてすべき挨拶というレベルの話はしなくてはいけませんからね。

そう考えると、自分に与えられた枠は、長くても1分程度だろう、とまず時間を限定します。これが、外的環境を感じて、話の枠を時間という切り口で限定した、ということです。

次に、そのわずか1分の中にどういう要素を入れていけばいいか、話の大枠の中に入れるべき空フォルダーを考えてみましょう。

1、名前は必須ですよね。

名前の読み方がわかりにくかったり、特徴的だったりする場合は、その解説、何もない人は、どんなふうに呼ばれてきたか、呼んでほしいか、など。

名前は覚えてもらってナンボですから、ある程度はインパクトを残したい、そういう意図があるからこそ、必然的に、名前の解説やニックネームの話を加えるわけですね。

次に、2、話の中心に据える話題。これは後で解説します。そして、締めとして、3、自分のアピールポイント。たった1分ですから、要素となるべき項目はこのぐらいで充分でしょう。

コツとしては、話の中心に据える話題と、最後のアピールポイントを、絡めることです。自己紹介というと、ついつい自分のアピールを中心にしたくなりますが、聞く人にとっては、それはちょっと耳障りになります。ましてや、この設定では、あなたは入社3年目で無名な人ですからね。

中心になる話題があっての、締めにちょっとだけアピールポイント、という流れにすれば、アピールポイントを述べる前提ができていますから、多少の自己主張があっても耳障りになりにくいわけですね。

時間配分は、名前のパートで10秒、締めのアピールポイントで15秒、残る35秒で、中心の話題を話せばよいことになります。

さて、問題は、話の中心に据える話題です。誰しも、できればここで、聴衆の心を捉えたいと思いますよね。では、確実に聴衆の心を捉えられる話題とは、いったいどういう種類の話でしょうか?今日のニュースでしょうか?自分の面白い体験談でしょうか?ギャグや一発芸でしょうか?

相当面白ければ、それでもいいかもしれませんが、確実とは言い切れませんよね。それに、インパクトを狙った結果、以後、そういう人として認識され続けていいのか?という問題も残るでしょう。

そういった「奇をてらわず」もっと確実に、聞く人の耳をがっちりつかむ話し方があります。それは、「あなた(聞き手)に関係ある話」にすることです。

過去記事で何度か取り上げましたが、最近、このメルマガの読者さんも増えてきましたので、改めて説明しておきますね。

聞き手がより強いモチベーションで聞いてくれる話かどうかは、自分に関係があるかどうか、なんですよね。例えば自己紹介のこの場面。あなたが自分の経歴を語ったとして、前のめりで聞いてくれる人は何人いるでしょうか?

あなたが既に有名人だったり、よほど見た目がカッコいいか、奇抜な服装や髪形をしている人なら、その人格に興味を持たれるかもしれませんが、世の中の大抵の場合は、それほどでもないでしょう。

話し手の側も、聞き手の無関心に過敏になると、「どうせ私の話なんか、聞きたくないでしょう」と、投げやりになってしまう人もいると思います。

でもそれは、聞き手の人々にとって、関係がないから、関心がないんですよね。関係がない話は、聞いてくれなくて、当たり前。その段階では、あなた自身の容姿なども含めた資質の問題ではないんです。

話が長くなってきたので、ここで設問の答えだけは済ませておきますね。中心になる話題のテーマを、聞き手に関係がある話にすること。話の締めは、その話題を引き継いで、アピールすること、です。

この設問におけるあなたと聞き手の関係は、今までほとんど接点がなかった部署の人たちと、3年目の社員です。接点がなかったからといって、関係ある話が見つけられないわけではありませんよ。

例えば、この3年の間で、この部署についてこういうイメージを持っていた、こういう噂を耳にした、同じ現場で一緒だった時の経験、この人は知っていた、あるいは、今日この職場に来てみて、デスクの様子や、張り紙等の文言などでこう感じた…など、聞き手に関する情報を獲得しようとする気持ちさえあれば、いくらでも話は拾えるものなのですよね。

今回の例題では、いままでのイメージもなーんにも思い浮かばなかったとして、今、この現場で得た感想だけで、自己紹介を作ってみましょう。

例えば、話の枠組み=空フォルダは、

こんな感じとか?でしょうか。この枠に、言葉を流し込んでいくなら、自分はいままで3年間、どこどこの部署にいて、今日初めてこちらに足を踏み入れたんですが、いや、びっくりしましたよ。例えば張り紙の言葉が、実に豪快?といいましょうか…などなど。

こういう時に印象をほめ過ぎると、おべっかに聞こえてしまいますので、相手の短所とも長所ともなり得るポイントを上手に突くのも、初めて来る人の特権だと思います。

そして、アピールポイント。実は私は非常に几帳面な性格でありまして、例えば、〇〇しちゃうぐらいなんです!!今日こちらに初めて伺って、私が貢献できることは、かなりたくさんあるように感じました…とかね。

自分のアピールポイントを効果的に印象づけるには、「どのぐらい、そうなんだ」という具体例を付けると、手短に、聞き手を納得させることができます。

こうして、話の中心と締めのアピールを絡めることができましたね。よって、今回の設問の解答例としては、

こんな感じでいかがでしょう?

image by: Twinsterphoto, shutterstock.com

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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