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村人の名字が3つしかない村から学ぶ、若者が住みやすい街づくり

福島県に、村民の名字が「星」「平野」「橘」の3つしか存在せず、さらに「奇跡の村」と呼ばれる地域があるのをご存知でしょうか。なぜ「奇跡」という冠がつくのでしょうか。その秘密は村の歴史にあるようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、NHKの人気番組でも取り上げられた檜枝岐(ひのえまた)村を紹介しています。

名字が3つしかない村の秘密

こんにちは!廣田信子です。

先日、NHKの『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』という番組で「村人の名字がほぼ3つのいう福島県檜枝岐ひのえまた」が紹介されていました。村民のほとんどが、「」「平野」「のどれかの姓なのです。これには、深い歴史があります。

山々に囲まれた豪雪地帯の隠れ里に、人が住むようになったのは1,200年前。朝廷での権力争いに破れて都落ちしてきた藤原氏の縁者が、住みついたのです。郷里の「星の里」からとって「と名乗りました(現在、村民の4割が「星」姓です)。

次に、800年前には、平家の落人が、戦いに敗れ、この里に移り住んで「平野を名乗ります(現在、村民の3割が「平野」姓です)。先にこの地にいた「星」一族は、同じような境遇の「平野」一族を迎え入れ、川を挟んだ両側に住居を構え共存していきます。

そして、400年前になると、戦国時代に、落人になった楠木正成の子孫が、この村にたどり着きます。そして、山側の一角に住みつき、「を名乗ります。「星」「平野」の一族は、やはり同じような境遇の一族を受け入れます

3度にわたって、落人が隠れ住むことになったのは、この村がいかに人が住むのに適さない土地であったかという現れでもあります。1年の半分は豪雪に覆われ、山影で夏でも日が当たらないため稲作もできません。そんな厳しい自然の中で、人目につかないようにしながら、何とか暮らしていたのです。人が住んでいる気配をできるだけ悟られないよう「鯉のぼりをあげない」「犬や鶏をかわない」という習慣があったといいます。

ある年、山側に居を構えた一族の居住地が雪崩によって全滅してしまいます。そこは、もともと雪崩の危険が高く人が住むの適さない土地だったのです。住む場所を失った「橘」一族を、「星」「平野」の一族は、自分たちの土地を分け与え受け入れたのです。「橘」一族は、その恩義にこたえるため、「星」「平野」両家の縁組みを取り持つなどして、村人が縁を大切に力を合わせて行けるようにと力を尽くしたのでした。

その人々の思いを今に伝える習慣が、檜枝岐神社に残っています。桧枝岐神社には、はさみをひもや針金でぐるぐる巻きにして使えなくしたものがたくさん供えられているのです。切れないはさみを供えることは、「縁結び祈願大切な縁が切れないようにという願いが込められているのです。

そういった歴史があって、今も、ここに暮らす人たちは、みんなとても仲がいいのです。村の人間同士の結婚も多く、高等学校がないため、中学を卒業すると一旦村を出る子供たちが、また、この村に戻ってくる確率が高いのです。戻ってくる理由は、この村が好きだから

こんな豪雪地帯の村なのに、若い人がけっこういて、子どもたちの数も多いので、高齢化が極限まで進んだ過疎の村のイメージとは違い活気があります。これは、山奥の村としてはとても珍しい現象で、奇跡の村と呼ばれていると紹介されていました。

今、この村は、尾瀬の入口の村として、重要な位置にあり、観光のため、土地を売ってほしいという外部の働き掛けもあったようですが、この村には、村民以外には土地を売らないという、暗黙の了解があると言います。村人のきずなを大切にしたいという思いからだと思います。

厳しい環境の中でも、後から来た人たちを受け入れ、分け与え、縁をつないで、力を合わせて生きてきた…その思いが今の人々の心の中にも引き継がれている…ということに感動しました。

若者がここに残ろうと思うのは、違うものを排除しないで受け入れ同化して共に生きようというマインドが若い人たちにとっても安心で済み心地がいいからなんだと思います。排他的で、ひとつの価値観に縛ろうとすると、若者は寄りつかなくなります。

マンションを100年持たせようという時代です。次世代の若者が住み心地がいいと感じるのはどんな文化があるコミュニティなのかを考えるのにとても参考になりました。争わないで、縁をつないで、力を合わせて生きる…学ばせてもらいました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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