日本の天皇制は世界最長で、一昔前はそれを批難する言論は許されませんでしたが、現代は生活多様化や情報網発達で週刊誌に天皇批判記事が掲載されるなどの変化があります。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、英国著名経済評論家の言葉をひきながら、日本の君主制の利点と欠点、そして令和の日本が新時代をどう進むべきかについて考察しています。
ピータータスカさんは新天皇をどう見る?
皆さん、ピーター・タスカさんをご存知でしょうか?タスカさんは1990年代、日経新聞「マーケット・アナリスト・ランキング」で5年連続1位になった方。1997年に「2020年の日本」を書いた『不機嫌な時代』は、大ベストセラーになりました。
そんなピーター・タスカさんは、間もなくはじまる「令和」時代、新天皇について、どう考えているのでしょうか?
皇太子徳仁を次の天皇として迎えることは、日本にとって幸運だ。明るい笑顔と、しなやかな強さを思わせる表情。そのオーラは、失われた数十年と3月11日の二重三重の大惨事から、日本が立ち上がる姿を象徴している。
(ニューズウィーク 4月11日)
戦争と占領の時代から時を置いて生まれた皇太子徳仁は、イギリスのオックスフォード大学で学んだ。より自信に満ちた前向きな日本を体現するのに理想的な人物だ。
(同上)
タスカさん、皇太子様を大絶賛。日本国民としてうれしいことです。
日本の皇室制度は、世界最長の君主制だ。ただし、天皇の役割が時代錯誤だという意味ではない。君主制が時代の変化に順応できる永続的な制度であることは、歴史が証明している。
(同上)
ここでは、日本の皇室だけでなく、世界の君主制が時代の変化に適応してきたことを話しています。ノルウェー、スウェーデン、ベルギー、デンマークなど、民主的で豊かな国にも君主制がある。
とはいえ、タスカさん、「問題もでてくるだろう」と予測します。
皇太子徳仁は天皇として、これまでと違う新しい問題に直面するだろう。日本の社会はかつてないほど多様化され、進化している。皇室に対するメディアの敬意は薄れている。皇室制度は国民から強く支持されているが、生前退位をめぐる騒動や女性天皇問題が示すように、その役割は流動的だ。
(同上)
メディアに関しては、私も感じていました。さすがに天皇陛下への批判は見かけませんが。週刊誌の見出しを眺めるだけでも、結構皇室批判があるので驚いています。以前はなかったと思います。
それでもタスカさん、ポジティブに記事を終わらせています。
一方で、皇室制度はこれからも時代に順応するだろう。目まぐるしく変わる世の中で、君主制はますます重要になる。その逆ではない。君主制は過去と未来をつなぎ、私たちがどういう国なのかを思い出させてくれる。
(同上)
まさしくその通りですね。日本はかつて、日清、日露、第1次大戦を勝ち抜き、「強さ」を誇りにしていました。しかし、その誇りは、第2次大戦で崩れ去りました。日本は戦後、「経済」を誇りにしていました。30年前は、「もうすぐアメリカを抜く」といわれていたのです。バブル崩壊で、その自信も失われました。しかし、日本には世界一古い皇室があります。私たちは、一人一人が選んだ仕事、与えられた役割をしっかり果たすことで、世界最古の皇室を守っていきましょう。