平成の世を「紛争の時代」にしたブッシュ父子という勘違い大統領

 

NATOの存続、拡大、域外化

ブッシュ父の誤ちの直接の結果がNATOの存続です。冷戦終結の宣言を受けて、ソ連のゴルバチョフは91年7月、潔くワルシャワ条約機構を解散しました。当然、これに対応してNATOを解消すべきだとする常識的な意見が独仏など西欧では広がったが、それに断固反対したのは米国と英国。理由は単純で、NATOの最高司令官は歴代米国人が、副司令官は英国人が占めてきて、そのアングロサクソンによる大陸欧州への関与のテコを失いたくなかったからです。

それにしても、東側からの脅威が消滅したのに、なぜ西側の軍事同盟は存続するのか。それに対する米国の苦し紛れの答えは「域外の脅威」でした。確かに欧州「域内」での戦争の危険は消滅したが、その東方の「域外」にはイスラムの脅威があり、それに対しては米欧が一致して立ち向かうべきである、と。

しかしこれが落とし穴で、このようにして味方の同盟を固めると、どうしても敵が必要になってそれを誇大に描き上げたくなり、それが度が過ぎるとだんだん戦争をせざるを得なくなってしまうという逆さまの論理が作動する。それで世界は戦争に満ち満ちて行ったのです。

もう1つ、致命的にまずかったのはNATOの「東方拡大」、すなわち旧東欧・旧ソ連邦の諸国に対する加盟の誘いかけです。それらの諸国がEUに入りたいと思うのはごく自然なことであるけれども、NATOという元は反ソ軍事同盟であったものに今さら加入することに意味はなく、単に西側から提供される資金援助に目が眩んだためだと言われた。ハンガリー、チェコ、ポーランド(以上99年まで)、エストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア(以上04年まで)、アルバニア、クロアチア(以上09年まで)が相次いで加盟し、それがウクライナに及ぼうとした時にロシアはついに我慢しきれずに反撃に出たのでした。

最近のNATOがロシアが主敵だという認識を公然と口にしていることはご承知の通りです。

print
いま読まれてます

  • 平成の世を「紛争の時代」にしたブッシュ父子という勘違い大統領
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け