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なぜ「無印良品」は銀座に出店したのか?プロが語るNYとの共通点

メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、話題の店舗を実地で調査し学ぶべき点をレクチャーしてくれるシリーズ、今回は、4月4日に銀座にオープンした良品計画の世界的旗艦店「無印良品 銀座」を訪ね、その巧みなブランド戦略を伝えてくれます。

「無印良品 銀座」から集客と売上増を学ぶ

今号のテーマは「集客と売上増」です。小売店やホテルであれば、自店舗に集客、ECであれば、サイトに誘客、BとBの企業であれば、自社サイトの問い合わせへ、というように「集客」は売上を作る第1歩です。

今号では、

という順序で「集客と売上増」について考えていきます。

銀座の無印良品の工夫

4月の頭にできた、銀座の無印良品に行ってみました。場所は地下鉄銀座駅から数寄屋橋交差点あたりで出て、3分ほど。便利な場所にあります。

私が行った時には、オープンから1週間近く経っていたこともあり、店の前には、さすがに行列にはなっていませんでした。大きな店構えで、地下1階から5階までが店舗で、各フロアでは商品を販売しているとのこと。

地下1階はカフェになっていて、私が行った時には行列ができていました。6階から上はホテルになっているとのことです。

面白いのは、各階にテーマを設定している点。例えば地下のカフェは「生産者に想いを馳せて」ということ。

このような複合施設では、「文房具売り場」とか「食品売り場」という、物理的なカテゴリーごとの名称にすることが大半です。これは顧客価値でいうところの、「機能的価値」での分け方になります。

一方で、テーマをつける方は、「情緒的価値」に訴えることができます。訪問した人たちが自然と、そのフロアに行く理由ができます。よりワクワクする感じが出ますよね。

この日は平日の昼間2時ごろだったのですが、1階は結構混んでいて、まっすぐ歩けないほど。まさに、大入り満員といったところです。さっそく中に入ってみると、入り口から入ってすぐにベーカリーショップと食品売り場があります。

まず入って目に付くのが、生鮮の野菜売り場があることです。スーパーの野菜売り場などとは少し違うディスプレイです。トマトやきゅうりなど、産地と生産者の名前が、しっかりと書かれていたり、ライトの当て方もユニークだったりと、おしゃれな感じでした。

少し奥に入ったところにある、紅茶の売り場もなかなか面白く、自分で好きなブレンドの香りをかぎながら、オリジナルの紅茶を作ることもできます。カスタマイズできることは、今の消費傾向である、「パーソナライズ志向」にも対応しています。

ディスプレイも、壁面いっぱいを使ったりしてとても面白く、これは文具売り場やアパレルの売り場なども同じように、視覚に訴えかける斬新さを出しています。

なぜ、無印良品は銀座に店を出したのか?

ではなぜ、土地の高い銀座に無印良品は、このような大型店舗を構えたのでしょうか?銀座は一等地なので、集客力がある立地だと言えますが、このような大規模店舗を維持していくのは、容易ではないと思われます。

まずは話題性があるので、自社のブランド価値を高めることができます。ユニクロも銀座の一等地に店舗を出していますし、前号の特集でも書いたように、ナイキやユニクロはニューヨークの5番街に出しているのも、考え方は同じ。

ブランド確立の第一歩は、認知度を上げること。同時に「想起」すなわち、一番に思い出してもらえるようにすることが重要です。そこに、新しさを加えることで、ブランドイメージの一新になります。

もちろん売り上げもしっかりと上げなければなりません。そのための工夫が随所に見られました。これまでの店舗にあまり併設してこなかった、生鮮食品、カフェ、ホテルを、ここに構えています。

生鮮食品とカフェは、消費者の人たちが買いに来る回数が多い商材です。文具、雑貨とアパレルが中心の無印にとって、生鮮食品とカフェを入れることで、来店頻度をあげる狙いもあるのでしょう。

カテゴリーを追加するということは、頻度に加えて、滞在時間を増やすことにもつながります。Eコマースも同じですが、商店においては、店内での滞在時間が長いほど、売り上げ増につながります。

食品のカテゴリーでは、イートインができるカフェに加えて、前述のベーカリー、そして、日替わり弁当も販売しています。さらに、この日替わり弁当は、中央区、千代田区、港区の一部に、デリバリーもするとのこと。この3区はオフィスも多く、BtoCだけではなく、BtoBにも対応することで、売り上げを平準化できる工夫をしています。

また、ホテルは中国の深セン続いて、無印にとって2つ目のホテルとのことです。ホテルのコンセプトは「アンチゴージャス、アンチチープ」とのこと。このコンセプトは、まさに無印良品の全体のコンセプトと、マッチしています。

ブランド認知がしっかりとできたら、次は、イメージを固めることで、「選ばれるプロダクト」を目指します。いわゆる、差別化・独自化です。各種報道によると、泊まるというよりも、家に住んでいるような感覚で宿泊できるような、部屋になっているそうです。内装のいたるところに無印良品の商品も使われているようですので、この点も購買につながると思われます。

単に「店で何かを売る」というのではなく、楽しんでもらいながら、買ってもらう、泊まってもらう、食べてもらう、というこれからの商業施設の在り方だと感じます。

「無印良品 銀座」から何を学ぶか

私たち事業会社側は、無印良品の銀座店に何を学ぶべきでしょうか?

まず、「来店頻度」を高めること。来店頻度が低い商品ラインアップしか提供できていなければ、自社の商品ポートフォリオに、来店頻度が多いプロダクトを加えることが重要です。これは商品そのものでなくても、商品に関する有益な情報でも良いでしょう。

次に、自社のコンセプトが明確か、そして実践されているか、という点です。アマゾンの「世界最大の品揃え」、スターバックスの「第三の場所」など、コンセプトは、顧客が来店する理由になります。

まずは、自社コンセプトを感じられる店内になっているか、顧客が来店した時に、自社コンセプトが相手に伝わっているか、をチェックし、実践できているかを確認します。少なくとも、四半期に一度くらいは見直しをしたいところです。

無印良品のような大企業でも、常に自社ブランドに新しい風を吹き込んでいることも、大いに参考になる点です。

image by: まぐまぐ編集部

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