暖かくなって、もう驚異も去ったと思っていたインフルエンザB型に、再流行の兆しがあると各報道機関が伝えています。10連休の真っ只中で、休診の医療機関も多く、罹患が疑われる場合、どうしたらいいのでしょうか? メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生は、症状が特別ひどくなければ、自己診断で問題なく、外に出かけなければ良いだけとのこと。体調に問題ない人も、連休中人混みに出る際は、マスクや手洗いなどの自衛をお忘れなく。
新型インフルエンザ・パンデミック
世界保健機関は、人類に対する健康教育の1つに新型インフルエンザのパンデミックも挙げています。国内での感染症の大規模流行のことをエピデミックと呼びます。さらには地球全体に広がることをパンデミックと呼びます。日本では毎年冬にインフルエンザが流行しており、医療機関はエピデミックになんとか対応できています。 しかし、パンデミックを起こしたときの対応は全く別です。フリーアクセスを利点とする日本の医療システムですが、新型インフルエンザのパンデミックが起こったとき、大量の患者が押し寄せるであろう医療機関のレジリエンスが試されます。医療機関には定期的な訓練が必要です。 新型インフルエンザのパンデミックは将来必ず起こる、と予想されています。問題は、それがいつかわからないこと、そしてそれがどの程度重症のインフルエンザになるかわからないこと、の2つです。約100年前に流行したその当時の新型インフルエンザであったスペイン風邪で、世界中で何千万人もの人々が死亡しました。
インフルエンザ対策
インフルエンザについて世界保健機関では、診断、ワクチンによる予防、治療についてのアドバイスを行っております。また、世界150カ国以上のラボで継続的にウイルスのモニタリングをしています。新型インフルエンザが流行したときに迅速に対応することが出来るようにしているのです。
日本の医療機関でインフルエンザの診断検査としてよく用いられる鼻汁抗原検査は私はあまりおすすめしません。検査の感度が低く、偽陰性すなわち検査による見逃しが非常に多いからです。こんなに正確度が低い検査が日常の診療でこれほどよく用いられるていることが不思議でなりません。
通常の軽症インフルエンザは症状で自己診断してよいと考えます。待合室で長く待たされたり、受診料を払ったりなど、わざわざ医療機関を受診することによる過剰な負担は避けた方が良いでしょう。会社や学校は、医療機関で鼻汁検査を受けるように、と命じないようにしてほしいものです。風邪でもインフルエンザでも、職場や学校で他の人に移す可能性があるわけですから、仕事や学校は休めば良いのです。
予防接種は毎年ハロウィン前までに
インフルエンザに対しては治療薬が開発されていますが、普段健康な人が通常型のインフルエンザにかかったときには内服を勧めません。薬を飲んだとしても、治るまでの日が平均してほんの1日だけ短くなる程度の効果しか期待できないからです。ウィルスに対する薬も使えば使うほど耐性ウイルスの割合が増えていきます。新型のパンデミックに備えて、むしろ伝家の宝刀は抜かずに置いておくべきです。
インフルエンザ対策として、一般の人々にお勧めしたいのは毎年秋にインフルエンザの予防接種を受けることです。接種のタイミングとしては、ハロウィン前が良いですね。予防接種を毎年受けているとインフルエンザに対する免疫力が少しずつ蓄積していくからです。
考古学や人類学で有名なジャレド・ダイヤモンドによると、インフルエンザは進化学的にはもともと鳥の感染症でした。人類が畜産を始めて鶏を大量に保有することにより、鳥から人にインフルエンザが移ったと考えられています。新型インフルエンザも鳥インフルエンザから人に移ることで出てくるだろうと予想されています。不健康な食事の元となる家畜、温室効果ガスを排出する家畜、そしてインフルエンザをもたらす家畜、ここでも畜産の影響が現れているのです。
文献
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