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現役アナが解説。5G化で「見せながら話す」能力が必要になる理由

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、アナウンサー歴30年の熊谷章洋さん。これからの5G時代には、誰もがテレビの出演者のように、カメラの向こう側に話をするようになり、「見せながら話す」能力が求められると解説。そして、前回記事で宿題となっていた、社内向け新製品プレゼンで、聞き手の心を掴む話し方の方程式を教えてくれました。

これからの時代に必要になる話し方

自分が話し手として情報の発信者となる時、確実に、聞く人の耳をがっちりつかむ話し方として、「あなた(聞き手)に関係ある話」に変換する方法をお伝えしています。

一対一の会話では、相手の立場、状況を思いやりながら話すことは当然かもしれませんが、複数の人々に向かって話すときになると、話の中に、聞き手を意識した言葉を込めることができなくなる傾向にあります。

話す対象が複数になるため、聞き手の関心を考えにくくなることと、自分が考えたことを話そうとし過ぎてしまう、話し手の「発信者としての自意識」が原因だというお話をしました。

そして、自分の話すことを、「聞き手に関係がある切り口」に変換するには、聞き手の状態や気持ちに思いをはせる、話し手自身の想像力が必要で、その思考回路を習慣化するために、前回記事の最後に練習問題をご用意しました。

あなたは、ある会社の社員で、このたび、自社の新製品を、社内向けに発表する役に抜擢されました。比較的ざっくばらんに話せる環境だとして、その話の導入で「聞き手に関係がある話」を取り入れることにしました。その新製品の設定はご自由にどうぞ。さて、あなたは、どう話しますか?

という設問でしたね。この設問に取り組む前に、少しお話ししておきたいことがあります。それは、ちょっと唐突ですが、通信の5G化の問題です。

ご存知の通り、5G化は世界で実用化が進行しつつありますが、それに伴う通信の超高速化によって、私たちの暮らしに様々な影響が出るものと予想されています。

なかでも、大容量データを高速でやりとりすることができることで、変化していく可能性があることとして、私たちに身近なところでは、コンテンツの動画化は必然だろうと言われています。

動画を見るだけなら、現在でも頻繁に行われていることなのですが、あらゆる説明的コンテンツが、動画で再生されるような社会が実現していくものと考えられます。

そしてそれは、例えば、企業や行政から、消費者・市民へ、という上から下の方向だけでなく、あらゆる立場の人が動画で発信して、横の関係で情報を共有するような状態になっていく。

娯楽コンテンツとしての動画だけではなく、リモートワークの普及によって、仕事のあり方も、今よりももっと動画を利用したものになっていくでしょう。

会議やプレゼンなど、これまで現地のみでおこなっていたことを、動画で共有することによって、どこにいても仕事に参加でき、通勤、移動などによるタイムロスやエネルギーの消耗を少なくできる、効率的な働き方です。

そんな近い将来の社会で求められるのが、人間一人一人の発信力。特に「見せながら話す」能力が重要になってくるものと、私は考えています。

…とここまでお話しして、ピンと来られたでしょう。この設問は、その「見せながら話す」ケースを意識したものです。

もちろん、満場の観衆に向かって話す状態も考えられますが、カメラの向こうにいる同僚たちに向かって、説明が求められているシチュエーションを主に想定しました。

また、この5Gの話自体も、人間一人一人の発信力、「見せながら話す」能力の必要性を説くことであなたに関係ある話に少し寄せてみました。

気づきましたか?

前置きが長くなりました。では、設問に取り組んでみましょう。設定自由で、自社の新製品を、社内向けに発表する役。まずは、話す枠を時間で認識すべし、でしたね。

自分に与えられている時間枠を察知するとすれば、だいたい5分程度ですかね。この枠内で、かっちりした説明をあらかた済ませて、足らないところがあれば、後から質疑応答の時間などで補足していけばよいでしょう。

人が集中して話を聞ける時間は限られています。端的でありながら、過不足ない説明を目指すなら5分ぐらいだと思います。例えばそれは、YouTubeなどの動画を視聴していても、5分以上のものになると、倍速にしたりしませんか?一方的に見せるものなら、5分程度、それ以上長い話になる部分は、「聞き手も参加できる環境」での話し合いにしたほうがよいでしょうね。

次に、この5分という枠を、どういう構成に割り振るか。「横着ファイリング話法」でいう、空フォルダー作りですが、この手の発表には、お約束の型みたいなものがありますから、それを利用してしまいましょう。

それは、ポイントを3点にまとめる型です。導入の言葉で簡単に表すと、

という前振りをした後に、

  1. まずなんといっても最大の特徴は…(従来との違い)
  2. さらに…
  3. そして、とどめは…

というポイント3点を、お好みの順番で並べる説明です。

ひとことまとめの「〇〇」を先に振っておいて、後の3ポイント説明で、その「〇〇」の意味が分かってくる。ここには、「謎解き形式で、聞き手の関心を離さない技術」が含まれています。

3ポイントの説明を受けて初めて、なるほど~それで「〇〇」なんだ!と、前振りの意味を理解してもらえるわけですね。説明全体における主要部分ですから、このパート全体で3分ぐらいかけてもいいでしょう。

そして、

最後に、

で締めることにしましょう。

社会的意義というのは、この商品が世に出たときに、人々にどういう印象を与え、どう受け入れられ、どんな役に立てるか、です。

この商品をこれから製造販売していく私たちは、それぞれの立場でこの商品をどう認識していくか、そしてそれが結果的に、社会において、こういうポジションを獲得していくであろう、そういう、新製品発売時における理想のイメージを共有するためのパートになります。

最後に発表者自身の気持ちを入れるのは、改まった席では難しいかもしれませんが、もしある程度、自由な雰囲気があるのであれば、ぜひとも話に組み入れたい要素です。

こういう情感のこもった言葉が入ることで、その話が、他の誰でもない、その話し手だけができる唯一無二の話になり、人の心を動かすのですね。この最後のパートで、1分ぐらい必要でしょう。

残る1分を、オープニングで使うことにします。

オープニングは、あることが当たり前ですから、あえて最後まで放っておきました。

やるべきことと言えば、

になります。

後のパートで機能などの説明をしますから、発表の瞬間のこの場面では、見た目のデザインなどの解説を、実際によく見てもらいながら緻密にしておきたいところです。

実は事前の見た目の解説は、この後の機能の説明の「謎解き」になったりもします。デザインがそうなっている理由は、機能がこうだから、ということがありますよね。

見た目の話だけを前にすることで、後でその謎が解けて、聞き手の関心を引っ張りつつ、なるほど、そういう意味だったんだ、と腑に落ちるわけです。このような、謎解き形式にする話し方も、過去記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読くださいね。

そして、商品を見せる前の、最初の挨拶的な話の中に、聞き手=あなたに関係のある話を盛り込みます。例えばですが…。

「社内でも話題沸騰のあの新商品が、ついに〇月〇日に一般発売となります。既にお手数をおかけしていた関係各位、その節はお世話になりました!××部の誰々さんには~。△△部の誰々さんには、こんなこともしていただいたことがありました。

この新製品は、わが社においては、◎◎(こういうポジション、例えば既存製品のなかでは最上位、など)として、●●(このようなこと)が期待される商品。売り上げ次第では、冬のボーナスにも影響を与える、待望のニューモデルになります」

とか?話す環境が自由な雰囲気なら、私ならこのぐらいは言ってしまうかもしれませんね。ボーナスは言い過ぎかな(笑)

「誰々さん」のところの文言は、みんなの前で言っても差し支えない範囲で。名前を言われるべき人が言われなかった、なんてことがないような配慮が必要ですが、皆が納得するような名前なら大丈夫でしょう。

このような、知っている人や部署の名前や、社内におけるポジションはこの位置、というような文言を、前もって言っておくことで、まだ発売前の新商品が、聞き手=あなたに関係ある話に、ちょっと愛情を注げる存在になったわけですね。

そして前述の最後のパートに、「この発表を見ている人は、この商品にどう関わるべきか」という要素を話すことで、社内の担当者の誰かがやればいい話ではなく、自分が能動的にやれる、やりたい話にまで、もっていくことができています。

オープニング(1分)

機能の目玉3ポイント(3分)

最後に(1分)

改めて、全体5分の流れを頭から書き出すと、こんな感じになるでしょうか。

毎度のことになりますが、今回も、具体的な商品の設定を何もしていなくても、このような話の「枠組みだけ」を考えることができ、それは話の方程式になっていますから、後は、個別の事例を代入するだけという状態にまで仕上がっています。

特に今回の場合は、あるものを発表紹介するという内容ですので、言うべきことは単純で、構成もありきたりですから、この流れ、枠組みだけを考えるだけなら、1分とかからないでしょう。

商品の詳細を熟知している担当者なら、説明してくれと言われたあと、1分で話し始められる内容になります。コツは、枠から固めて、方程式を作ること。演出として、あなたに関係のある切り口で話すこと。

この2点の意識だけで、これほどまでに、話す自分を楽にすることに成功しました。話の構成なんかは、方程式で充分なのです。もっと気の利いた、効果的な表現を追及することに、知恵を絞りましょう。

image by: fizkes, shutterstock.com

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アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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