日米がなぜ戦うことになったのか、人種問題を抜きにしては答えが出ないのだが、東京裁判はそれを捨象している。パリ講和会議で日本は人種差別の撤廃を主張し、最終的に採決を要求した。その結果、日本提案にフランス、イタリアなど賛成11、アメリカ、イギリスなど反対5だったが、議長ウィルソン(アメリカ)は、全会一致でないと提案は不成立だと強引に押し切った。
「人種平等規約」の提案は20世紀の世界史における日本の金星である。日本人は憶えておかなければいけない。アメリカで「公民権法」成立が1964年、国連で「人種差別撤廃条約」が成立するのが1965年。日本の提案を否決してから45年であった。日本人はもともと人種意識や差別意識が薄い。「国家として奴隷制度を持ったことがないのは、日本とユダヤだけだ」と山本七平が書いた。
- 白人は略奪主義だった
- キリスト教はそれを正当化する道具にされた
- 略奪主義の400年間にどんなことが行われたか
この3点を書き切るだけで、世界の人がイメージしている「世界史」とはまったく違ったものができあがるだろう。日本人は人種に対するこだわりが少なく、宗教による縛りもない。客観的で相互批判の可能な世界史を提供できるのは日本だけだ。
著者は、世界が「日本化」する理由を15挙げている。いささか強引である。それが「理由」といえるのか。本文の要点を抜き出しただけではないのか。ずいぶん安易な構成だと思う。たぶん編集者の思いつきで15の理由をひねり出したのであろう。タイトルで「絶対」と名乗るのも好ましくない。とは思うが、スルスル読めて「納得」はできる本だ。
編集長 柴田忠男
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